意識 (シカ←いの疾風伝)
------- 私が自分の家のように奈良家にお邪魔するのはもう何度目か。
小さい頃からずっと一緒だったから、当然と言えば当然なんだけど。
「シカマルー、遊びに来てやったわよー」
「…誰も頼んじゃいねーし」
剪定バサミを手にし、庭の手入れをしていたシカマルが、私に気付いて、面倒くさそうな顔を向ける。
「なーんか、ますます年寄りじみてきたわねー。様になっていると言えばなっているけど…、あんた一体幾つよー?」
「何だよ? そんなことわざわざ言いに来たのかよ? めんどくせー奴」
「親父さんに頼まれたのー? それにしてもいつ来ても広い庭よねー。これじゃあ管理が大変------- って、きゃっ!」
「おっと、大丈夫か?」
石につまずいて転びそうになった私の腕を、咄嗟にあいつが片手で掴んで支えてくれた。
「あ、ありがと…」
垣根の枝と葉を切りながらも、その動作は素早かった。
そしてすぐに、私とは違う、いつのまにか大きくなった骨太の男の手が、私の腕から離れていく。
しばらく見ないうちに、あんたも大人になったのね。
------私もちゃんと大人になっているのかしら?
「ったく、こんなとこでつまずくなよ。お前も忍なんだから、もっとらしくしろっての」
------どーせ私なんて、あの人に及ばないわよ…。
あんたの優しさが、微笑が、飾らないその態度が、あんたを意識している女にとっては毒だってこと知らないのね。
いつからだろう?
今までと違う目で見るようになったのは。
だって…、まさか…、ありえない。
何で私があいつを…?
うそでしょー…?
自分自身驚いているというのに。
考えたこともなかった。
今までそんな風に見たこともなかった。
あんまり側にいすぎて、当たり前すぎて、いつまでもこのままでいられると思っていたから…。
「シカマル〜、あんた最近、色気が出てきたわね〜」
「ああ? それが男に言うセリフかっての」
「フェロモンよー。ま、自分じゃ気付かないものなのかもしんないけどねー」
「…気持ちわりーな」
そう言うと、顔を引きつらせ、私から離れようとする。
「結構女の子たち、あんたのこと噂してるわよー。誰かに恋でもしてんのー?」
知ってて、わざと口にする。
案の定、一瞬、シカマルが無口になった。
今誰のことを考えたかなんて、予想はついている。
でもその名前を、口にして欲しくない----------
「…そう言うお前こそどうなんだよ? サスケに恋してるったって、フェロモンのフェの字すら見当たんねーぞ」
「失礼ねー! この私の魅力がわかんないあんたって、なんて可哀想な奴なのー?
それにサスケ君は昔の男よ! 昔の淡い恋心よ!」
「今は違うのかよ」
「違うわよー」
「じゃあ、誰だよ?」
「へっへへー、ヒ・ミ・ツ」
「そーかよ。ま、がんばんな」
「------- …」
もっと最後までちゃんと、誰だよ? って聞いて欲しいのに。
ちょっとでも取り乱して欲しいのに。
シカマル、あんたってばやっぱり気付いていない。
最近、遠くに行こうとしているあんたを見るのが、私にはとても辛いのよ。
そりゃ、忍として将来を託された有能な一忍として、上層部に一目置かれているけれど、
あんたが本当にどこかに行ってしまいそうで…。
もう昔みたいには戻れないの?
そして、私が今どんな気持ちでいるか、あんたは見抜こうともしないの?
興味さえないの?
シカマルが気にかけているのはあの人だって------それは気付いている。
だけど、あんたがあの人を見ているように、あんたを見ている人だって周りにはいるのよ?
気付いてて気付かないフリをしているの?
あの人なんかよりずっと側にいたのに、どうして私をそういう目で見てくれないの?
追ってくれないの?
私の目の前から立ち去ろうとするシカマルの腕を、私は捕まえた。
「何だよ? オレはこれからめんどくせー任務があんだよ」
「…ねぇ、私のことどう思う?」
突然の私の口から出た言葉に、シカマルが怪訝そうに私を見つめる。
「どしたのお前…?」
「いいから答えて!」
私の真摯なまなざしが、彼にも届いたのだろうか。
シカマルが優しげに微笑む。
「----綺麗になったんじゃねーの? いのだって結構、他の男にもててんぜ?」
……ホカノオトコ……
「あ、あんたはどうなのよ…?」
「どうって?」
「そ、その…、私のこと好きか、どうかって……」
「ああ、好きだぜ」
間を置かずにあっさり返されてきた返答に、私は怒りさえ感じてしまった。
「そういう意味じゃない!」
けれどシカマルは、相変わらず微笑んで答える。
「いのは、昔と変わらねー仲間だよ。幼馴染だ。それはきっと一生変わらねー」
「仲間…? 幼馴染…? それだけ!?」
「はぁ? それだけって、それ以上に何があんだよ-----ってまさか、お前、オレのこと好きだとか?」
一気に顔が赤くなるのが自分でもわかる。
「なっ、そ、そんなこと…」
私がこんなに意識しているというのに、それなのにあんたは--------
「あるわけねーよなぁ」
そう言って笑う。
だから私は、思わず言ってしまう。叫んでしまう。
「だったらどうなのよ…? 好きだって言ったらどうなのよ!?」
シカマルの顔から笑顔が消えた。そして、私をまっすぐ見つめると、
「-----悪ぃけど、オレはそんな風にお前を…」
……ミタコトガ……ナイ……
シカマルの心を読んでしまった。
「あっ…そ」
「あ、おい、どこ行くんだ? いのっ!?」
私はあいつの前から、駆け出した。
今の自分の顔を見られたくなかったから。
消えちゃいたかったから。
わかっていた。
わかりきっていたことなのに、ちょっとでも期待してみた私が馬鹿だった。
もっとはやくあんたを好きになればよかった。
気付けばよかった。
意識すればよかった。
あの人よりもはやく------------
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続く・・・かもしれないし、続かない・オチなしかもしれない話。
私のシカいの小説は、一時的に「シカ←いの」です。
いつかは、チョウジと、ラブるんです。
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