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シカテマ疾風伝<外伝>
作:スピリットQ



That's the limit


----この少年に案内されるのは一体何度目か。

いい加減、他の奴でもいいのに、とも思えてくる。
だけどこいつに訊けば、五代目の言いなりで仕方なくやっているとのこと。

いい迷惑だ。

めんどくさそうな顔で送迎されるなんて、冗談じゃない。

「別にお前じゃなくてもいい。今度から誰かやる気のある奴を寄こしてくれ。
 さもなくば必要ないと」
「あ…? 何で?」
「何度も来て、道はもう熟知している。
 何だってお前が付いて来なきゃならない?」

面倒なことが嫌いなお前にとっては、嬉しい話だろう。
だけどこいつは、清々するどころか、何故かムッとしている。
やがて、怒った顔つきになって、歩く足が止まった。

「……あっそ。じゃ、五代目に伝えとくわ」

それっきり会話がピタリとやんでしまった。
ご機嫌斜めだった。
お前がそんな態度だと、こっちだって気分が悪くなる。

それなのに、会う人会う人が勘違いしてくるから困る。

「デート?」
「本当は付き合ってんだろ?」
「遠距離恋愛も大変ね」

などなど…、勝手に話を作られているから、たちが悪い。


そして帰る頃には、こいつがまた現れた。
相変わらずムスッとしたままでいたが……。

----ちゃんと五代目には伝えたのか?

そんなことを訊ける雰囲気ではなかった。
私もちょっと言い過ぎたところがあるけれど、
言いたいことは、はっきり言ってしまう性格なんだ。

だから----

「今度から砂の使者は、誰か他の者を寄こす。私はもう二度と来ない」

これで本当に清々するだろう。
これ以上、ムカつくこともない。

「じゃあな」

目を合わせずに、門を出ようとした。
結構この任務も、木ノ葉も気に入っていた。
だから、寂しくないわけがない。
吹っ切るためにも、振り返らずに急ぎ足で出て行くつもりだった。

----なのに、私の腕を咄嗟に掴んで阻む奴がいる。

「ちょっと待てよ。何勝手なこと言ってんだよ」

どういうことか、あいつは益々怒っていた。
掴まれた腕が、思った以上に痛い。

「もう二度と来ないってどういうことだよ」

真っ直ぐな黒い瞳にも、私の目は捕らえられていた。

「これ以上おかしなことになる前に、同盟が崩れる前に会わないってことだよ」
「ったく、子供のケンカじゃあるまいし、オレらのせいで崩れるかっての。
 アンタが来ないんなら……オレもこの仕事を降りる」
「それじゃ、別の使者が来る意味ないだろ!」

今度は、私の顔が怒りをはらんでつり上がる番だった。

「だから今まで通り、アンタでいいだろ」
「矛盾している! 大体、やる気がないならやるな!」

「オレは----、アンタが来るのを毎回楽しみにしてるんだぜ。
 叶うなら、もっと回数を増やして欲しいぐらいだってな。
 とは言え、女をそう何度も数日かけて通わせるつもりもねぇから、
 今度はオレが砂へ行く。
 五代目にもそう伝えておいた。その方がオレも俄然やる気になるしな」

「お前が砂へ……?」
「ああ」
「何でそうまでする?」
「いつもアンタが来るのを待つ身にもなってみろ。心配でおちおち寝れやしねぇ。
 勿論、帰りだってそうだ」
「何でそんなに心配する?」
「----気づけよ」

ため息をつかれる。
そのため息がどこか切なげに聞こえて、私の顔がもっと怪訝になった。

「わからないから訊いている。教えろ、どういう意味だ?」
「やだね」
「何だと!?」
「勿体無くて教えらんね」
「おかげでこっちはいい迷惑だ。ありもしない噂が耳に入るし、
 あまつさえ暗部の報告書にも交際疑惑が上げられているらしいじゃないか! 
 お前も迷惑だろ!?」
「オレは別に迷惑だなんて思っちゃいねぇぜ。ありもしねぇ噂なら事実にしちまえばいいわけだし、
 その方がむしろ…、めんどくさくねぇ」
「はぁ!? 益々わけがわからない!! 一体どういう----」
「----こういう意味だよ」

掴まれていた腕が更に引っ張られ、私は少年の腕の中へと引き寄せられた。
いつの間にか抜かれた身長。
意外に逞しい腕と胸。
そんな中に、私は包まれてしまっていた。

ドクンドクン…、心臓の音が聞こえる。
それは自分のものなのか少年のものなのか、わからなかった。
ただ、身体と顔が熱い。
そして胸の奥が-----

「わからない……。何が何だか全然わからない」
「ったく、まだわかんねぇのかよ。じゃあ、これならどうだ」

そう言って身体を少しだけ離すと、今度は唇が迫って来た。

「やだ!」

ドンッ! 

「もうわかっただろ? どういう意味なのか」 
「わかんない! 全っ然、わかんない! やっぱり二度と来ない! お前となんか絶交だ!」
「あ、おい、ちょっと待てよ!」

私は頭が錯乱して、木ノ葉の門を出た。
一目散に走って逃げた。
あいつの腕からすり抜けるようにして……逃げてしまった。
限界を感じて。
でも、一体何の限界なのかは、わからなかった。
ただ、胸の鼓動だけがやけに響いてくる。
本当は、イヤじゃなかった……。



その頃、木ノ葉の門前の受付では-----

「----おい、あいつらまた痴話ゲンカしてるぞ」
「止めるだけ野暮ってもんだろ? 毎回毎回、オレらの存在無視してよく飽きないねぇ」

受付にいたコテツとイズモが、ニヤニヤと口にする。

「苦情報告出しとくか? 
 『シカマルが限界らしいので、とっとと交際認めてやって下さい』 って」

「ああ、 “ That's the limit 〜もう我慢できない〜 ” ってな」





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ちなみに、呵責の炎2ではないです。
(2は『 呵責の炎 〜炎の愛〜 』というタイトル決定)

これもテマリ視点ですが、
それぞれの限界を表現してみました。
つまり、テマリ、シカマル、コテイズの限界・・・(笑)。

最初、『 限界灘 −genkainada− 』(正式には玄界灘)
にしようか迷いましたが、演歌っぽいのでやめました(笑)。












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