〆S23 黒の教徒
■PHASE1■
検証が終わり、少女の遺体に白い布がかぶせられると、検証人はふと僕らの方へ振り返った。
「報告ありがとう。あとはこちらで対処しますから、二人はもう現場から離れて構いませんよ」
検証人の言葉に促され僕等は少女が居た現場から離れ、街へと戻る事にした。
街へ戻ると、いつの間にか太陽は頭上高く輝いていた。昼の街は何の変わり映えも見せない、いつもの光景のように思えた。
少女の遺体をギルドに報告し、現場まで案内すれば僕らがそこに居る意味は無い。僅かばかりの謝礼金を受け取ると、そのお金でいつものように噴水広場の縁で僕等は昼食をとった。
「なんか死因でもめてたね」
「俺が言った通りだろ」
フェザはそう言って煙草の煙を吐いた。
少女の遺体が毛布で包まれ、運ばれていく中、検証員達は口々に死因を探り合っていた。見たところ外傷は無し。だとするなら、内部的な発作が原因なのか。それともそれ以外の何か。
だとするなら、その何かに僕達は心当たりがある。
「ナイトメアか……まさかな」
フェザはそう呟いて煙草を捨て、足で踏み消した。
その行為が気にくわなかったのだろうか。広場の外円付近に佇んでいる全身を黒のローブで覆った宗教者らしき人物がじっとこっちを見つめていた。その顔はローブに隠れて見えない。フェザもその視線に気づいたのか、煙草を口にくわえながら呟き捨てるように言葉を漏らした。
「真昼間から黒のローブか。いかれてるぜ」
フェザが吐いた言葉の先から、その人物はゆっくりとこちらへ向ってやってきた。そして、宗教者は僕らの前でやってくると、無言のまま立ち止まる。
何が目的なのか、咄嗟に僕らはいつでも動けるよう臨戦態勢に入った。
「御寄付を」
男の低い声と共に差し出された両の手。
御寄付を、つまりお金をくれって事だ。
「なんだよ、宗教の募金かよ。あっちいけよ」と突き放すフェザに僕も言葉を重ねる。
「悪いけど、僕ら信仰心がないので」
僕らの言葉に黒衣の男は、一礼もせずに去っていった。
一瞬の緊張感は解れ、フェザが言葉を漏らす。
「なんだったんだあいつ」
そうして、ふと辺りを見渡して僕等は気づいた。
いつの間にか広場に散らばる無数の黒い影。
「なんか……一杯いるよ。あの人だけじゃ無かったんだ」
それは異様な光景だった。
「なんなんだこいつら」
再び近寄ってくる黒い影。
「……御寄付を」
「うぜぇよ。あっち行けって言ってんだろ」
そう言ってフェザが噴水縁から立ち上がった。
「マウス、行くぞ。ここいるとキリが無さそうだ」
「うん」
突如、現れた黒のローブを纏った宗教者達。
纏わりつくその黒い影から逃れるように、僕らは拠家を目指して広場を後にした。
■PHASE2■
拠家に辿り着くなりフェザはシャワールームへと消えた。
今朝は人の家のソファーで寝ていたせいか、まだ疲れがとれていなかった。
アリスとの約束の時間まで僕らは少し休む事にした。
|