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episode.3 -The Hierophant and The Lovers-
episode.3-6「商店街の協力者」6/26
ペルソナは限られた人間にのみ使える能力である。
それは一般の人間に知られることのない能力ではあるが、だからといって全ての一般人がこの特殊な世界を知らないというわけではない。
特別課外活動部には、桐条グループ直属の組織の他に協力者がいる。
彼らは、湊たちにとっては欠かすことのできない存在である。





















episode.3-6「商店街の協力者」





















月光館学園2−F、湊は教科書類をカバンに入れ帰り支度をする。

――今日は管弦楽部に顔出すかな……。ん?美鶴さんからメールだ。

携帯を開くと、新しい武器と防具が調達できたとの内容が書かれていた。
装備品の管理は湊に一任されている。
何故かはわからないがタルタロスを探索すると、装備品が落ちていることがある。
それらを含めた装備品をメンバーに割り振りするのが役目だ。
それぞれには例えば攻撃を回避しやすくなるなどの特殊な能力もあるため、リーダーである湊の管理下に置くのが適切だと判断されたのである。

――放課後は装備の調達で潰れるから部活は無理か。誰か手伝いを……。

そう思い周りを見渡すと適任者がいた。

「あ、伊織。いまから黒沢さんのとこ行くんだけど手伝ってくれない?」
「ん?装備品の調達か?いいぜ〜。どうせ暇だしな。」

黒沢とはポロニアンモールにある交番に勤めている警察官だ。
桐条グループに縁があり、武器や防具の保管に携わっている。

「それじゃ、行こっか。」
















「黒沢さん、お久しぶりです。」
「よう明彦。頑張ってるみたいだな。」

ポロニアンモール交番。
湊、順平に加えて真田がこの場所に来ていた。
二人で学校を出ようとしたところ、校門付近で真田を見かけ声をかけたのだ。
真田と黒沢は旧知の仲とのことらしい。
真田は昔から黒沢の世話になっていて、彼のことを尊敬しているそうだ。

「それで、装備品のことですけれど……」
「ああ、武器防具満遍なく揃えてある……これだ。」

黒沢は物置から様々な装備品を引っ張り出してくる。
武器は剣、弓、槍からグローブまで。
防具は軽くて丈夫な、動きやすいものをメインに揃えてある。

「ん?……あの、黒沢さんこれは?」
「ああ、それか。俺も正直なんだと思ったんだが……ハイレグアーマーとかいう名前らしいぞ。」

怪訝な目でその防具を手に取る湊に、黒沢は溜息をつきながら答える。
その防具は女性主人公が悪を倒すアニメにでもでてきそうな露出の高いシロモノだった。
桐条グループは一体何を考えてこんなものを作ったんだろうか。

「おお!?なんと素晴らしいコスチューム!!」

確かに同意したいのはやまやまではあるが、とりあえず順平は放置しておこう。

「まあ見た目はこんなんだが、防御力の方は確かのようだぞ。これが各装備品のデータだ。」
「ありがとうございます。」

黒沢から数枚の紙に納められたデータを受け取る。
寮に道具を運んでからじっくりみることにしよう。

「じゃあ今日はこの辺で失礼します。」
「ああ、ご苦労さん。新しいものを仕入れたらまた連絡するよ。」

渡された装備品を手分けして運ぶ。
三人なのでそこまで大変ではなさそうだ。

「有坂、順平。俺はもう少し黒沢さんと話をしてから帰るから先に行っててくれ。」
「ういッス。」
「あ、はい。じゃあお先に。」

湊は順平とともに交番を後にする。
その後姿を見ながら、黒沢は真田に語りかけた。

「明彦、すまないな。お前たち若い奴らばかりに大変な役目を……。」
「大丈夫ですよ。それに、俺の人生は黒沢さんにもらったようなものですから。これくらいじゃ恩返しにもなりません。」
「……そうか。」

少し遠い目をする黒沢。
夏本番を目の前にした太陽の光が窓から入ってくる。

「暑くなってきたな。茶でも入れようか。」

黒沢の言葉に、真田はゆっくりと頷いた。

















「んで、どうすんの?このまま帰るんか?」

装備品を入れた大きなバッグを軽々と掲げた順平が湊に尋ねる。

「ホントはそうしようと思ってたんだけど、真田さんが分担してくれたから少なめで済んだし他のものも買ってこうかな。」

湊が管理しているのは装備品だけでなく、探索途中で使用する薬品なども含まれている。
補充を怠ると危険な状況に追い込まれかねないため、湊は早め早めの備蓄を心がけていた。

「じゃあ伊織は青ひげにいって傷薬とメディカルパウダーを5つずつ、あと地返しの玉を3つ買ってきて。僕は骨董屋行ってくるから。」
「ん、了解っと。」

順平は青い看板の店に入っていく。
青ひげは正式名称青ひげファーマシーという薬屋で、タルタロスで使える薬品を扱っている。
そして骨董屋とは

「来たかい。そろそろだと思っていたよ。」
「あなたは予知能力者ですか。」

古風な木製のドアを開けると声をかけてきたこの女主人が骨董屋、古美術眞宵堂の店主である。
ここではタルタロスで拾った宝石の原石等を加工してアイテムにしてもらっている。
その中には様々な特殊効果をもつアクセサリもある。
原石はたまにしか発見できないが、その分有用なアイテムを手に入れられるのだ。

「えっと、エメラルドいくつかあるんでチューインソウルを。あとパールとガーネットで反魂香も一つ。」
「あいよ。しかしいい若いもんが宝石をこんな色気ないもんに使って……女の子にプレゼントしたいから指輪にしてくれとかないのかい?」
「ほっといてください。」

毎度毎度、彼女にはからかわれる。
なんというか、かなわない。

「ったく顔が悪いわけじゃないんだから、周りに女の子くらい寄ってくるだろうに……まさか私狙いかい?」
「徐々に顔に生まれてるシワを鏡で確認してからほざいてください。」
「なにをいうんだい。私はまだピチピチの三十代だよ。」
「微妙な嘘を……数年前からその言葉は使えなくなったはずです。」

確かに見た目は若いので三十代で通じるかもしれないが、もう既に四十歳を超えているはずだ。
というかピチピチというのも死語だろう。

「それはさておき……気になる子ぐらいいないのかい?私がその年の頃なら目移りがして仕方なかったもんだがね。」
「今は、ね。」

余計なことをいうと墓穴を掘りそうなので、最小限の言葉に抑える。

「ふん、そんなものかね。まああんたたちの戦いには世界がかかってるんだ、フラれて精神が崩壊したりするよりはましだがね。」
「……。」
「おっと、プレッシャーかけちまったか。……私に手伝えることがあったらなんでも言いな。私もやれるだけのことはやらしてもらう。」
「……ありがとうございます。」

たとえペルソナを持っていなくとも、自分たちを助けてくれる人間は多々存在する。
特別課外活動部に入ってからは特にそれを感じるようになった。

「頼まれたもんは来週までになんとかしとくよ。」
「お願いします。じゃ、この辺で。」

















外に出ると、順平が広場の中央にある噴水傍のベンチに腰掛けていた。

「悪い、待たせちゃったね。」
「いいってことよ。よ〜し、帰るか。」

よっこいしょういち、などとおっさんの台詞を吐きながら順平が立ち上がる。

「なあ、有坂。」
「ん?」

寮の方向へ歩きながら、順平が湊に話しかける。

「お前の兄ちゃん……睦をさ、ウチの寮に入れられないか?」
「……言ってたでしょ。僕の敵だって。」
「お前らがいがみ合ってるようには見えねえもん。」

確かに表面上は、いや正真正銘睦と湊は仲の良い兄弟である。
だが、滅びを願う睦が特別課外活動部の方針に従うことはありえない。
もっとも、そのことを知らない順平にわかるはずはないのだが。

「別に喧嘩してるわけじゃないからね。」
「じゃあいいじゃねえか。」
「僕は構わないけど……兄ちゃんは断ると思うよ。」

思う、というより断定できるだけの根拠がある。

「よ〜し、見てろよ!俺のすんばらしい交渉術で落としてやるぜ!」
「……どうでもいい。」

意気込む順平に、湊は無駄を悟らせることを諦めたのであった。
二人で大きな荷物を担いで街を出る。

「そういえばあのハイレグアーマー、どうすんの?ゆかりッチ、それとも桐条先輩?ここは戦闘関係ないけど風花とか!?」
「僕が着ようかな。」
「嘘ッ!?」
「嘘に決まってるだろ。」

湊は順平とそれこそどうでもいい会話を繰り広げながら帰寮した。
余談であるが、仕入れたハイレグアーマーはゆかりに押し付けたことを追記しておく。
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