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REAL GAME
作:野澤 ちか



第9話


静まり返る森の中

鬱蒼と生い茂る木々に潜み、隙あらば命を狙おうとする獣たち

闇に染まった葉々をうっすらと照らす下限の月

「一番近い湖はここから北東・・・」

予め頭の中で練っておいた下準備を手早く終わらせ、渡された地図を広げて湖と小屋の位置を確認する。

「・・・うん、条件ぴったり」

軽く笑みを浮かべた後、手に巻いていたロープを慎重に狙い定めた幹に巻き付けターザンの様に移動する。

猟銃を肩に掛け、ヘッドライトを頭に被り、僕はゆっくりと着実に移動を続けていた・・・





















「きゃ・・・っ」

風で枝が小さく揺れた瞬間、桜雪は体を強ばらせて軽い悲鳴をあげる。

「・・・何だ、枝だったんだ」

安堵にも似た溜め息を吐くと、再び歩き出す。

開始から既に30分経っていた。

月が雲に隠れる度に闇は濃くなり、鼓動が速くなる。

「やっぱり暗闇って怖いなぁ・・・てゆか湖まで遠いし。でも急いで走って躓いたりするのは危ないし、で、でも今狼に遭遇した方が危ないかな・・・」

小さな独り言さえ、静まり返った森の中ではよく響き、それが一層不安を募らせる。

いざという時の為に右手に掴んでいる猟銃だって、とっさに使えるか分からないし──かといって試しに練習何て出来る訳も無い。

「早く朝が来れば良いのに・・・」

桜雪はとめどなく押し寄せる恐怖を必死に抑えつけ、周囲に気を張り巡らしながら足早に湖に向かっていた。

──一方、賢治から45平方キロメートル、桜雪から18平方キロメートル離れた場所では。

「ふん、俺は森の中何か慣れてるさ。いざとなればこの猟銃で撃てば良い事だしなっ、にしても何時までふざけたゲーム続ける気だ・・・早く元の世界に戻せってんだ!」

苛々と恐怖が混じった様な怒鳴り声をあげながら、それでも恐る恐る探る様に歩き続ける。

彼はブラジルの先住民であり、森の中で部族と共同して暮らす少し血の気の多い若者。

あの日、彼は薬になる植物を採取する為に一人森の奥に出掛けて行った。

そこで途中、見た事も無い変わった板を見つけて無意識に触れた瞬間、突如底の分からない井戸が現れ──今と至ったのである。

今思えば、何故あそこで頷いてしまったのか──それを考えると悔しくて堪らない。

・・・どうかしていたんだ。

皆は、否、近日中に結婚を控えた可愛い妹は今頃僕の事を心配して待っているに違いない。

一刻も早く帰って、安心させてやらねばならないのだ。

「しかし・・・猟銃か。この道具は狩に便利だな。土産に持ち帰ってはいけないのだろうか?」

これだけでない。勝手は未だによく分からないが、どうやら遠い未来は自分には想像もつかない程めまぐるしい変化を遂げているようだ。

見る物、聞く事、使う道具、全てが不思議であり、有り得ない事実。

しかしそんな事は別にどうでも良い。

俺は兎に角ゲームに勝ち、妹の結婚式を祝福してやれれば良いのだ。

「ふふ・・・」

妹の幸せそうな笑顔を想像し、笑みが零れた。

足取りは少し軽くなり、呑気に鼻歌何かしてみる。

「ゥオーン・・・」

「え」

鳴き声の聞こえた方へ体を振り返ると、そこには灰色をした2匹の狼が目を爛々と光らせてこちらを見つめていた。

「わ・・・ぁっ」

急いで猟銃を構えて一発打ち放つと、右側にいた狼が鈍いうめき声を挙げて倒れる。

しかし同時に、左側にいた狼が勢い良く彼の体に飛びかかり遠吠えを挙げた。

「ああぁぁあ、やめっ、やめろぉ!」

飛びかかられた時に体勢を崩して投げてしまった猟銃を、必死に探そうともがくが見つからない。

彼の顔は恐怖でクシャクシャに引きつっていた。

「やめ・・・」

目の前のそれと目が合った瞬間──鋭い牙を彼の腹に突き刺した。

「・・・ぅうああぁぁぁあー!!」

激しい熱を帯びた痛みと共に、悲痛な絶叫を挙げる。

彼の叫びは森の中で小さく木霊していたのだった・・・

1人目──午前07時03分、第5会場27番死亡。












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