〆S33 レッドスポット
翌朝早く、僕らは郊外を目指して倉庫を離れた。
青褪めた空の下、舗装もされていない剥き出しの砂地を踏みしめながら、ただ目的の場所を目指す。
太陽が真上を横切り傾き始めた頃まで、僕らはただひたすら歩き続けた。
「見えてきたな」
フェザの言葉に僕はふと顔を上げた。
郊外地区へ歩くにつれ次第に視界の様相は変化してきた。
灰褐色の石造の建物の中に、赤褐色のレンガ造りの農家が混じり始め、遠景にはいつの間にか、広大な農地が覗いていた。
「レッドスポット……」
気がつくと僕はそう呟いていた。
通称、赤斑。郊外には農家の人々も多数住んでいるため、石造の灰色の建物に混じり点在する彼等の赤い屋根は、赤い斑模様となって街に浮いて見える。
「着ちまったな、本当に」
フェザの言葉に僕は無言で頷いた。
正直、どこをどう捜索していいのか、まるでわからなかった。ここまで来てしまったのは、ただロザリータの話を聞いて、居ても立ってもいられなくなった。それだけの理由だった。始めからここで何かが見つかるとは思ってもいない。ただそれでも、僕らはここへ来ざるを得なかったんだ。
「とうとう、ここまで来たな。情報集めるならまずはギルドか」
ギルド?そうか、こっちにもギルドがあるのか。
「え?あ、そうか。そうだね。ギルドへ行こう」
「お前、何ぼーっとしてんだよ。大丈夫か?」
僕の頼りない返答にすかさずフェザが怪訝な表情で突っ込んできた。
「大丈夫だよ、ごめん。ただ考え事してただけなんだ」
「ったく、大丈夫かよ本当に」
フェザはそう言って煙草を取り出し口に含んだ。
「俺の記憶が正しけりゃ、この先の開けた広場を曲がって、ちょっと路地入ったとこに確かギルドがある」
「フェザ、この辺り知ってるの?」
「昔な。住んでた事があるんだ。お前と出会うよりももっと昔だけどな」
そう言ってフェザは遠い目をして煙を吐き出した。
フェザの言う通り大通りを少し歩くと、開けた広場に差し掛かった。中央には何も植えられていない円形の花壇と、その中央に錆びれた銅像が置かれてあった。どことなく噴水広場を思い出させる造りだが、出店もなく、噴水広場と比べると随分閑散としていた。
「へぇ、こんなとこに広場なんてあったんだ」
「ゴミ捨て広場なんて昔は呼んでたけどな。それにしても人いねぇな」
確かに、フェザの言うとおり、広場は到るところにゴミが散乱していた。そのほとんどが金属器具の何やら使い道のよくわからない小道具が、広場の縁に沿って並べられていた。中には巨大な器具も存在した。聳えたつ二本の棒の間に、近づいてよく見てみるとそれは鈍い光を放つ大きな刃が取り付けられていた。
「フェザ、これって昔からあったの?」
「いや、記憶に無いな。随分古そうだけど、なんだこれ」
その奇怪な器具の隙間から、広場を囲む一角の酒場に掲げられている看板が見えた。
―ようこそエルセヴ広場へ―
「エル……セヴ……?」
「そんな名前だったか?どうでもいい。さっさと行こうぜマウス」
「あ、うん……」
歩き出すフェザの足取りを追い、僕はエルセヴ広場を後にした。
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