呵責 −かしゃく− の炎
突然、後ろから抱きしめられ、あいつの唇が私の耳に接触した。
驚いてその腕を解こうと微かに身じろぎしたけれど、
「-----動かないで……」
耳元で、甘やかな低い声が囁かれる。
あいつはため息を一つ付いて、更に強く抱きしめてきた。
振り解けないその腕------
いつもの彼と何かが違う気がした。
対戦相手から仲間へ…、そして友情へ……。
それはこれから先も、ずっと変わらないものだと思っていた。
それ以上もそれ以下もなく、同盟国として、忍として、一人の人間としてかけがえのない友情を…。
なのにあいつは……私の耳を甘噛みしだす。
それはどこか愛しげな、愛撫。
たまりかねて突然決壊してしまった、激しさ。
----何で…、どうして……!?
出会ってこの数年、お互い男女の感情で意識したことも、されたこともなかったはずだ。
だけど-----
待っていたのかもしれない。
あいつが腕を伸ばしてくれる日を。
追いつき追い越される日を、いつしか待ちわびていたのかもしれない。
心のどこか、眠ったままでいる奥深くで……。
それとも、気づくのが怖くて気づかぬふりをして、わざと背中を向けていたのだろうか。
この関係を飛び越えてしまうことが、怖かったのだろうか。
「テマリ……」
あいつが私の頬に手を沿えて、ゆっくりと振り向かせられる。
黒い瞳が私の目にまっすぐ突き刺さる。
----やめて…。
痛いほどの切な過ぎるまなざしが怖かった。
そんな目をされたら、どうしたらいいかわからなくなる。
流されてしまう。
彼の顔が、唇が……近づく。
だけど私は必死の思いで、彼を拒絶した。
「----やめろ。それ以上変な真似をしたら……、
二度とお前とは会わない」
一瞬の間を置いて、あいつが悲しげな目をする。
私の身体からもその腕が離れていく。
「オレは-----…」
「私にそういう気持ちはない」
あいつの目が見開かれている。
傷つけてしまったのはわかっている。
その先を聞きたくなかった。
私は敢えて心を鬼にして言う。
それはあいつに対してではなく、自分自身に対してだった。
今ここで甘えてしまえば、自分はもう引き返すことができなくなる。
流され、溺れてしまうだろう。
それは自分が一番よく知っている。
強くなるために、弱さを垣間見せる自分を押し込めて生きてきたのだ。
「----ごめん…」
そう言って私はあいつの前から立ち去った。
だけど、逃げようとする私の腕を、あいつが掴み取る。
「オレは本気だから。もうアンタを、
友情なんかの枠組みで嵌めておくことはできそうにない……」
目を合わせようとしない私の胸が高鳴っていた。
顔や全身も焼かれたように熱い。
心の奥が、うずく。
無理矢理その手を振りほどき、私はあいつの前から走り去った。
これ以上、そばにいられなかったから。
自分の口にした言葉に、責任が持てなくなりそうだったから。
------渦を巻き始めていたこの感情がやがて炎の愛に変わることを、
まだこの時の私が気づくことはなかった。
距離を置いて突き放したつもりが、
後に逆効果となって襲いかかってくることを……。
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突発、読み切りでした☆
アス紅がらみの話も書きたいこの頃。
アニナル新章・元祖シカテマ突入記念だし、やっちゃおっかな。
夏のお話(水着・ムッハー)も書かんとな。
な。
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