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episode.1 -The Priestess-
episode.1-1「眠り姫」4/16
自分の存在そのものが罪だとしたら

人はどうやって生きていくのか

それでいて自分を消すという選択肢も許されない

矛盾を孕んだ人生





















episode.1-1「眠り姫」





















――ここ、は?

周りには青一色。
どこかの部屋のようだ。
湊はいつのまにか椅子に腰掛けていた。
目の前には鼻の長い小さな老人と、エレベーターガールのような格好をした金髪の女性がいる。

「お初にお目にかかります、イゴールです」

しわがれた声で老人は話す。

「私はエリザベスと申します。以後お見知りおきを」

真っ青な服に身をつつんだ女性が続ける。

「さて、ここはベルベットルーム。決してあの世ではないのでご安心を。契約をなされたお人のみが入ることのできる場所でございます」

そういってノートのようなものを広げるイゴール。
そこには寮に初めて来たときに書いた自分の名前があった。

「早速一つ試練を乗り越えなさったようですな。今まで幾人もこの場所を訪れましたが、中でもあなたは特別な御方のようだ」

感慨深げにイゴールは続ける。

「貴方を待っている方がいらっしゃるようなので今回はこの辺でお暇しましょう」

意識が再びホワイトアウトしていく。

「次回からはこれをお使いになって、貴方の御意思でここを訪れて頂きたいと思います」

湊は金色の鍵を受け取った。














「あ、有坂くん、目が覚めた?」

目が覚めると自分はベッドの中にいた。
自分の部屋ではない。どうやらここは病院のようだ。
目の前にはゆかりがいる。
たしか、でかいシャドウが現れて……。

「……ッ!!シャドウは!!??」
「落ち着いて、有坂くんのペルソナの攻撃で倒しきったんだよ。下にいたシャドウは桐条先輩と真田先輩でどうにかしたみたい」

湊の肩の力が緩む。

「……でも凄かったよねあの力。私の方に向ってきたときは、正直ちょっと怖かったけどさ」
「……ごめん」
「謝ることじゃないよ。キミがいなかったら私は死んでた。気を失ってまで、私への攻撃を止めてくれたんだよね?……ありがとう」

私が守るつもりだったのに、とゆかりは呟く。

「でもホントに心配したよ。一週間も目覚まさないんだもん」
「……そんなに寝てたのか」

学校の奴らへの言い訳大変そうだなとか思っていると、ゆかりが唐突に話題を変えた。

「あのさ……私も、あなたと一緒なんだ」
「え?」
「お父さん、昔事故で死んじゃってさ。お母さんともうまくいってなくて」
「……そっか」
「有坂くんの身の上話聞いちゃって。自分だけ知ってるの嫌だったから。ちゃんと話さなきゃと思ってたの」

湿っぽい話題を振り切るように、ゆかりが椅子から立ち上がる。

「んじゃ、もう安心だよね。私の拙い看護よりも本物のナースさんの方がいいだろうし」

そのまま部屋から出ようとするゆかりに

「岳羽!」

湊は呼び止める。不思議そうな顔をするゆかり。

「……見守ってくれて、心配してくれて、ありがと」

ゆかりは笑顔で答える。

「ど〜いたしまして!」















「そろそろ来るだろうと思ってたよ」

今日は念のため病院に止まることになった湊。
現在の時刻は夜十二時。時計の針は全く動いていない。
影時間である。

「やぁ、元気そうでなにより」
「病院にいる人間への台詞じゃないな、それは」

湊は目の前の少年――ファルロスを睨みつける。

「さ、説明してもらうよ。あの死神は何?……違うか、死神の正体は分かってる」

一呼吸おいて、強い口調で問いただす。

「お前は何故暴走した?」

もし今後同様の暴走が起きたら。
今回は未遂で済んだが、また仲間を危険にさらしてしまう。
それだけは防がねばならない。

「あの巨大なシャドウのせいだろうね。あれは僕に密接な関わりがある。けど大丈夫。あの時は本当に危なかったけれど、キミの強い精神力のおかげで僕は愚者と再び一体化できた。あの暴走は十年間のストレスみたいなものだから、もう起こらないものと思っていい」

愚者とはオルファウスのことだ。
愚者と死神は同一の存在。
表と裏。

「……そうか」

ただ頷くだけの湊。

「もう少し僕を信用してほしいところだけど……仕方ないか。それじゃ、僕はそろそろ失礼するよ」

ファルロスが見えなくなる。

――死神に憑依されるわけにはいかない。

これ以上大切なものを失いたくない。
失った大切なものを取り戻さなければならない。

今は、ただその決意のみ。
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