〆S8 種明かし
■PHASE1■
噴水広場から下る道を進んだ先の二岐地点に赤い屋根の建物がある。それがドナテロさんの店だ。
正面玄関に差し掛かると、真っ白な看板が立掛けられているのが見えた。
――酒場営業時間 18:00〜3:00――
正面玄関は今日も閉まっていた。入る時は大体いつも裏口から入る。
僕らは静かに建物の裏へと回った。
■PHASE2■
裏口から中へ入ると、中は静まり返っていた。
綺麗に片付けられた店内。店内の木椅子は皆机の上に逆さまに上げられていた。
「寝てるな多分。食糧庫あさりに行こうぜ」
「また無断で?」
まあ、今日に始まったわけじゃないけど。
黙って食糧庫へ向かおうとしたその時、裏口の扉が開いた。
扉から茶髪が覗き、茶色の瞳が僕らを捉える。手には大きな袋が握られていた。
「何やってんだお前等」
「いや、あの」
苦笑いしてその場を誤魔化す。
ドナテロさんだ。
ドナテロさんは僕らを見ると何も聞かず、調理場へ向かい、酒場のカウンターに温かい豆のスープと乾いたパンを数切れ出してくれた。
「朝から窃盗とはお前等も忙しいな。請負業はどうなってるんだ?」
「いやさ、急にドナテロの顔が見たくなって」
いい加減なセリフを吐くフェザ。
「それより、ドナテロさん珍しいね。こんな朝からどこか出掛けてたの?」
ドナテロは、カウンターの向こうで、食器の整理を始めていた。
いつもながら几帳面だ。
「街に買い物行ってたんだ。食糧の買い置きが切れてな」
そんな他愛ない会話をドナテロさんと交わしていると、今朝見たあの話が飛び出した。
「そういや今朝、すごいモノ見ちゃってさ。噴水広場で」
そうフェザが切り出した。僕等は見たままあのピエロショーの話をドナテロさんにした。ドナテロさんも実はこの職業につく前は大道芸をしていたんだ。ドナテロさんなら今朝のトリックが分かるかもしれない。そう思った。
「あれは本当に死んでたぜ。なあマウス」
「うん、だって血の臭いしたし」
僕等の話を聞いて、ドナテロさんは笑い声を堪えきれない様子で漏らした。
「お前達ほど単純だと騙す側も気分いいだろうな」
「なんだよそれ!」
ドナテロさんはさんざん笑った後、僕等に語り始めた。
「そいつは『首落とし』っていうれっきとした大道芸さ。今じゃやる奴はほとんどいないけどな」
「あれが芸?やっぱりトリックあるの?」
でも、どんなトリックなんだ?
「お前等が見た頭は偽物さ。本物そっくりに精巧に作られたな。実際はその下に本物の頭がある。ぶかぶかの服を着てたのはそのためさ」
「え、でもちゃんと血が吹き出てたよ」
そうだ、あの血はどう説明するんだ。
「そこがこの芸のえぐいとこだな。なるべく本物に見せかけるよう、この芸じゃ動物の血を使うんだ。お前達が見たのはきっと犬か猫の血だろ」
あれが動物の血?
でも確かに、それなら納得がいくような。
ドナテロさんの種明かしに僕は少し落胆を隠せなかった。
「まあ、そうがっかりするなよ。もしかしたら本物の悪夢だったのかもしれないぜ」
そう言って再び「くっくっ」と嘲笑を漏らすドナテロさん。
「馬鹿にしてんのか」とフェザが立ち上がった。
悪夢か、昨日本物の悪夢を見たせいもあるかもしれない。
あのピエロを悪夢だとどこか信じていた自分が急に馬鹿らしくなってきた。
「飯食ったらちゃんと稼ぎに行けよ。食わせるのだってタダじゃないんだぜ」
「わかってるよ」
そうして、僕達はドナテロさんの店を後にした。
なんだか今日はしっくりこない朝だ。
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