episode.epilogue -Judgement The Second-
episode.epilogue-Sanada「尊敬」
真田さんへ
そういえば真田さんに、しっかり自己紹介した覚えがないです。
初めて会ったとき、いきなり巨大シャドウを引き連れてきたんでしたよね。
無茶苦茶ですよ、あんなの連れてくるなんて。
アバラ折って初めましてって、どういう自己紹介ですか。
なので第一印象っていうのはあんまりないんです。
でも、真田さんの印象っていうのは一つですね。
男前な人、です。
なんであんなに揺るがないでいられるんだろう。
なんで前だけ見ていられるんだろう。
そうやってずっと思ってました。
十二月に真田さんの部屋に行ったとき。
真田さんの妹の話を初めて聞いて。
初めて、真田さんの根本が見えた気がします。
真田さんは、強くあろうと努力し続けていたんですよね。
何を守るためなのかも決めることなく。
途中でふらつくことぐらい、あっても不思議じゃなかったのに。
目に見えないものを追い求めて、目に見えない何かを守ろうとして。
自分の信念を確固たるものとして貫いて。
もしかすると、昔はふらつくこともあったのかもしれないけど。
僕はそんな真田さんを一度も見ることができませんでした。
荒垣さんが死んだときでさえ、真田さんはすぐに前を向いた。
辛くなかったはずがないですよね。
今までずっと一緒にそれぞれの道を歩んできた、盟友がこの世を去って。
けどそれは真田さんにとって、力を失う理由にはならなかった。
それだけのこと、なんですかね。
そんな真田さんを、僕は尊敬しています。
死ぬ間際に頼むと言った荒垣さんの気持ちが、今なら少しわかる気がします。
きっと自分がいなくなった世界を、安心して任せられる存在だったから。
だからあの時、荒垣さんは頼むと言った。
そんな気がします。
これからも真田さんは、真田さんでいるんだと思います。
真田さんがどこまで上り詰めるのか、楽しみにしています。
真田さんの一ファンとして、見させてください。
「……どいつもこいつも」
真田は手紙を握り潰し、その手を壁へと叩きつける。
「シンジといいこいつといい……どうして勝手に消えやがる」
自分は今まで、命の危機というものに接したことがない。
戦っていれば死ぬかもしれないということはわかっているし、そのリスクは理解してたつもりだ。
だが手を抜いていたわけではないのに、物理的に死ぬかもしれないといえるほどの状況に陥ったことがない。
その危機に陥るのは、いつだって自分ではない。
もっとも、人の命があっさりと失われることを、その度に痛感しているのだが。
「……勝手に突き進んでたのは俺のほうだ。その役目を果たすのは俺のはずだろ」
周りを顧みず、ひたすらに自分が在るべき形だけを考えてきた。
だったら周りを置いていくのは、自分が相応しいはずなのに。
「結局俺は蚊帳の外かよ」
所詮自分は、当事者ではなかったというのか。
荒垣を失ったときに、自分が何も見えていなかったことに気付いた。
そして、あの時と今とでは違ったはずなのに。
結果として、また置いていかれるはめになった。
「でも……変わってたまるか」
だが、同じ結果を生み出してしまったのだとしても。
自分の選んだものを捨てるつもりはない。
もう戦いが終わったのだとしても。
「俺は俺だ、有坂。悪いが、お前に影響されるつもりはない」
この先、二度と戦いは求められないのかもしれない。
でも決して、強さを追い求めることを止めやしない。
ただ高みを目指すだけ。
それは決して他人に止められるものではない。
「これが現実って奴なら、俺はコイツを乗り越えてやる」
次々と立ちふさがってくる、現実の壁。
その壁を見て、避けることも逃げることも。
あるいはそれを壊そうとすることも選択肢としてはあるのだろう。
だが、その現実をあるがままに捉え、真っ直ぐと乗り越えることこそが自分のやり方だ。
「勝負だ。俺の前に立つ奴は、すべて跳ね返してやる」
いつか自分が倒れるまで、ずっと。
自分の決めた道に何があろうとも。
それが、この真田明彦の勝負。
この命を懸けて。
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