〆S12 光の涙
■PHASE1■
夕闇が空を染め上げた頃、僕達はドナテロさんの店を訪れていた。表扉から入るとカランコロンと乾いた木の音が響いた。店の中に居る客は僅か。営業時間だというのに、お世辞にも繁盛してるとは言えない。
「こんな時間に来るなんて珍しいな」
カウンターでグラスを拭いていたドナテロさんは僕らにそう声を掛けてきた。
「……まあね」
カウンターに座った僕らにドナテロさんはすっと透き通った青のグラスを差し出してきた。礼も言わずにグラスを手に取り口に含むと、口の中に甘い果物の香りと一緒にアルコールの匂いが広がった。
予想していなかったアルコールの匂いに思わずドナテロさんを見つめる。
「たまにはいいだろ。子供だって酔いたい時はあるさ」
ドナテロさんの気配りは素直に嬉しかった。
僕は客のいないカウンターで今抱えてる気持ちの全てを吐き出した。
ネジを拾っていた少年の事、あの日見た影の事、そして少年が殺された事。
「そうか……その子は亡くなったのか」
「僕は何も出来なかった」
そう、また何も出来なかった。
「人間は残酷だな」
ドナテロさんはグラスを拭きながらそう呟いた。
その言葉は僕の心を刺すようだった。
人は残酷。
あの影がもしあの少年だったならば。
僕は彼を見殺しにした。
「でも、マウス。お前は誇っていい」
え?
「お前は光になれる」
光?
「お前のその優しさが人を救うんだ」
ドナテロさんの言葉は何故か僕の心に強く響いた。
「だから、そう自分を責めるのはよせ」
僕は心の中で、何度もその言葉を繰り返していた。
自然と瞼が熱くなる。僕は込み上げてくる感情を必死に堪えた。
「ありがとう、ドナテロさん」
僕の言葉にドナテロさんはふっと微笑んだ。
温かい微笑み、優しい笑みだった。
その笑みに抑えていた感情が思わず零れ出した。
頬を伝う涙。
二人に見守られる中、僕はただただ涙を流した。
いつの間にか店の客は僕達を残して誰も居なくなっていた。
■PHASE2■
帰り際、ドナテロさんは僕達を呼び止めて言った。
「手ぶらで帰すのもなんだからプレゼントでもやるか」
「マジで。ならオレ金がいい」
そう言ったフェザの頭をドナテロさんは軽く小突いた。
「金が欲しいなら皿でも洗え。代わりに食い物やるから。乾パンでも果物でも好きなだけ持ってけよ」
「そんなこと言っていいの?全部持ってくよ」
僕の言葉にドナテロさんはふっと笑って「好きにしろ」とそう言った。
ドナテロさんとはまだ知り合って一年も経ってないけど、ドナテロさんには本当に感謝してる。僕達が辛い時はこうして助けてくれて。口には恥ずかしくて出せないけど、いつも思うんだ。兄さんが居たらきっとこんな感じだろうなって。
微かな幸せを感じていた僕はこの時完全に忘れていた。
――悲劇は突然やってくる――
その事を…… |