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ANTIQUE
作:Wiz Craft



〆S14 血の粛清


■PHASE1■

 世界がまたたいた。
 それはフェザの喉元を凶刃が切り裂こうとしたその時だった。
 
 溢れ出す光。
 それは僕の右手から零れだしていた。
 薄暗い閉ざされた空間を照らし上げる程の強い輝き。

 その輝きを帯びた手を持って走り込み。
 ピエロ目掛けてただ思うがままに振り下ろす。
 それだけだった。

「ぐっぁぁぁ!」

 視界の中で、悲鳴を上げながら炎上するピエロ。
 冷たい空気の中で真っ白な蒸気を上げながら、そいつは転げ回っていた。

「マウス、お前……?」
 
 ピエロの手から解放されたフェザは驚きを隠せない様子だった。
 
 燃え盛る炎。

 それは僕の右手を包み込んでいた。

 燃え盛る炎に包まれているというのに、不思議と熱さを感じなかった。
 真白な蒸気を撒き散らしながら、炎は静かに手の中で収縮し、そして消えていく。

「もう……誰も殺させない」 

 僕は地面につくばっているドナテロにそういい捨てた。
 身に付けていた衣装は灰色に焦げ、その身体はまだ僅かに蒸気を発しながら微動だにしなくなっていた。

「まさかアンティーク……だったとはな」

 地に伏せていたドナテロが呟いた。
 身体を包んでいた火は消えていたが、その全身には酷い火傷を負っているようだった。

「まだ生きてたのか」

 フェザが僕の隣に寄ってきた。
 ゆらりと立ち上がるドナテロ。けれどもはやその身体では何も出来ないように見えた。

「お前はやはり光だ。マウス」

 そのドナテロの言葉に僕は思わず叫んだ。

「ふざけるな!」

 僕が光だって!あの言葉がどんなに嬉しかったか!
 あの言葉にどれだけ救われたか
 僕にとってあの言葉こそ……光だった

「気づいていたさ。自分の狂気にはな」

 ドナテロは静かに語り始めた。

「だが、止められなかった」

 そう語るドナテロの表情はさっきまでの殺人鬼の顔とはうって変わっていた。

「僕達をずっと騙してたのか」

 僕の言葉にドナテロは動揺一つ見せず言った。

「人間には表と裏がある。お前達が見ていた俺もまた真実さ」

 表と裏だって。いつだって真実は一つしかない。
 あるのは残酷な真実だけじゃないか。

「言い逃れようってのか」

 フェザの言葉にドナテロはふっと微笑した。

「言い逃れる気はない。ただ最後にお前達に一つだけ伝えておきたくてな」
「最後に?」

 ドナテロは微笑を崩さぬまま続けた。

「目に見えるものだけが真実とは限らない」
「この場にきて何言ってるんだ」

 フェザが詰め寄ろうとしたその時、ドナテロは落ちていた包丁を拾い翳した。

「お前!」

 ドナテロは逃げる素振りを見せなかった。

「悪夢はな、すぐ傍に居るんだ」
「だから、何言ってるんだお前!」

 フェザの問いかけにドナテロは答えなかった。

「お前達もこの世界に存在する限りいずれ気づくさ。最後にもう一度言おう」

 そう言ってドナテロは包丁を首元にあてた。

「お前達は光だ」

 それがドナテロの最後の言葉になった。
 紅い血飛沫が上がる。

 僕達の目に映った最後のあの表情。
 あの優しい表情は間違いなく、僕らが知るドナテロそのものだった。


■PHASE2■

 深夜、ギルドから派遣された調査団がドナテロの酒場の調査を始めた。
 僕達は重要証拠人として、明け方までギルドで拘束される事になった。

 何を聞かれたのかは覚えていない。
 全ては夢現ゆめうつつ

 僕らは自分自身をこの世界に保つ事だけで精一杯だった。

 明け方、質問という名の尋問から釈放された時、僕達はこの事件解決の褒賞金として100ペイン硬貨が百枚入った小さなガラスケースを持たされた。
 これだけあれば数ヶ月は暮らせる大金だった。
 でも僕達にとって、その代償はあまりにも大き過ぎて。

――お前達は光だ――

 ドナテロが残したあの優しい笑みをいつまでも思い返していた。












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