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ANTIQUE
作:Wiz Craft



〆S37 邂逅


 辺りはすっかり暗闇に染まっていたが、僕らは歩く事を止めなかった。少しでもこの忌まわしい広場から遠くに離れたい。そう考えていたからだ。

「疲れた?少し休もうか」

 僕の言葉にミニーは首を横に振った。少しでもここから離れたいという気持ちは僕ら以上に強かったんだろう。

「とりあえず、せめて赤斑レッドスポットは抜けよう。休むのはそれからだ」

 それからどのくらい歩いたのか。目に映る全ての光景がどす黒い霧に包まれて見えた。何故、僕らの行く先々には血生臭い惨状が待ち構えているのか。呪われてる、ふとそんな言葉を呟きそうになった自分に気づき慌てて自制する。自分の不幸を呪ったところで、現実は変わらない。

「おじちゃんの家があるの……」

 ミニーは僕の手を引きふとそう呟いた。
 そこは郊外から町へと差し掛かる赤斑レッドスポットの終端地だった。

「知り合いの家があるの?」

 僕の言葉にミニーは小さく首を縦に振った。
 辺りは深い闇に包まれている。確かに頃合としては、今日の寝床をそろそろ探すべきだろう。ミニーの体力も限界に近づいている。ならば、ミニーの言う、その知り合いの家に泊めてもらうのも一つの手かもしれない。
 そんな自分の考えを確かめるために、僕はフェザに言葉を掛ける。

「どうする、フェザ?」
「オレに聞くのか?」

 フェザの返しに僕は思わず閉口した。

「まだ赤斑は抜けてない。まだ歩くべきだ。それにその知り合いとやらが安全だという保障も無い」

 フェザのいう事は尤もだった。だけども、手を引くミニーのその握る手はだんだんと弱まってきていた。
 そんな彼女を見つめる僕の様子にフェザは深い溜息をついた。

「でも、選択の余地が無いんじゃ仕方ないだろ。お前にそいつおぶって歩く力が残ってるようにも見えないしな。蛇が出ない事を祈るか」
「フェザ……」

 フェザの気配りに、純粋に感謝した。
 限界なのはミニーだけじゃなくて、僕も一緒だったからだ。

 ミニーの案内に、大通りから路地へと入り、農家と廃墟が織り交ざった町の外れを歩き続ける。人通りの無い、廃墟の一角を進み、そして視界に今夜の仮宿を映した。

「ここ?」

 大きなひび割れした廃墟を指差してミニーはその廃墟を見上げていた。
 一瞬扉の前で躊躇ったが、他に選択肢は無い。扉の前に立ち、そっと扉をノックする。返答を待つ間、そこにあるのは沈黙が生む静寂だった。暫くすると、扉の向こう側に足音が、そして静かな気配と共に、扉がゆっくりと開いた。

 そして、目の前に現れた人物を見て、僕の思考は完全に崩壊した。
 全ては偶然なのか、必然だったのか。ここへ来た目的を考えればそれは必然だったとも言える。

「何でだよ……」

 その問いかけに対する答えは無かった。自らを見つめるその視線には、何の害意も感じられない。

「何であんたがここにいるんだ!」

 そう声を張り上げる事しか出来なかった。それが精一杯の所作であり、今その場で出来る全てだった。
 目の前で、当惑の眼差しを浮かべるその人物。

 紛れも無い、彼はドナテロだった。












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