REAL GAME(34/77)縦書き表示RDF


REAL GAME
作:野澤 ちか



第3話


「………っ」

目覚めたのは、痛みに起こされたから。

どうやらうっかり、ベッドの板に手をぶつけてしまったらしい。

ジンジンと麻痺する右手を恨めしく眺めて、ハァ…、と深く溜め息を吐く。

「さっきより、腫れてるし……」

青紫に変色した右手の甲は、所々に赤黒い点々が浮き出ており、少し擦り切れている。

「骨…大丈夫か?」

正直、心配である。

本当にどうしようかと思案していた時、キシ…と、誰かがこちらに近づいて来る気配がした。

時計は2時半、室内の暗さから夜中であろう。

「誰……?」

なんとはなしに呟いていた。

漆黒に身を溶け込ませるその者は─…

「えっ?」

冷やっこい感覚に、思わず肩を跳ね上げる。

僕の横顔に当たったのは、氷水を入れた透明な袋であった。

そして、それを持つ白い腕の先には

「アリア……」

彼がいた。

「どうしたの?こんな夜中に…」

「これ手に当てて。後、包帯。──それじゃ眠れない。」

僕の言葉は遮られ、アリアは腰に巻いてあったバッグから、救急セットらしきものを取り出した。

その動作を、ポカンと間抜けな顔で見つめ続ける僕。

それに気付いた彼は

「…こっち来て」

と、けしてキツく無いが有無を言わせない態度で促したのだった。



「痛くない?」

「あ…うん」

消毒液をティッシュに浸し、手早く包帯を巻いて固定する。

その動作の速さと手つきの良さに、少々驚いていた。

「いつから…気付いてたの?」

「部屋に入って来た時から。──これ、骨にひび入ってる」

ドキリとする。可能性は考えてたけど、骨にひびって…かなり厄介じゃないか。

同時に、手の様子だけで怪我の具合が分かるこの少年に、益々不思議な物を感じてしまう。

どう見たって、僕と同い年かそれ以下の年齢だろうに、この落ち着きぶり。

いや、僕もそこら辺は人の事言えないけど……

「終わり」

下に視線を落とせば、綺麗に巻かれた包帯姿の右手があった

痛みも幾分と引いている。

「後はその袋、当てといて……」

「ありがとう」

このレベルの医療知識があるなら、ある程度現代に生まれてきたのだろうか?

それとも、医療関係に携わる環境にいたとか?

疑問は浮かぶが、あれこれ詮索をする趣味は無い。
そしてアリアも、聞かれたら億劫と感じるかも知れない。

「お休み、アリア。助かったよ」

だから、聞かない。

アリアはその台詞にニコリともせず、お休み、と呟いて横になった。

直ぐに規則正しい寝息が聞こえる。


僕はその子供らしい反応に、クスリと微笑んだ。

「さて…僕も寝なきゃな」



多くの人はトラウマや痛み、負の感情を抱えて生きていく。


アリアも

アリアも見えない翼に傷を負っているのだろうか?

白い翼が燃やされて墜落するアリアの姿を想像した。

でも、かぶりを振って直ぐに打ち消す。

「何考えてんだろ…」

結局なかなか寝つけず、うとうとし始めたのは明け方になってからだった。

──でも、3回戦は明日だから寝てても良いよな。

丸1日ご飯を抜くのはキツいけど、もういいや。

太陽が微かに差し込むのを感じながら、僕は体を丸めて猫となった。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう