〆S7 ピエロショー
大通りから歩く事十数分。僕らは噴水広場へやってきていた。
ここまで来れば目的地までは目と鼻の先だ。
広場の中央にある噴水には女神の銅像がある。緑青に塗れながら肩に携えた水瓶から水を流すその姿はとても綺麗とは言えないけど、どこか心を落ち着かせるような、そんな雰囲気を持っていた。
普段は静かなこの広場だけど、今日は少し様子が変だった。
「なんだあの人だかり」
フェザの視線は噴水前の人だかりに向けられていた。
「すごい人だね」
「見てみようぜ」
人ごみを押し分けて進むフェザの後ろについてゆくと、人ごみの中心にいるその正体が明らかになった。だぶだぶの衣装を纏い、顔を真っ白に塗り、鼻を赤く染め、両眼を十字に黒で縁取ったその姿。
なんだピエロか、ここ下層じゃそう珍しいものじゃない。自らの芸でお金を集めようとする大道芸人はここじゃ少なくない。でも、それならなんでこんなに人が集まってるんだ?
片手に細身の剣を持ち、頭上に翳して見せるピエロ。頭上に翳されていた剣がピエロの首元にあてられた。何する気だ?
次の瞬間、鮮烈な光景が目に飛び込んできた。
巻き起こる悲鳴と、同時に飛び散った鮮血が噴水の水を紅く染める。
「首を……斬り落とした!?」
無造作に投げ出されたピエロの首。腕はだらりと下がり、ぶらぶらと揺れている。
何かのトリックなのか。でもそれならこの血の臭いは!?
誰もが言葉を失っていたその時、残された肢体がゆっくりと動き始めた。再び観客から上がる悲鳴。肢体はゆっくりと自分の生首を掴み上げると、それを観客に向けるようにつきだして見せた。黒い縁取りの中に白目を剥き出した生首。生々しい死人の顔。口からはまだ鮮血が垂れていた。
本当に死んでるのか。そんなわけはない。なら実際に見ているこの光景はなんだ。
暫くするとピエロは持っていた首を元の位置へとあてがった。すると、まるで何事もなかったかのように、ピエロは目を開きお辞儀して見せた。
湧き起こる拍手の中、ピエロはお辞儀をしたまま、そのまま動かなくなった。
ショーの幕切れを悟った観客達は再び街の雑踏へと消えていく。
不意に肩を叩かれて振り向くと、そこにはフェザが立っていた。
「オレ達も行こうぜ」
「ああ、うん」
静止したピエロに送り出されて、再び僕らは歩き始めた。
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