〆S30 亡者の影
■PHASE1■
「うわぁぁぁ!」
慌てて僕はその場で後ろに倒れ込んだ。
「どうしたマウス!?」
駆け寄ってくるフェザ。すかさずフェザが扉の向こうを確認し大声で叫んだ。
「なんのつもりだ、お前!」
フェザが扉を引き開くと、そこにはあの女の姿があった。
手には赤傘、女は真っ赤に充血させた瞳でじっとこちらを見つめていた。
「あのぅ……わ……たくし……あの……マウスさんと……フェザリオさん……?」
聞き取れないほど細い声で女はぼそぼそと呟いた。
「そ……そうですけど?」
僕の答えに女の目が大きく見開かれた。
「……わたくし……おふたりにお会い……したくて」
女の言葉にフェザがきつく言葉を返した。
「勝手に人の家までつけてきてふざけんなよ、消えろ」
フェザが扉を閉めようとした時、女は一言呟いた。
「……ドナテロさんて……ご存知?」
女の発した言葉に閉められようとしていた扉の動きが止まった。
「今なんて言った?」
フェザの問いに女は再びその質問を言葉にする。
「ドナテロさんて……ご存知?」
思わず僕らは顔を見合わせた。なんでこの女がドナテロの事知ってるんだ?
「知ってたら何だ?」
突き放すようなフェザの口調。
「お話……伺いたくて……」
女の言葉にフェザは僕に無言で視線を振ってきた。
「入って……もらおうよ」
僕は振り絞るようにそう言葉を漏らしていた。
■PHASE2■
彼女の名前はロザリータ。何でもドナテロの店の常連客だったらしい。
かなり古くからの付き合いで、どうも話を聞いてみると、彼女が一方的にドナテロの事を慕っているみたいだった。突然のドナテロの死を知り、四方八方一人で調べまわった結果、僕らのところへ辿り着いたらしい。
「わたくし……彼が死んだなんて……信じられませんの……一体何があったのか」
頑なにドナテロの死を拒絶する彼女。
だけど、僕らは実際にドナテロが命を絶つところをこの目にしている。
「残念だけど、ドナテロは本当に死んだんだ」
僕の言葉にロザリータは興奮した様子で立ち上がった。
「何故死んだんですの!彼は生きてますもの!」
どうにも厄介な客を招きいれたようだった。
「ドナテロが首斬って死ぬとこオレらは見てんだよ」
フェザの言葉にロザリータは言葉にならない甲高い叫び声を上げながらその場に座り込んだ。
「失礼しましたわ……でもやっぱり信じませんわ」
急に冷静さを装っているかのように、落ち着いた口調で話し始めるロザリータ。体をわなわなと震わせながら話すその様子はもはや狂人じみていた。
「最初から信じるつもりが無いんなら消えろよ。何しにここへ来たんだ?」
フェザの言葉にロザリータの震えがぴたりと止まる。
「事実を知るため」
真っ赤に充血した瞳をフェザに真っ直ぐにつきつけたその視線に思わずフェザが顔を伏せた。
「わたくし帰りますわ。お邪魔しましたわね」
そう言ってロザリータは立ち上がった。
そのままつかつかと扉へ向って歩いていく。
そして去り際に、ロザリータは一言、こう呟いた。
「わたくし……事件後彼に会ってますの。偶然街の外れで。遠目ではありましたけど、あれは間違いなく彼でしたわ。それではごめんあそばせ」
そして、彼女は扉の影へと姿を消した。
「ちょっと待て、お前ちょっと待て!」
今彼女は何て言った?
慌てて飛び出したフェザの後を追い、僕も扉の外へと飛び出す。
扉の外には立ち尽くしているフェザ以外、誰の姿も見えなかった。
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