シカテマ疾風伝<外伝>(14/54)縦書き表示RDF


シカテマ疾風伝<外伝>
作:スピリットQ



呵責 −かしゃく− の炎



突然、後ろから抱きしめられ、あいつの唇が私の耳に接触した。
驚いてその腕を解こうと微かに身じろぎしたけれど、


      「-----動かないで……」


耳元で、甘やかな低い声が囁かれる。
あいつはため息を一つ付いて、更に強く抱きしめてきた。


      振り解けないその腕------


いつもの彼と何かが違う気がした。
対戦相手から仲間へ…、そして友情へ……。
それはこれから先も、ずっと変わらないものだと思っていた。
それ以上もそれ以下もなく、同盟国として、忍として、一人の人間としてかけがえのない友情を…。

なのにあいつは……私の耳を甘噛みしだす。
それはどこか愛しげな、愛撫。
たまりかねて突然決壊してしまった、激しさ。


    ----何で…、どうして……!?


出会ってこの数年、お互い男女の感情で意識したことも、されたこともなかったはずだ。


         だけど-----


待っていたのかもしれない。
あいつが腕を伸ばしてくれる日を。
追いつき追い越される日を、いつしか待ちわびていたのかもしれない。

心のどこか、眠ったままでいる奥深くで……。

それとも、気づくのが怖くて気づかぬふりをして、わざと背中を向けていたのだろうか。
この関係を飛び越えてしまうことが、怖かったのだろうか。


        「テマリ……」

あいつが私の頬に手を沿えて、ゆっくりと振り向かせられる。
黒い瞳が私の目にまっすぐ突き刺さる。


       ----やめて…。


痛いほどの切な過ぎるまなざしが怖かった。
そんな目をされたら、どうしたらいいかわからなくなる。
流されてしまう。

彼の顔が、唇が……近づく。
だけど私は必死の思いで、彼を拒絶した。


  「----やめろ。それ以上変な真似をしたら……、
      二度とお前とは会わない」


一瞬の間を置いて、あいつが悲しげな目をする。
私の身体からもその腕が離れていく。


       「オレは-----…」

   「私にそういう気持ちはない」


あいつの目が見開かれている。
傷つけてしまったのはわかっている。
その先を聞きたくなかった。

私は敢えて心を鬼にして言う。
それはあいつに対してではなく、自分自身に対してだった。
今ここで甘えてしまえば、自分はもう引き返すことができなくなる。
流され、溺れてしまうだろう。
それは自分が一番よく知っている。
強くなるために、弱さを垣間見せる自分を押し込めて生きてきたのだ。


       「----ごめん…」


そう言って私はあいつの前から立ち去った。
だけど、逃げようとする私の腕を、あいつが掴み取る。


「オレは本気だから。もうアンタを、
    友情なんかの枠組みで嵌めておくことはできそうにない……」


目を合わせようとしない私の胸が高鳴っていた。
顔や全身も焼かれたように熱い。
心の奥が、うずく。

無理矢理その手を振りほどき、私はあいつの前から走り去った。
これ以上、そばにいられなかったから。
自分の口にした言葉に、責任が持てなくなりそうだったから。



------渦を巻き始めていたこの感情がやがて炎の愛に変わることを、
       まだこの時の私が気づくことはなかった。

距離を置いて突き放したつもりが、
       後に逆効果となって襲いかかってくることを……。








--------------------------------------------------------------------------------


突発、読み切りでした☆

アス紅がらみの話も書きたいこの頃。
アニナル新章・元祖シカテマ突入記念だし、やっちゃおっかな。
夏のお話(水着・ムッハー)も書かんとな。

な。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう