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異世界見聞録魔王付き
作:朝日光司



第13話.刹那を極めしもの


武士道仮面のテーマ

作詞 創造神K.A
作曲 募集中

嘆きの声を聞きつけて 現れたるは正義のヒーロー

額の武の字がいなせなあいつは 日本の心武士道仮面

トレードマークの日本刀は 全てを切り裂く正義の刃

(こんなこと考えるから文字数が大変なことになるんですよ)
(ほっといてくれ)

得意の居合いが空を切るとき

あの子の心も一刀両断!

士道不覚悟切腹なれど死ぬこともまた武士の道ー

武士道仮面 ああ武士道仮面ー





「どこから突っ込んで良いのか分からんわっ」
「はっはっは手厳しい」

いきなり現れて謎の歌を歌った怪人物(正体はほぼ100%確定)に拳で突っ込みを入れる美亜。ちなみに魔族側を含めるほかのメンバーは全員呆然としている。目の前の出来事が理解できていないのだろう。

「いったい何をやっているのよて」
「いえお嬢さん、私は武士道仮面。通りすがりの正義のヒーローです」
「……だから何なのよその仮装は」

もはやあきれて何もいえないとばかりに肩を落とす美亜。そのころになってようやく他の面々に再起動がかかる。

「えーっといやまあ何でも良いんだけど、今まで何をやってたんだ?」

どうやら正義のヒーローというキャラで通したいようだと理解したハヌマーンが傷の痛みに顔をしかめながら問いかける。

「正義のヒーローは味方のピンチに現れると相場が決まっているのです」
「まさか私たちが絶体絶命の危機に追い込まれるまで高みの見物をしていたってわけじゃないわよね?」
「ははは、まさか」

バキボキと拳を鳴らす美亜から視線を逸らす天、じゃなくて武士道仮面。

「助けを求める声が聞こえたので助けに行っていたのです」
「?」
「具体的には行動を起こしたのは良いもののあっさりと追い詰められていったギルドの皆さんを助けるために鎮圧部隊にトラップを仕掛けたり、デマを流したり、相手の指揮官を暗闇で締めたりしてました」
「え?じゃあ皆は無事なの!?」
「かなりの数を逃がせたとは思いますが、捕まってしまった人たちもいます。もっとも命に関わるほどの怪我人や死人は出ていませんが」
「そっか。……ありがと」

思わぬ朗報に瞳を潤ませる美亜。

「と言うか見てきた中ではハヌマーンが一番酷い怪我ですよ。早く手当てしないとまずいのでは?」
「いや、こんな怪我くらい大じょごふっ!?」
「ちょっとハヌマーン!?死ぬなーっ!」
「ここに救急セットが有りますから早く」
「わ、わかったわ」

手早く応急処置を始める美亜。どうやら慣れているようでその手つきは素早い。こちらはこれで大丈夫かとこっそりと安堵の息をつく武士道仮面。

「それにしても、魔王っぽい人が居ないと言う事はやっぱり情報が漏れていたんですか?」
「……認めたくないけどね。どこから漏れたのかは分からないけど」
「……ずいぶんとスムーズに鎮圧が進んでいましたよ。早すぎるくらいに」
「?それって」

武士道仮面の言葉になにやら含みが感じられた美亜は疑問の声を上げる。しかし、武士道仮面はその質問には答えず後ろを向いた。そこには氷点下の視線でこちらを睨みつける凍夜の姿があった。

「それで、あなたが将軍の凍夜君ですか?」

ビキリと何かにひびが入ったような音が聞こえた気がした。武士道仮面の呼び方に顔をしかめた凍夜が怒りを押し殺した声をかける。

「……なるほど貴様が退魔士か。確かにおかしな手品を使う。名前は葉上天真とか言ったか」
「いえ、私は正義のヒーロー武士道仮面です」
「それはもういい、じゃなくて!?そんなことまで漏れてたなんて」

かなりの情報が魔族側に漏れていることにショックを隠せない美亜。

「……本当に漏れてたんでしょうかね?いやこの場合は情報が漏れていたという表現が正しいかと言い直した方が良いですか」
「……え?それってどういう」
「それに情報の優先度の問題もありますし。一応どの種類の情報がどの程度流れているか確認したかったんですが。こんなことしなくても全部伝わっているみたいですねえ。で、私は武士道仮面ですが、その葉上天真君に何か問題でも?」
「……」
「例えば、一定の秩序を保っているところに悪質な異分子が紛れ込むと困るとか」
「貴様……まさか」

武士道仮面の言葉に明らかに顔色を変える凍夜。その反応を見て納得したように頷く。

「まあ可能性としては有り得るとは思っていましたが。とは言え、今その真偽を問いただす意味は有りませんし、置いておいても良いでしょう。」
「?」

武士道仮面の謎めいた言い方に首をかしげる美亜。しかし、彼はこの場でこれ以上説明する気はないようだ。

「それでもう少しポーカーフェイスを学んだほうが良い凍夜君。このまま私たちを見過ごしては」
「ふざけるなっ!」

武士道仮面の台詞を遮って怒声を上げる凍夜。憤怒に顔を歪めながら戦闘態勢をとる。

「魔王様の敵を見逃すとでも思っているのか。貴様らは全員ここで始末してくれる!」
「やれやれ、やっぱりそうなりますか」

そう言いながらゆっくりと前に出る武士道仮面。

「ちょっと待て!まさか一人で戦うつもりか?相手は将軍クラスの魔族だぞ!」
「大丈夫です。なんといっても正義のヒーローですから」
「ふざけている場合じゃ」

ハヌマーンの制止の声を無視して凍夜の正面に立つ武士道仮面。その姿はあくまで自然体でこれから戦いに赴くというような気配は微塵も感じられない。

「では手早く済ませましょうか。ハヌマーンも早く本格的に治療しないといけませんし」
「ほざくなっ」

怒声と共に凍夜が前に出る。身の程知らずを寸断せんと斧槍ハルバートを怒りのままに横に振るう。

「ってちょっと待てー!そんなもの被ってたら視界が確保できねーってぎゃあああ!?」

ハヌマーンの声と同時に凍夜の凶器が武士道仮面に突き刺さる。

かに見えたが、それを危なげなく少し後方に下がることで攻撃を回避。そのまま通り過ぎるかと思われた切先が跳ね上がり、凍夜が更に踏み込んで袈裟切りに変化させた攻撃も半身を引いてかわす。その後も怒涛のごとく繰り出される攻撃を全て紙一重で見切り、避け続ける。

「な、何であれで避けられるんだ?」
「私に聞かれても……」

紙袋を被った状態で全ての攻撃を紙一重でかわしていく武士道仮面。視界のほとんどが塞がれているはずなのに、その動きに淀みはない。

見切りというのは武術の基本にして最も重要な技術の一つだ。相手との間合い、攻撃の軌道、自身の動き。これらを瞬時に判断して最小の動きで敵の攻撃をよける。言葉にすればこれだけだが実践するにはとてつもない技量と経験が必要となる。

まして武士道仮面は視界をかなりふさがれた状態でありながら、凍夜の攻撃をまさにミリ単位の精度で避け続けている。どれほどの鍛錬と天分の才があれば10代という若さでこれほどの体捌きが可能になるのか。

「だけどこれなら何とかなるかもってああ!?」
「今度は何よ!?」

またしても大声を上げるハヌマーンに少しイラついた声を返す美亜。だがそんな美亜の様子にも気が付かない様子で青ざめた顔をするハヌマーン。

「紙一重じゃだめだ!」
「どういう意味よ?」
「紙一重って言うのは得物との距離がほとんどないんだ!」
「それがどうしたのよ?」
「だから、俺様がどうやってやられたかって言う話だよ!」
「え?それは相手の武器から氷柱が伸びてってああ!」

ようやく美亜も気付く。紙一重でかわすということは相手の武器が至近距離にあるということだ。今回の場合、凍夜は己の武器から氷を発生させて更に追撃を加える手段を持っている。これでは紙一重の見切りでは2段目の攻撃をかわす事ができない。

「だめっ天」

その時美亜は凍夜の斧槍が青い光を帯びるのを見た。そして大きく振り上げられた凶器は地面と垂直に振り下ろされる。だが大振りのその攻撃をやはり半身をずらして紙一重でかわす武士道仮面。そのまま隙が出来た凍夜の懐に飛び込もうとして、


凍夜が勝利を確信しほくそ笑むのを確認する。

「だめー!」
氷花繚乱アイスエクスプロージョン!」

斧槍ハルバートの切先から花が咲くかのように氷塊が発生する。鋭く延びた先端が武士道仮面を背後から襲う!

「天真っ!?」

その瞬間目を閉じる美亜。だが瞼の裏には氷の槍に串刺しにされた彼の姿が、

「はいっ!?」

いきなりハヌマーンが奇声を出して思わず目を開けてしまう。そこには



凍夜から10数メートル離れた位置に立つ五体満足な武士道仮面の姿が。



「え?無事なの?と言うか何が?」
「いや、俺様にもさっぱり」

確かにあの瞬間武士道仮面は凍夜の手前1メートルにも満たない位置にいたはずだ。だが彼は今別の場所にいる。起こったことだけ見れば武士道仮面が一瞬で10数メートルの距離を移動したことになるが。

そして何が起こったのか理解できないのは当事者である凍夜も同じだった。

「貴様、いったい何をした!?」

確実に捕えたはずだった。かわせるような時間も間合いも無かった筈。だが現実には奴は掠り傷一つ負わずに平然と立っている。

「葉上流奇門遁甲歩法之一はじょうりゅうきもんとんこうほほうのいち縮地法しゅくちほう

全員の驚愕の視線を浴びながらも平然としたまま天真は自身の技の名前を呟いた。

「まあ瞬間移動ですね。ちょっと気脈の流れに乗っただけですよ。うちの流派では驚くほどのものではないです」
「このっ」

あくまで穏やかな調子を崩さない相手に舐められたと感じた凍夜は地面に突き刺さった斧槍を
抜くと素早く間合いを詰め全力で突きを放つ。大気に穴を穿つほどの気迫が込められた一撃は
しかし、むなしく宙を切るのみ。

「なっ」
「なかなかいい突きですね」

背後から聞こえていた声に慌てて振り向くと平然とした武士道仮面の姿。その姿どころか影すら追えない事実に愕然とする。

「っ氷柱槍アイシクルエッジ!」

地面から強襲する氷槍。だが、死角からの攻撃にも武士道仮面は慌てずまるでどこから攻撃が来るのか分かっているかのように軽やかに避けていく。その姿は傍から見ればあたかも武士道仮面がステップを踏んだ場所に氷柱が生まれてきているかのようだ。

「良いですねー、遠距離攻撃が使えるのは。私なんて近付いて斬るしか能のない一剣士ですよ。ですからそれを突き詰めたらこんな感じに」

言葉と同時に目の前に現れる紙袋。

「なりまして」

慌てて斧槍を振るうがその半瞬前にはすでにその姿は間合いの外だ。

「ど、どこの秘密諜報機関員よ!?それとも死神!?」
「はっはっは。これは六○でも○歩でもないですよ?ただちょっと目に見えない歩き方なだけで」
「物理法則を完全に無視しておいて何を!?」

驚愕の声を上げる美亜に対してもほがらかに対応する武士道仮面。その姿には戦闘中であるという緊張感は微塵も感じられない。

「舐めるなあっ!氷縛の旋風アイスバインド!」

ならば動きを封じんと放たれる氷雪の風。しかしそれも瞬間的に間合いを遠くにはずした武士道仮面に届く頃にはただの冷風になっていた。

「ばかなっ」
「さて、それではあまり時間をかけてもなんですし」

驚愕の表情を浮かべる凍夜を眺めつつ言葉と共に腰を少し落とす武士道仮面。

その姿を認識した瞬間、凍夜は目の前の人物が巨大化したような気がした。

「参る」

そしてその姿は掻き消えた。


むしゃくしゃしてやった。今は後悔している。

そんなわけで(どんなわけだ)今日中に後2話上げます。こうご期待。






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