〆S1 プロローグ
もしこの世に神が居るなら僕は問いたい。何故神は人を生み、そして殺すのか。人の生が神から授かったものだとするならば、人の死もまた神が定めた運命なのか。だとするならば、彼女の……コネットの死もまた神が定めた運命だと言うのか。もし、そうだとすれば、僕はあなたを。神というあなたの存在を許さない。
――マウスまたディファと喧嘩したの、大丈夫?――
誰よりも優しく
――マウスって子供ね、ほんとにしょうがないんだから――
笑顔が眩しかった彼女を
――好きだよ、マウス――
あなたは殺した
教台の上から僕達を見下ろす視線。冷たい十字架に磔られ、コネットは僕達を見下ろしていた。その虚ろな瞳は何を訴えかけていたのか、僕には何も読み取る事は出来なかった。
「皆私から一つ話がある」
聖堂の静けさを打ち消すように響くしわがれた声。誰もがまともな思考など働かなかったあの時、あの悪魔が牙を剥いた。
「私がコネットを殺した」
神父が、ロゼが何を言い出したのかその時理解出来るものは誰も居なかった。あの優しかった神父の正体を見抜けたものなど誰一人として居なかった。
「まず叫べぬよう口を塞いだ」
何の話をしているのか
「次に逃げられぬよう華奢なその足首を砕いた」
理解できるはずもなかった
「恐怖に顔を歪め、私に哀願するように涙を零していた。目は真っ赤に充血し、見る見るうちに顔が腫れ上がって行った。私はその首をじわじわと絞めながら」
「やめろ」
「私は死んでもいい……お願いだから皆の命は助けてあげて下さい。そう掠れた声を必死に漏らした娘の首を」
「やめろ!!!」
「砕いた」
その瞬間、静かな聖堂の中に悲痛な叫び声が上がった。
「殺してやる……!!!殺してやる!!!よくもコネットを」
ロゼへと一直線に走り込む仲間達の姿。
幾つかの影が重なったその時。
幾つかの命が消えた。
そこからは思い出したくない。ただ一つ言える事は僕は地獄を見た。あれは人間じゃない。生まれて初めて味わった恐怖の前に、僕は我を忘れて生まれ育った孤児院を飛び出した。
それからの僕の生活は地獄だった。首元にナイフをあてられているような感覚。ふと振り返ればそこにロゼが立っているような気がした。同時にあの場から逃げ去った事に対して、仲間からこう言われているような気がしてならないんだ。
――裏切り者――
僕が神を憎むように、僕もまた許されざる罪を犯した人間なのかもしれない。多くの仲間達が死んでしまった今、僕は今誰に許しを乞えばいいのか。神よ、あなたはどこまで残酷なんだ。
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