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REAL GAME
作:野澤 ちか



第8話


「・・・さて」

──日の入りまで、残り30分。

僕は案内人に道具の注文をし終えた後、かさばらない様に予め参加者に用意されてある道具入れを選んでいた。

えーと・・・小さいので充分だけど、取り出しやすいのが良いよな。

「けんちゃん、選んでる所?」

「うん、でももう決めた」

そう言って、沢山有る道具入れの中から腰に巻けるオレンジ色のポーチを掴み、桜雪に見せる。

「あれ、結構小さくないかな?」

「まぁ中に入れるには充分だから」

ポーチの中に先程貰ったライターを入れる。

桜雪は検討がつかない、といった表情で僕を見た。

「ね、けんちゃん何持ってくの?」

「猟銃とヘッドライトとロープ」

「えぇ? さっぱり分かんない」

僕は指を唇の前に持っていきながら、うーん・・・と暫く考え込んだフリして、秘密だよ、と意地悪く笑う。

「わ・・・今の顔すっごい意地悪っぽいっ」

「意地悪で結構」

「む・・・けんちゃん何時からそんな嫌な子になったの」

真っ白な頬を小さく膨らませ、拗ねた様に唇を尖らせる。

桜雪はとっくに準備を終えていた様で、けーちっ、と僕に悪態を吐いてからアリア達の所へ走っていった。

「・・・俺、子供じゃ無いんだけど」

その背中を見つめながら、自分にしか聞こえない程小さな声で呟く。

何で桜雪はこんなに鈍感で、子供っぽくて、その上愛しくて──いっそ。

・・・あれ、何だろこの気持ち。

今、何か物凄く冷酷な事を考えてなかったか?

「賢治、10分前だから最後の説明を聞こうよ」

「・・・・・・」

「あれ? どうしたんだい」

「気のせいか」

「?」

「否、何でもないよエディ」

エディの背中を一度押してから、中央に向かう。

「──それでは最後の説明と確認を致します」

一礼した案内人がマイクを片手に喋り始める。

「先ず先程申された道具は、皆様をゲーム会場に移動し終えた瞬間手元に置かれます。尚、不公平にならない様、スタート地点は狼から1平方キロメートル以上離れた場所となります。ゲーム時間は明日の日出まで。勝者数に制限は有りません。それと、今回は参加者を救済する事も殺傷する事も良しとします」

殺傷・・・? そんな事する訳無い。

「森の中にはいくつか武器も置いてあるので、それを使用しても構いません。それと皆様に渡した地図でゲームの最中の間、自分の現在位置が分かる様になっていますので無くさないで下さい。皆様の健闘を祈ります。では失礼します」

案内人は立ち去っていく。

腕に巻いてある時計を見やれば──既に6時18分を差していた。

「皆さん、その、5回戦も絶対勝ちましょうねっ」

桜雪が少し恥ずかしそうに、でも明るい声でそう言い、拳を握って勢い良く振り上げた。

「もー、桜雪ちゃん可愛すぎ〜っ」

「あ、あの、ドロシーさん・・・」

その行動にドロシーが愛しそうに桜雪の頭を撫でる──否、クシャクシャになる位に手を動かしている。

御陰で桜雪の頭は髪の毛が宙に浮いた様な酷い状態になっているが──困った様な笑みを浮かべるだけで怒りも止めもしない。

エディは桜雪と同じ様な表情で僕を見つめる。

アリアに至っては、別にどうでも良いと言わんばかりに窓から太陽の観察をしていた。

ハァ、と僕は短い溜め息を吐き、ドロシーの方を向いてそれとなく手を止める様に促す。

「ドロシーさん、程度を考えて」

「ふ?」

「桜雪の頭が爆発してます」

あぁ、と彼女は直ぐに手を止めた。

「桜雪ちゃんがあんまり可愛いものですからー」

・・・無邪気に笑ってる辺り、そんなに反省はしてないんだろうけど、気にする程でも無いか。

「それにしても、緊張感無いなぁ」

エディが思いついた様に洩らす。

「「ん?」」

それにドロシーと、もつれた髪を手櫛でといている桜雪が反応を見せた。

「緊張したって良い事無いけど、こんなに和やかで緊迫した雰囲気出てないのって、ここの会場だけじゃないかな」

「それを言うなら、エディは?」

僕は真っ直ぐにエディに視線を向け、間髪入れずに返してみた。

そう言うと彼は唸り声を上げ、困った風に肩を竦める。まるでこの議題には答えが無いんだとでも言う様に。

「僕もその1人だ。確かに怖くないかと聞かれれば、間違いなく怖いだろう。だけど・・・うーん、何でだろう。これから狼の住処に放り込まれるのに」

そこで一旦エディの言葉が途切れる。少しの沈黙の後──彼はゆっくりと次の言葉を紡いだ。

「僕は次で負けるかも知れない」

「何言って・・・」

「え・・・あ、勿論勝つ気でいるよ。あくまで予感何だ。だから賢治もそんな顔しないでさ・・・あぁ、参ったな。失言だったみたいだ」

彼は僕の表情に慌てた様子で取り繕い、明るい声色でユーモラスに纏めようとする。

しかし、それでも黙っている僕の態度に彼は申し訳なさを感じた様に目を逸らしてしまった。

その様子でやっと僕の思考回路が動き始める。

「・・・そうだね。別に気にする事じゃない、勝てば問題無いんだ」

エディに言った積もりが自分に言い聞かせるかの様になってしまっていた。

発した言葉を噛み締めながら、僕は静かに決意する。

その時不意にアリアが、あ、と小さく呟いた。

「日が沈む・・・」

その声に僕が振り返った時には既に日は完全に沈み、空は闇に溶け込んでいた。

「──では、これより第5回戦を開始致します」

獣に狩られるか、上手く逃げ切られるか──生死を分かつは自分次第。












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