Zero of the Beowolf(20/24)PDFで表示縦書き表示RDF


Zero of the Beowolf
作:T・K



いつもの(?)騒動


「まっっっっっっっっっっっったくひでぇよなー」
「……」
「いくらあのおっさんをあいつの中に入れるからって俺を小屋に放り込むことねぇもんなー」
「…………」
「しかもその理由がおまえが口を開くとうるさいからだって言うんだもんなー」
「………………」
「俺だって相棒と一緒にあいつの中で訓練してるときは周囲の状況だとか知らせて役立ってんのにさー」
「……………………」
「いくらなんでもこの仕打ちはねぇよなー。しかも忘れそうになったってほんとにひでぇよなー」
「…………………………分かったからそろそろ黙れ。……悪かった」
 キョウスケは学院の歩きながら、肩越しに背負っている剣、デルフリンガーに言う。これから朝食をとりに行く途中であった。
「だってよー、今まで相棒になった人間からだってここまでの仕打ちは受けたことねぇもんよー。そりゃ相棒にはあの巨人がいるだろうけどよー」
 しかし、キョウスケが謝ってもデルフリンガーの愚痴は止まることが無い。小屋を出た後からずっとこんな調子であった。小屋に忘れられたことで、思いっきり拗ねてしまったらしい。しかも今回の一件は、キョウスケに責任がある。いつもどおりスルーするのも、この場合はどうかと思ってしまう。
(……そういえば、エクセレンも拗ねたりするとこいつのようになっていたな。なんとなく似通っている部分があるとは思っていたが、しかしこんなところまで似る必要は無いだろうに……)
 キョウスケは肩をすくめ、今朝の予想どおりの一日になりそうだと思いながらもデルフリンガーの愚痴に耐え続けた。
 しかしデルフリンガーは拗ねて拗ねて拗ねまくっていたようで、食堂についても愚痴は終わらなかった。キョウスケもそろそろ限界かと思ったとき、ようやくデルフリンガーは機嫌を直したらしく「……ま、これぐれえ言えりゃあ良いか」と言って愚痴が止まった。
 危なかったとキョウスケは思う。もうそろそろ堪忍袋の緒が切れて喋れないように鞘の口の部分を縛り付けるところだった。そんなことをしていたらもっと現状が悪くなっていただろう。
 本来の調子を取り戻したデルフリンガーが聞いてくる。
「で、相棒。娘っ子はどこだあね?」
「あそこだ」
 キョウスケは顎でルイズのいる方を示す。三つあるテーブルの内の二つ目、その丁度真ん中くらいの位置に座っており、少し遅れたのが気に入らないのかぶすっとした顔をしていた。キョウスケは歩みを進め、彼女の横にあるイスに腰を下ろす。……そのせいで他に座っている生徒の一部がむっとした顔にはなるが、それはここで食事するようになってからいつものことなので気にしない。
「ちょっと遅かったじゃない。どうかしたの? ……もしかして」
 ぶすっとした顔のまま聞いてきたが、最後の方はイスから身を乗り出してキョウスケの耳に口を近づけ、小声で聞いてくる。
「『アルトアイゼン』に何かあったの?」
「いや、別に何も無い。ただ少し、訓練の時間を増やしていただけだ。……今日はコルベール教諭も来たから、それもあるかもしれんが」
 彼女の配慮にキョウスケも声を小さくして応じた。
「コルベール先生が? 何で……ってあの先生ならあんたのあれに興味持ってもおかしくなさそうね……」
 ルイズが呆れた顔でいう。
「でも好奇心のせいであれが動かなくなった、なんていったら目も当てらんないわよ。ほんとに大丈夫なんでしょうね?」
「大丈夫だ。まあ触りたいとは思っていただろうが、今日の訓練の際もおれと一緒にアルトに乗っていただけで、実際に機械に触ろうとはしなかった。あの人は好奇心は強いだろうが、それくらいの分別はあるぞ」
「それならいいんだけど「あら、仲良いわねー」んな!?」
 いきなり割って入ってくる声。ルイズがなぜか顔を赤らめて慌ててキョウスケから離れる。その隙を見逃さず、声の主は体の方もキョウスケとルイズの間に(わざわざイスを持参して)割り込んできた。
「な、何言ってんのよツェルプストー! あと何勝手に割って入ってくるわけ!? 離れなさい!」
「良いじゃないの別に。それにここは食堂だしどこに座ろうと私の勝手よ。ね、タバサ?」
 あっけらかんと言いつつ、隣を見るキュルケ。いつの間にかタバサまでもキュルケの隣に(こちらもイス持参で)座って本を読んでいた。
「あ、あんたいつの間に……って違う。とにかく離れなさいよ! キョウスケは私の使い魔なんだから!!」
「だから前にも言ったじゃない。好きになっちゃたって。しかもあんな強い巨人を操れるんだもの。凄くかっこいいわv」
 そしてキョウスケにしなだれかかってくる。
 その様を目の当たりにし、腕を振り回してルイズが喚きたてる。しかもルイズの体がぶるぶると震え始めていた。
 これはまずいとキョウスケは直感し、何か言おうとするがそれよりも早くキュルケが怒りの炎に油を注いでしまう。
「それとも何? 私がキョウスケに近づいたら何かまずいことでもあるのかしら? ……もしかして」
 で、にやりと笑って決定的な一言。
「やきもち?」
「な、な、な……!!」
 5、4、3、2、1、0。……大爆発。
「何いってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
 顔を真っ赤にして杖を引き抜き、ものすごい勢いで腕を振り回し始める。さっきのよりも更に動きが激しい。
 そして当然の結果として立て続けに爆発が起こり、瞬時にして食堂が阿鼻叫喚の地獄絵図に成り果てる。
「あらら……ちょっとやりすぎちゃったかしら」
「確信犯」
 とか言いつつも、安全な食堂のすみっこに避難している辺り油断なら無い。無論その傍で冷静に突っ込みを入れたタバサもだ。
 彼女ら同様に非難してきたキョウスケは、そんな相変わらずの彼女らに呆れつつ、しかし若干不満げである。
「……やるなら場所を考えてくれ。ご主人をからかうのはいいが、ここいらで騒動を起こされると食事もできん」
「あら、その点は問題ないわよ。私が食べさせてあげるからv」
 いつの間に持ち出してきていたのか、キュルケが今朝の朝食に並んでいた鳥のローストの皿を見せる。……ルイズが暴れ始めてからここにくるまであまり時間がなかったと思うのだが……
「……まさか、こうするためにご主人を怒らせたのか?」
 と、そこでそのことに考えがいたる。しかしキュルケは笑みを浮かべたまま空いている手にローストを握り、差し出してきた。
「さあ? どうかしら。とにかく今は食べましょvはい、あーん――「あにやってんのあんたらはぁぁああ!!」……ちっ」
 今度はキュルケが邪魔された。ルイズが暴れることを放り出してこっちに向かって突進してくる。
「何よ興味が無いって言ってたくせにいちゃいちゃしていえやっぱりそうねそうなんだわあんたキュルケのほうが良いって言いたいわけねぇぇぇ!!」
 そしてものすごい早口でまくし立てるその姿はまさしく悪鬼も同然の迫力であった。しかしその迫力にも負けずにキュルケが言い返す。
「何よ、キョウスケはあんたの恋人って訳じゃないんでしょ。それとも、ほんとにできちゃってたわけ?」
「!! ち、違うわ、そ、そんなわけ無いじゃない!」
「だったら邪魔しないで。はい、続き――「だから私の使い魔なんだから手を出さないでって言ってるでしょうが、この年中発情女!!」
「何ですって! 言ってくれるわね『エロ』のルイズ!!」
「誰が『エロ』のルイズよ!!」
 ……もう収拾がつかない。キョウスケは思いっきり深いため息をついた。
「けけけ、相棒もてもて「黙れ」ごめんまじごめん」
 余計なことを言いそうになったボロ剣を即座に黙らせ、ともかく食事を取ろうとキュルケが持ってきたローストに手を伸ばすキョウスケだった。












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