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Zero of the Beowolf
作:T・K



王女の来訪2


 アンリエッタの悩みを聞いたルイズは即座にその解決を自分がすると言い出し、そしてアンリエッタもそれを了承した。
 ルイズはアンリエッタが自分を頼りにきたことに歓喜を覚えていた。
 キョウスケの意見とフーケを捕らえた功績により、最近は『ゼロ』と呼ばれることもなくなった。
 しかしそれでも、魔法が使えないということだけは変わってくれなかった。
 いくら教師に尋ねたり図書館の本をあさってみても、爆発が起こる理由は分からずじまい。いくら馬鹿にされなくなったとは言え、魔法が使えないという事実は変わっていないのだから、影でいまだ『ゼロ』といわれているのではないかという不安がルイズの中に残っていた。
 だが、そんな自分をアンリエッタは頼ってくれたのだ。まあ隣国のゲルマニアとの同盟云々は気に入らないが、それは彼女からの期待に比べれば些細なものである。
「お任せください、姫様! 見事その任務を無し遂げて見せます!」
 イスを蹴飛ばして立ち上がり、アンリエッタの手に両手を重ねるルイズ。アンリエッタも勘当した面持ちでルイズを見ていた。
「……少し良いですか、王女」
 と、そこで無粋な声が横からかかる。腕組みをしつつ椅子に座り、目を閉じてアンリエッタの話を聞いていた使い魔のキョウスケだ。
 アンリエッタはいい雰囲気を邪魔されて気分を害したようだが、それでも表面上はその様子を見せず「なんですか、使い魔さん?」と問いかけた。
 一方何でこんなときに姫様に話しかけんのよと思ってしまうルイズである。せっかく姫様と話していて、しかも頼みごとの話まで姫様の厚意で聞かせてあげてんのに。
 しかしキョウスケは閉じていた目を開きつつ、アンリエッタを見ながら一言。

「あなたは、自分の過失でその『大切な』友人を殺すつもりですか」

 と言ったのである。
 一瞬ルイズとアンリエッタは何を言われているのか分からなかった。しかしその意味を理解できた途端、ルイズは驚きで動けなくなり、アンリエッタはうろたえ始める。
「な、何を言われるのです! 何故私がルイズを殺さなければならないのですか!」
「……何故こんなことを言われたのか分かっていませんか?」
 キョウスケは開いた目を鋭く細め、アンリエッタをその視線で射抜く。
 その心の中までも覗こうかという視線にアンリエッタは自然、椅子に座っているにも拘らず後ろに下がろうとしていた。
「隣国『ゲルマニア』との同盟のための結婚のために、『アルビオン』の王子から過去の恋文を入手せよと貴方は言った。ですがそれを彼女一人に任せ、しかも行く先が戦争している真っ最中という状況で、あなたはルイズに行けと? ……何の戦いの訓練も、その上経験すらない人間を行かせるのは、その人間に死ねと言っている様なものだと思いますが」
「!! そ、そんなことなど考えてません! 私だって危険だと思っていますし、それに彼女には腕の立つ護衛だってつけます! そんなことを言われる覚えは「ならば何故、初めからそういった人間に頼まないのですか?」な!?」
 そして、決定的な言葉が放たれる。
「ご主人は確かに貴方のご友人らしいが、こんな任務を受けられるほどの強さを持っていないことは貴方だって分かっていたはずです。しかもこの手のことに対応する機関の一つや二つ、あなた方のような王族なら持っているはずだ。だが、それを使おうとしない」
「……」
 キョウスケの言葉を聞いているうちにどんどんアンリエッタの顔が青ざめていく。キョウスケの言葉から、彼が何を言おうとしているのかが分かってきたのだろう。
「恐らくご主人も、その護衛を頼んだ人間も、自分にとって「キョウスケ、もう止めなさい!!」……」
 そこで、驚きのせいで今まで動けなかったルイズがキョウスケの言葉をさえぎった。
「なぜだ、ご主人」
「何でも何も無いわよ! あんた姫様に何てこと言ってんの! 今まで固まってたけど、これ以上はいくらキョウスケでも許せないわ!! それに私がこの任務を受ける強さが無いですって!? 今すぐ今までの言葉を撤回しなさい!!」
 言いながらキョウスケに近づき、怒りに染まった瞳で椅子に座ったキョウスケを見下ろす。しかし、キョウスケはまったく動じることなく彼女に答えた。
「それはできん。……逆におれからも聞きたいことがある。王女から頼みごとを受けたのは良いが、それではご主人はどうやってアルビオンまで行くつもりだった」
「え!? ……そ、それは……」
 突然の質問、そして聞かれたことに言葉をつまらせるルイズ。何とか言い返そうと言葉を捜し、
「そ、そうよ、あんたがいるじゃない! わたしが行くんだから、使い魔のあんただって付いて行かなきゃいけないじゃない! あんただったら私を助けられるでしょ!」
「……まあ、そうだろうな。だが、今聞いているのはおれがついていった場合じゃない。おれがいない時の話をしている」
「え?」
「確かにおれがいれば、何とかやっていくこともできるだろう。だが、おれがいない場合、それに途中でおれとはぐれたりした場合はどうするつもりだった? しかもそんなときに敵と遭遇した場合はどうする?」
「!」
 言われて初めてルイズは気が付いた。そうだ。こういった任務のときは、普段では考えもしなかった可能性も現実のものとなりうるのだ。
 そう、キョウスケと別れるといった事態も……
「ご主人は爆発を起こすことしかできず、その爆発もコントロールできるわけではない。今のご主人も自分が満足に戦うができないのはわかっているはずだ。それに、行くルートをどうすればいいか、危険、もしくは刺客が潜んでいそうな場所はどこか。食料はどの程度持っていくか、宿が確保できない場合はどうするか。こういった危険の想定をすることもできないだろう。……無論想定どおりに全てが進むわけではないだろうが、ある程度は予測しておくのは当然のことだ。この程度のことも、しかも戦いも一人でこなせんようでは、足手まとい以外の何者にもならんぞ」
「!!」
 はっきりといわれたその言葉に、怒りを忘れてルイズは立ち尽くす。
 キョウスケはそんなルイズから少しの間目をそらし、再び視線を向けて言葉を続けた。
「……きつい言葉だとは思う。だが、ここまで言えば分かっただろう。おれは以前、ご主人は貴族であることに誇りを持っているといった。恐らく今回のことには、それも関わっているんだろう。だが今のご主人はまだ学生で、戦える段階まできていない。それにも拘らずこんなことを引き受ければ、無駄死にするだけだ」
「……ッ!」
 反論しようとする。しかしキョウスケの視線と先程の言葉のせいで、いつもの癇癪を起こすことができなかった。
 それはそうだ。彼の言っていることは、まったくの正論なのだから。
 アンリエッタから頼みごとをされたことに舞い上がって、実際に旅をするという事実にはまるで目を向けていなかったのだ。そのことを何度も助けてもらっているキョウスケに指摘され、反論などできるはずが無い。
(……でも、でも……!!)
 しかし、頭では理解できても納得することはできなかった。
 実力を持たず、自分のあだ名である『ゼロ』そのまま、しかも姫様の頼みにも応じることができない。そんなことは、断じて認めることはできなかった。彼の言うように自分がこの任務を受けることは無謀以外の何者でもないのだろうが、しかし……
(私だって……!)
 引くことなどできなかった。ささやかだが、自分には貴族としてのプライドがある、それに反することだけは、できないのだ!
 ルイズは悩んだ末に行くことを再び決心し、そのことを伝えようとする。が、ルイズのその様子を見たキョウスケはいつもの無表情に笑みを浮かべ、

「それでいい」

 とルイズに言ったのだった。キョウスケに何を言われたのか分からず、再びルイズが凍りつく。
 キョウスケは凍りついたままのルイズに言葉を続けた。
「すまんな、こんな真似をして。だがさっきまでの様子では、自分が任務を受けて何をやるか分かっていなかっただろう?」
「え? あ、う、うん」
「だれもが初めは巧くできるわけがない。今回の一件でも、そこまではご主人には望まん。これから学んでいくことでもあるだろうしな。だが、心構えすらもできていないようでは同行するこっちが困る。ならば……」
 そこまで言われてルイズはは! と気付いた。つまり、今までのは!
「あ、あんたまさか!!」
「察しの通りだ。多少は覚悟というものを持ってもらった。……どうも、警戒心といったものがかけていたような気がしたんでな」
 しれっとした様子で言うキョウスケ。対してルイズの顔は真っ赤に染まる。
「あ、ああああああんたねぇぇぇぇそんなことだったらはっきり言って伝えればいいじゃないのよこのムッツリ使い魔なによそうだってわかってたらこっちだってあんなにやきもきしなくてすんだのにってあたし何言ってんのよあんたのせいだからね分かってんの!?」
 勝手に暴走して言いまくり、最後にはキョウスケのせいにするルイズである。
 無論この程度のことにキョウスケが動ずるはずがなく、至極落ち着いた様子でルイズがおとなしくなるのを待つのであった。しばらく時間がたち、はー、はーと肩で息をしつつようやくルイズが落ち着く。……その間、まったく表情を動かさなかったキョウスケだったが。
 うー、と唸りながらキョウスケを睨むルイズ。「いつかぎゃふんと言わせてやる」などと不穏なことを呟くが、当然キョウスケは気にもしない。気にはしなかったが、
「……まあ、すまんな。確かに直接言っても良かったが、こちらのほうが効果があっただろう? ……それに、話したいこともあったんでな」
 と言って謝ってきた。悪気はあるらしい。だが、すぐに言葉の調子を変え、ルイズのみに声が聞こえるように声を落としてきた。ルイズはその様子からただならぬものを感じ、自然神経をキョウスケに集中する。
「……実のところを言えば、ご主人のことがなくてもおれは『アルビオン』に行くつもりだった」
「え、そうなの? でもなんであんたがアルビオンに……!」
 喋っている途中で気付く。キョウスケが自分から動く理由など、一つしかないではないではないか!
「ま、まさか……」
「そうだ、ご主人。……アルビオンに、『奴ら』の影がある」


よ、ようやく更新できました……
とりあえず、一ヶ月に一回は更新していきたいです……











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