僕は知っている。
今現在、地球上で生きている人間と同じ数の時計が、そこにはあるのだ。
僕はそこを、『時計の部屋』と呼んでいる。
時計の部屋にある時計には、一つとして同じ外見の物は無く、また一つとして止まっている時計も無い。
・・・あ、今、一つの時計の針が止まった。
止まった瞬間、その時計は消えて無くなった。
だが、時計は消えるばかりではなく、増えてもいる。
・・・ほら、今一つ増えた。
この部屋では、止まる事無く時計が消えたり現れたりしているみたいだ。
・・・最近気付いたのだが、どうやら時計の部屋は、僕の中にあるらしい。
僕はいつも気付くと時計の部屋にいる。
時計の部屋にいる時僕は、何もする事無く、何も考える事無く、ただただ時計を見つめている。
そしてまた気が付くと、現実世界にいるのだ。
詰まらなくて下らなくて汚くて腐ってて臭くて何もなくてゴミのような現実世界に。
戦争は絶えないし、凶悪犯罪が頻繁に起こるし、人間関係は見るのも嫌になるほど汚い。
そんな現実世界に。
僕は中学生だ。
学校に行き、普通に生活し、普通に勉強し、普通に帰る、普通の中学生。
ただ一つ変なのは、皆が僕を嫌っている事だ。
皆は僕が学校に来ると、変な顔をしたり、指をさして笑ったり、 叩いたり殴ったり蹴ったり、コンパスや定規で刺したりする。
不愉快だ。
なんで皆僕をイジメルんだ。
僕が何か悪い事でもしたのか。
僕に怨みでもあるのか。
君達には僕を殴ったりする権利があるのか。
実に不愉快だ。
考えるだけで殺したくなってくる。
君達なんて死んでしまえ。
お前らなんて死んじまえ。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
僕はいつも『早く時計の部屋に行きたい』と思っている。
現実世界なんて詰まらないからだ。
それに、時計の部屋にいれば、何もかも忘れる事が出来る。
いじめられている事や成績の事や人間関係の事や母親が不倫している事とかを。全部。
・・・辛い事は多いが、死ぬのは嫌だ。自殺は嫌だ。
いや、むしろ死ぬのは僕を苦しめている奴らだろう。
どうにかして、あいつらを消せないか。
僕を苦しめる奴らを。
・・・時計の部屋。
そうだ、時計の部屋があるじゃないか。
あの部屋は、人間の人生を操る事が出来る。
だから死ねばその人の『人生の』時計は止まって消えるし、生まれれば・・・新しい命が誕生すれば、新たに時計が一つ追加される。
そういう仕組みなのだ。あの部屋は。
使える。
じゃあ、僕を苦しめる奴らの時計を止めれば、奴らも止まる。
奴らは死ぬ。
行こう。今すぐ。
時計の部屋に。
目を閉じて、少し間を置いて開けば、そこはもう時計の部屋だ。
何処だ。
何処だ。
僕を苦しめる奴らの時計は。
来い。
ここに来い。
今すぐに来い。
見つけた。
奴らの時計。
片っ端から止めてやる。
は・・・ははは・・・ひ、ひひ、はああ、はははははひ、ひひ・・・。
終わった。
全て止め終わった。
僕をイジメル奴らも嫌な教師も母親も、僕に都合の悪い奴は全員死んだはずだ。
僕はやった。
これで、今までより少しは現実世界も楽しくなるだろう。
・・・ん?
なんで僕は血まみれなんだ。
なんで家の外に警察が集まっているんだ。
なんで僕は包丁を持っているんだ。
なんで僕の前に血まみれの母親が倒れているんだ。
なんで母親は腸やら脳味噌やらよく分からないぐちゃぐちゃしたものを体内から晒しているんだ。
なんで
あ。
思い出した。
時計の部屋なんて無い。
僕は包丁で皆を殺したんだ。
あ、なんだ。そういう事か。
ははははは。 |