とうかえでの坂道
小さな坂道が有りました。
いろいろな人が通ります。
おじさんが通ります。
おばさんも通ります。
子どもたちも通ります。
あらあら、
かわいいうば車。
そう、赤ちゃんも通ります。
「にゃ~」
にゃ~も通ります。
坂道には、
たくさんの〝とうかえで〟がならんでいました。
大きな〝とうかえで〟のとなりに
子どもの〝とうかえで〟が
ならんでいました。
大きな〝とうかえで〟と
子どもの〝とうかえで〟の前には
楽器やさんがありました。
大きなウインドウの中には
トランペット
たいこ
バイオリン
ハーモニカ
フルート
そうそう、
大きなピアノがありました。
ときどきお店で女の子が
たのしそうにピアノをひいていました。
あの曲はなんでしょう。
そうですねショパンの
「子犬のワルツ」でした。
するとどこからか
かわいい子犬たちが
かけてきました。
「わんわん、きゃんきゃん。」
くるくるまわりながら
たのしそうです。
その日は
おじさんがバイオリンを
ひいていました。
すると、まだ秋なのに
しんしんと 雪がふってきました。
おじさんがひいていた曲は
ヨハン・ゼバスティアン・バッハの
「Gせんじょうのアリア」
という曲でした。
子どもの〝とうかえで〟の葉っぱは
まっ赤に いろづいていました。
もうきせつは冬でした。
〝とうかえで〟の子どもは
今では葉っぱが落ちて
とてもさむそうです。
お店のまどには
クリスマスツリーが
かざられて
たくさんのハンドベルが ならびました。
きょうは子どもたちが
クリスマスの音楽をかなでます。
なんの曲だったでしょうか。
子どもたちが えんそうしたのは
「きよし この夜」でした。
長くてさむい冬です。
でも〝とうかえで〟の子どもは元気です。
きっと 音楽がだいすきなんですね。
もうすぐみんなの まっている
あたたかい春が やってきます。
ある日、
お店のまえに
あたらしい楽器がやってきました。
なんでしょう。
それはシンセサイザーでした。
お兄さんがひきはじめました。
ビバルディの
「四季:春」でした。
やってきたぞ
春だ 春だ。
春が やってきた。
小鳥たちも〝とうかえで〟の上で
うたっています。
「ピピピピ、チチチチ。」
おや〝とうかえで〟の子どもたちも
よろこんでいます。
枝にはたくさんの「芽」がでてきました。
小さな坂道には
いろんな人が やってきます。
おじいちゃんも
おばあちゃんも
ゆうびんやさんも
おまわりさんも。
ボクも
ワタシも
やがて〝とうかえで〟たちは
たくさんの葉っぱに
つつまれます。
そうです みんなのだいすきな夏が
また やってくるんです。
しろいにゅうどうぐもが、
ちいさな坂道の上に
もくもくと あらわれます。