えびふらい2縦書き表示RDF


まさかの反響と、個人的な意図により続編として書かせて頂きました。技量が足りなく些末な点が目立っていますが、御了承ください。
えびふらい2
作:スグル


・・・・・・

黒いマントを羽織ったタキシードのエビの顔をしたマスクをした男が、断崖絶壁で笑っている。
そして、その断崖絶壁の下には、赤、青、緑、黄、桃色の5人の全身スーツがいた。
「おのれ!!エビフライ伯爵め!!」
と、赤いスーツが叫ぶ。

これは子供向け番組の山登り戦隊 ヤマレンジャーの収録現場。
ヤマレンジャーは重厚すぎる内容と、アクションシーンで話題騒然である。
そして、登場人物の大半がイケメン君たち。
とにかく、この番組は大人気である。

遅れたが、僕の名前は吉崎孝則・・。
25歳の独身・・。
今、例の黒いマントを羽織ったタキシードのエビの顔をしたマスクを被ってる男をやっている・・。
その名も、視聴者に最高に嫌われている悪の親玉のエビフライ伯爵・・。
「あっははは!!私は、エビフライ伯爵だ!!」
オタキリ・ショウさんのような俳優を目指して、この世界に入ったのに・・。
いくら生活が厳しいとは言え、この役を・・。

「カットー!!」
「お疲れ様でしたー」

収録が終わった。
最近、この番組の監督から褒められるようになっては来たが、心境は複雑だ・・。
もしかして、僕の人生はこの先、ずっと・・。

「お疲れ様です」
「ああ、お疲れー」

と、黒い全身スーツの青年が僕に声を掛けてくれた。僕に声を掛けたのは、エビフライ伯爵の部下で、数十人いるやられ役の黒い全身スーツの戦闘員役の篤元豪君。
「いやー、最近の吉崎さんの演技、すごいですねー」
と、彼も僕の最近の演技を評価してくれた。
しかし、正直嬉しくはない・・。
エビフライ伯爵は、僕の仕事でありながら、苦悩にもなっている・・。
そんな気持ちを、篤元君は知らない。
「なんか、吹っ切れたって感じですよねー。なんか、あったんですか?」
「別に・・」
彼はいい奴だが、僕の悲痛な所をピンポイントで突いてきて、ムカつく・・。

・・・・・・

収録後に配給される弁当を僕は、スタジオの端っこの方で、篤元君と一緒に食べている・・。
「エビフライ、上げますよ」
と、篤元君は弁当のエビフライを渡してきた。
「ありがとう・・」
どこまで、無意識に傷に豆板醤を塗るんだこいつは・・。
「そういや、明日はヒーローショーですねー」
「そうだね・・」

彼の言うヒーローショーとは、首都圏最高峰のテーマパーク、カツ丼遊園地の特設スタジオで行われる配役がそのままのショーである。

「みんな、今週の日曜はカツ丼遊園地に来てくれよな!!」
と言う感じで、ヤマレッド役の拓村君がテレビコマーシャルしてるイベントである。

しかし、僕にはこれほど辛い仕事はない・・。
何故なら、この番組のファンの声を直に聞くからだ・・。

・・・・・・

あれは、初めてのショーの参加で・・。
遊園地のスタジオのショーの最中に・・。
「あっはは!私は、エビフライ伯しゃ・・」

ベチャ!

ショーで演技の途中に、小さな子供からアイスクリームを投げ付けられたのだ・・。
その日の夜、自宅の部屋で、体育座りで泣いた。
あんなに泣いたのは、中学生時代に好きだった女の子が、友達と歩いている時。たまたま、彼女の後ろを歩いていた僕の存在に気付かずに、僕のことを話していて・・。
「あいつ、きもいよねー」
と、彼女本人が言ってたこと以来だ・・。
これとは関係ないが、ショーには出たくない・・。
しかし、仕事だから仕方ない・・。
一体、どこまで僕を苦しめるんだ、この役は・・。

・・・・・・

そして、僕はその感傷を背負いながら、自宅の帰路を歩く・・。
「はぁ・・」
ため息をついても、どうしょうもないが、少しぐらい、僕だって救われても・・。

あっ・・、今、僕が歩いている道は、こないだ暴漢に襲われていた女の子を助けた場所ではないか・・。
あの娘と、いい感じになってたのに・・。

・・・・・・

僕は、暴漢から襲われていた女の子が、お礼ということで彼女の部屋まで、お茶に誘われた。
その娘の部屋には、ヤマレンジャーのポスターがあり、彼女がファンあると言うことで、僕の役であるエビフライ伯爵について、聞いてみたら・・。

「メチャクチャ、嫌いです」

この一言で、僕の恋が終わった・・。

・・・・・・

はっ!
そのことを、思い出したら、自然に涙が・・。
畜生・・、僕には、辛い思い出が多すぎる・・。

・・・・・・

そして、当日・・。

他の主演者は、タクシーで行ってるのに、僕は遊園地の一般客用のバスで遊園地に向かっている。
この差はなんだ・・。
一般客に紛れて、椅子に腰掛ける僕・・。

バスの中のお客さん達は、ヤマレンジャーショーの話で盛り上がっている。
子供たちだけではなく、女性のファンも多いようだ。
やはり、ヤマレッド役の拓村君のことで盛り上がっているようだ。

「エビフライ伯爵って、ムカつくよねー」

そんな声が、聞こえた・・。
畜生、帰りてぇ・・。
さらに、もう一声。
「あの役、演じてる奴、絶対、キモ顔だよー」
そのキモ顔は、あなたと一緒のバスに乗ってますよ。エビフライ伯爵が、マスクなのが、唯一の救いだ・・。

・・・・・・

バスは、目的地の遊園地に着いた。
そして、バスを降り、遊園地に向かっていると・・。

「あの・・、もしかして・・」

どこかで聞いたような黄色い声が、僕に向けられている。
その方向に、僕は振り返ると・・。
「あっ・・」
思わず、声を出して驚いた。
「やっぱり、あなたは、あの時の・・」
こないだの女の子だ・・。
何故、こんな所に居るんだよ・・。

・・・・・・

とりあえず、ショーまで時間があるので、彼女と遊園地の喫茶店で話していた。
ちなみに、名前は、バレるといやなので、偽名を名乗った。
篤元豪君の名前を使わせてもらった。
許してくれ・・。

彼女は、ヤマレンジャーファンと言うより、拓村君のファンの友達の付き合いで来ているそうだ。
その友達は、寝坊して遅れているそうだ。
彼女の方も、この番組のファンなので着いてきて、僕に会ったとのことだ。
よく考えれば、運命的な出会いだと言いたいが、僕は嬉しいけど、嬉しくない・・。
何故なら、彼女は、エビフライ伯爵が嫌いで、エビフライ伯爵は僕だからだ・・。
自分を否定されてるのと同じだからだ・・。
そんなわけだから、彼女と打ち解けられるわけがない・・。

「あの時は、本当に嬉しかったです・・」
と、彼女はこないだの暴漢から助けたことのお礼を言っている。
律儀な娘だ・・。
それでいて、可愛い・・。
本当に、こんな娘と付き合えたら、どんなに幸せなんだろうか・・。
「いいえ、こちらこそ、お茶をご馳走になったので・・」
そう言っておいた。
僕には、彼女の言葉に対応するしか出来ない・・。
もう少し、話してみたいことがあるというのに・・。
「そういえば、篤元さん。こないだ、なんで、エビフライ伯爵のことを聞いてきたのですか?」
核心を突くような彼女の一言が飛んだ。
「あっ、あのエビフライ伯爵のデザインしたの僕なんですよー」
頭が混乱したせいで、変な嘘が口から出た。
「そうなんですかー!?」
彼女は、驚いた。
驚く仕草も可愛い・・。
しかし・・。

「最近のエビフライ伯爵の演技、度が過ぎてますよね。なんというか、自分の欝憤を晴らしてるみたいで・・」

その一言は、僕の心を砕いた・・。
心の中に、寒い風が吹いた・・。
なんというか、この場で死ねるぐらいに落ち込んだ・・。

それから、数秒して、彼女の友達が現れた。
そこから、先は普通に別れた・・。
彼女は、また会えませんか?と言ってきたが、僕の耳には入らなかった。
だから、答えられなかった。
僕は逃げるように、舞台に走った・・。
もう僕には、なにもない・・。
まるで、僕の気持ちを表現するように、空が曇ってきた。

・・・・・・

ショーが始まった・・。
相変わらずに、エビフライ伯爵が出てくると罵声が聞こえる。
もはや、そんなことは、どうでもいい・・。
会場から、彼女の姿が見える。
最前列で、エビフライ伯爵の僕を見ている・・。
誰でもいいから、僕を殺して・・。

急に、雨が降ってきた。
屋外の屋根がない場所のため、雨が足場を濡らす。
僕は、気持ちが緩み切っていた。

その時・・。

!?
足が滑った。
雨で床が濡れていたからだ。
それで、大きく尻餅をついた。
その衝撃で、エビフライ伯爵のマスクが、僕の顔から外れた・・。
ステージで、僕は自分を露出させてしまった・・。
彼女に、僕の正体がバレた。
マスクが外れてしまった時、僕は彼女と目が合った。
もう完全に終わった・・。

・・・・・・

雨は、激しさを増したため、ショーは中止になった。
怪我はしなかったが、マスクが外れたことで、スタッフに大いに怒られた。
もう、なにもかもが、終わったのが解った。

・・・・・・

今、僕は雨の遊園地のベンチで、一人泣いている。
なんで、こんなことになってしまっただと。
昔からだ、いつも、自分の選択した道は外れるんだ・・。
昔からだ、いつも、自分のは間違うしか出来ないんだ・・。
昔からだ、いつも、自分は独りぼっちだと・・。
だから、こうして、下を向いて泣いている。

雨は、ずっと、僕の背中に突き刺さる。
全身、ずぶ濡れだ。
雨は冷たい。

・・!

妙だ・・。
急に、雨が僕の背中に突き刺さらなくなった。
雨音は、激しさを増すばかりなのに・・。

「駄目ですよ。世界征服が目的のエビフライ伯爵が、風邪を引いちゃ」

雨音から、声がした。
「・・」
その声で、僕は顔を上げてみた。
すると、傘を持った人が僕の傍に居た。
傘が、僕から雨を弾いている。
そして、その傘を持っているのは・・。

「まさか、あの時のヒーローが、エビフライ伯爵だったなんて・・」

あの娘だった。
彼女が、僕に傘を・・。
思わず、また声を上げて泣いてしまった。
嬉しかったのだ。
エビフライ伯爵が嫌いで、嘘を吐いてた僕の傍に、彼女が居ることに・・。

雨が止むまで、僕は泣いていた。
雨が止むまで、彼女は、僕の傍に居てくれた。
・・・・・・

数ヵ月後・・。

「わっははは!ヤマレンジャーめ!私は、エビフライ伯爵だ!!わっははは!」
と、スタジオの断崖絶壁で僕は笑っている。
今日は、ヤマレンジャーの最終回収録だ。
僕は、エビフライ伯爵での演技が気に入られ、次回作の悪役に抜擢された。
念願だったエビフライ伯爵との別れが来たと思ったのに・・。

しかし、エビフライ伯爵は幸せ者だ。
散々、みんなに嫌われていたのに、自分を理解してくれる人と出会い、結婚まで出来たのだから。
エビフライ伯爵は、本当に幸せ者だ。
そして、エビフライ伯爵は、僕自身だ。

・・・・・・


些末な作品ですが、お読み頂きありがとうございます。これにて、「えびふらい」は終了となります。今後も、このように、皆様から支持をされる作品が書けるよう精進します。













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