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苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢と魔女の呪い

作者: valota666

ついかっとなって綴ってしまった。特に反省はしていない。

 とある国のとあるお城で殿様がお嬢様の誕生祝をしていました。


 庭に燃えている炎にはよく肥えさせられた牛が串に刺さって炙られており、訪れた者全てに分け隔てなく振舞われるのであります。その他にも用意できる限りご馳走が用意され道端の乞食であっても存分に振舞われるのでありました。

 ご馳走を振舞われた者は皆、お嬢様の事を祝い寿ぐのであります。


 お殿様は民の幸いなる様を見て喜び、口々に紡がれる祝いの言葉に日頃は緩まない口元が緩んでいました。お嬢様は先々代の王様の娘である慈悲深きお姫様を母に持ち殿様も武才にこそ恵まれませんでしたが民を慈しむ事は神々ですらご存知であります。

 この二人は政略で結ばれる事となったのでありますがお姫様は殿様を尊敬し、殿様はお姫様の在り方を善い物と愛しむのであります。知り合って程なくして政略とは何であろうかという人々の突込みが草生えるまでになるのは両人にとって幸いなことでありました。

 善き二人が結ばれて命を紡ぎました。それはそれでとても良いことです。愛し愛されて子供を作ることを云々する教えというのはくたばってよいと思います。神に童貞を捧げるとかいうのは変態じみているので近寄らないでください。神に処女というのも同様です、処女といっても賞味期限が………げふんげふん。


 善き二人から生まれた命にその地全ての者に喜びを言祝がれていくのでした。そしてお嬢様を寿ぎ祝福を与えんと多くの賢女魔女が招かれるのでした。

 賢女魔女について知識の薄い人が多いでしょうから簡単に説明いたしますと賢女も魔女も知恵と力を持つ女性であります。力というものは方向性によって悪にも善にもなるのです。彼女達は善き事悪しき事其々に事を為していますが軽んじてはならない者であります。


 賢女魔女達は招きに与り歓待を受けお嬢様の幸いなる生まれに感じ入って其々に贈り物をするのであります。


 賢女が美貌を与えるならば、魔女は知性を与えます。

 魔女が魔力を与えるならば、賢女は自制を与えます。

 賢女が財運を与えるならば、魔女が知足を与えます。

 魔女が武力を与えるならば、賢女が品性を与えます。

 賢女が人望を与えるならば、魔女が威圧を与えます。 

 賢女が………

 魔女が………


 お嬢様には数多の贈り物が与えられて将来は安泰と思われましたが、それを捻じ曲げる者がありました。

 それは祝いに招かれなかった魔女でした。彼女は招かれなかった事を恨んで、お嬢様に呪いの言葉をはきました。


「生まれいでたる命よ、汝の祝いに招かれなかったので我は呪いの言葉を紡ごう!『娘よ、汝は善を成すたびに育つはずの胸がしぼむように!悪しきを為すならば娘のふくらみは程よきを得よう。』」


 魔女は呪いの言葉を紡いだ途端、姿を消しました。

 なんという無慈悲な呪いでありましょう、善であろうとするたびに自身の魅力が削られるのであるのですから。但しヒンニュウ教徒除く。

 殿様は嘆きました。娘が貧しいままであるのかと。お姫様改め奥方様は嘆きました。娘の胸が平らである事が善であるなんてなんて恐ろしい運命なのかと。


 祝いの席にいた者達は幼き娘に降り注ぐ恐ろしき運命に涙しました。

 ある娘は善き娘であるためには大平原の小さな………平らな胸であることに。

 ある男は嘆きました、このお姫様もとい奥方様の娘であるならばとても将来有望なのにぺったん娘であるなんて……

 ある神官は神に祈りを捧げました。胸欲しさに娘が道を踏み外さないようにと。


 そんな人々の嘆きの中で贈り物をしていなかった。一人の賢女は言いました。

「嘆くことはありません。私は魔女の呪いの言葉に打ち勝つ贈り物をいたしましょう。」

 人々は喜びました、お嬢様の二親はとても喜びました。彼女は貧乳の呪いが解かれるものと喜びました。





 月日が経ちました。お嬢様はとてもとても美しく育ちました。賢女魔女達の贈り物は大輪に花開きとても善き娘と育ちました。

 多くの贈り物が花開いたお嬢様はとても美しく賢しき姫として王子様を支えるお妃様として望まれるでした。でもそれは先の話。王様も壮健で国は良く納まっているので王子様は次の王様になるために良く学びよく鍛えているのでありました。


 それでもお嬢様は全て育っているかに見えているのですがひとつだけ育っていない部分がありました。その部分は魔女の呪いのかけられたお胸様なのであります。

 どうして育たないのであろうかと無い胸を痛めているのでした。そんな時に庭の小鳥が歌うのでした。その小鳥はいつぞやの魔女の変化した姿でした。


「小さな胸は善なる証、優しき姫様まったいら♪」


 お嬢様ははっと気がつきました。私の胸が小さいのは(正確にはまっ平らです)良い子だからだ!と小鳥の歌の裏づけをするために色々話を聞きました。二親や親しき者からは話を聞けませんでしたがうわさ好きな下働きの者があの時の事を面白おかしく話すのでした。

 何と言う事でありましょう。自分が善い者である限り呪われた大平原のままであるのだと。

 お嬢様はならば悪である事を決意するのでありました。




 悪であるのはどうしたらいいのか考えました。他人に相談するのはとても危険な事でした、大平原の無い胸でいいじゃないかと教え諭そうとする糞ったれな神官とか、胸がかぶれるほど蒸れるくせにすぐにずれる乳当てを用意するいき遅れな侍女とか、胸が大きいのがほしい時はちゃんと側室には巨乳な子を用意するからと言い切る王子様とか………

 今まで清く正しく美しくであった事がとてもとても悔しくてなりません。

 道に倒れた子供があれば愛しみ育てる場所を用意して朽ち果てることも道を踏み外すことが無いようにと受け皿まで用意して、飢えたる家族があれば身につけ足る宝石を売り実りの数々をあえて無利子で貸し付けて立ちなおる道筋をつけたりしていたのが全て自分の胸に降りかかるなんて………悔しくて悔しくて反対のことをしてやろうと決意するのでありました。


 まずは道に倒れた子供を受け皿無い状態でたたき出しました。子供は自分に至らない事があったからだと反省をして神殿の門をたたいて教えを請いました。

「私は善きお嬢様の期待にこたえることができませんでした。悪しき僕を鍛えなおしてください。」

 と教えを請う子供に神官さんは

「違えるとも道を正そうとする者に教えを閉ざすのは神々の教えに反する。」

 と教え導くのでありました。子供は程なく神々の教えを諳んじ、自らの甘えと不明を恥じ入りながらそれを隠さずに人々を教え導く神官さんの助手となりました。人々はそのことを知って

「嗚呼、あのお嬢様はこの子供が幸いの種育てる素質あると知ってあえて突き放したのだ。子供の幸いだけならば囲い込めばよいのに、子供を通じて世界に幸いの花を咲かせるのは厳しくも愛あればこそなのだな。」

 と褒め称えるのでありました。


 次に貸し付けた物を貸し剥がしてみました。無理やり貸し剥がされた飢えたる者は

「お嬢様は私たちに自立を促しているのだ。」

 と人々に貸し剥がされた恨みを言うことなく、立ち直った自分等を誇るのでありました。



 善意を与えたものに悪意を返してもなんとも無かった事に苛立ちを隠せないお嬢様は次に貸し剥がした金で無理やり畑を買い取って花畑を作ることにしました。

 悪しきお嬢様というのはわがままで下々の生活を困らせるものだと物の本に書いてあったのを鵜呑みにしていたのです。とりあえず豆の畑に植わっていた豆を全部引っこ抜かせて花の種を植えさせました。

 畑のそばには引っこ抜かれた豆が山となっていました。土の色を隠さない畑のそばに緑色の豆の山、民の実りを邪魔してこれぞ悪しきお嬢様らしいことと満悦しています。

 実りを邪魔された農民達は心づけを貰っているのでそれほど損はしていません。日頃から善きを尊び下々にまで心砕く美しきお嬢様を尊敬しているので偶のわがまま位と喜んで作業しているのでありました。

 抜かれた豆は牛馬のえさにもなるだろうし枝葉は枯らして漉き込めば良き肥やしとなります。

 豆の畑の跡に植えられた花を見飽きたら元の農民に払い下げられたのですがその畑は豆も麦も野菜も見事に実りある畑となったのです。連作障害には休耕と土中細菌対策の植物はよいものです、主にお取りアブラナとキンレンカ。


 そんな時にお嬢様の元に乞食の群れが食べ物と慈悲を乞いに来るのです。

 みすぼらしい姿の乞食はお嬢様の嫌悪感を呼び起こすのに十分すぎるものでした。乞食の話を聞くに隣国の民で圧政に耐えかねて村ごと国を超えて逃げてきたのでした。そんな中途半端な支配の仕方では悪ではなく愚であると隣国の支配者層の評価をひそかに下げるのでありました。

 この場合、悪役令嬢に相応しい事をするにはどうすればと考えました。慈悲を請うばかりで自ら立ち上がることのない糞虫には糞虫の餌を与えてやればよいのだと思いつきました。とはいえ糞虫の餌である糞を与えるのは流石に嫌だったので家畜の餌でも用意すればよいと考え直しました。

「貴方達は不躾にも当家の門を叩いて汚しただけではなく無様にも食を請うなんてなんて浅ましいのかしら。そんな働きもしない貴方達は家畜以下ですわ。でも私は多少の慈悲を持ち合わしておりますので家畜の餌を与える事と致しますわ。そこにある豆の山を好きなだけ持っていくとよいですわ。」

 お嬢様が指し示したところには引き抜かれた生育途中の豆の山がありました。

「ああ、そうそう、当家の家畜は豆もよく煮込んでから与えてましたわね。家畜以下の貴方方でも自分で煮込むことくらいできるでしょう。」

 とさびの浮いた大鍋を持ってこさせました。側仕えの者が

「お嬢様、家畜には塩を与えないと体調崩しますよ。」

 といらぬ忠告をするのでありました。

「それは良き事を、いくら現状では家畜以下の糞虫でありましても一応は人の形をしておるものですから詰まらない扱いをしてしまうのは宜しくないですわね。塩の袋も与えなさい。」

 これまた糞重い塩の袋を乞食達に与えるのでした。

 乞食達は貴族様であるお嬢様に与えられた物に文句言うことなく糞重たい荷物を皆して汗をかきながら無様に運んでいくのでした。乞食達の無様な様を見てお嬢様は悪をなすことがが出来たと胸が膨らむことを期待するのでありました。


 乞食達は糞嵩張る豆の束に糞重たい錆付いた鍋に糞重たい塩の袋を皆して運んでかわらまで運んでいきました。他の貴族達は何かを請おうとも剣を以って追い払うか門を閉ざすだけなのでした。それでも与えられたものがこれとは乞食達もこの国も同じなのかと絶望するのでした。そうしている間にも長旅で年寄り子供達が弱っているのです。

 嗚呼、神は正義を示さぬのかと嘆く乞食達の前に神官さんが通りかかりました。神官さんは乞食達が不相応な鍋を抱えているのを見て何事かと話を聞くのです。乞食達の話を聞いて神官さんは叱咤しました。

「かのお嬢様の胸はまっ平らであったのか分かりますか?」

「あの糞アマの胸は見事なくらいにマッタイラだったぜ。胸と一緒にやさしさというものを……」

 神官さんは無礼な事を言う乞食の男をぶん殴りました。

「それこそがあのお嬢様が善なるものである証、あのお方は善行を施すたびに胸のふくらみを犠牲にされているのです。貴方方にこれを与えても平らであるのはあの方の行いが善である証なのです。何故に厳しい言葉と家畜の餌ともいえる物を与えたのか考えて見なさい。そもそもお嬢様は家の財物に手をつけることを基本的に許されていないのですよ、それでも飢えたる貴方方の為に家畜の餌にするか捨てるかするしかない引き抜き豆の山に錆びて朽ちるしかない大鍋、塩にしても海より遠きこの地においては貴重なものであるのです。これらを組み合わせて家畜以下でしかない身から這い上がりなさいという願いが感じられないのですか?お嬢様は自身で賄える事が出来る物を惜しみなく与え、知恵を振り絞り生きて立ち上がる事を期待されているのですよ。引き抜き豆でさえ飢饉の時に救荒食として利用されていたことすら忘れているのですかこの隣国の乞食よ。」

神官さんの叱咤にはっとしました。 

 早抜きとはいえ豆は豆、豆自体は食えると未熟な豆を集めてさび付いた鍋を洗ってお湯を沸かして塩で味付けをして煮ました。

 多少の青臭さとともに柔らかな滋味が食べるそばから体に染み渡ります。家畜用の苦い塩も不足していた何かを補っているのです。体の弱った子供年寄りもゆでた豆をすりつぶして与えれば胃の腑に負担を与えることなく滋養をしみこませる事が出来るのです。

 食べて元気を取り戻した乞食たちはある者は森に分け入り禽獣を捕らえ食べる草を摘み食べ物をあつめ、鍋を守る女たちは身奇麗に住処を整え、働く体を持つ者は仕事を選ばず仲間を養う金を稼ぐために働くのでありました。

 乞食達は貧しいなりに生活が成り立つのでありました。そしてそのまじめな働きぶりに感心した神官さんは良き民となる素養のある者達であると王様に保護を願い出るのでありました。

 王様に保護され自由民としての権利を自ら勝ち得た乞食達は口々にお嬢様の徳と知恵を称え、我等はその問いかけに見事答え這い上がることが出来たのだと誇らしげに語り継ぐのでありました。

 

 その事を知ったお嬢様は頭を抱えてうずくまりました。



 一度や二度の失敗でくじけては胸は手に入りません。お嬢様は悪役令嬢らしく取り巻きをつくって見ることにしました。

 とは言え取り巻き自体は良き家の出なので直ぐに出来ました。やや胸部装甲が貧相な娘ばかり集めているのはお嬢様の自己満足です。国の派閥を超えて集めているのはどうかと思いますけど。

 その取り巻きの令嬢達のご実家にある問題に対して一言二言意見を言うと令嬢達は実家に連絡を入れます。数多の祝福を得たお嬢様はその地にいながら問題点を挙げる事が出来ます。誰ですか岡目八目という人は?否定はしませんが、本人達は真面目腐っている問題も他人から見れば簡単な解法があるのです。勿論それをするのは対抗勢力が云々と言う問題があるのですがお嬢様は自らが悪役になって解決に乗り出すのです。

 勿論善きを成そうという目的ではなく配下の些細な願いを叶えるのも悪の首魁としての嗜みであるとか利用する豚は肥え太らせてから食うのが旨いとかという悪役の教本から得た知識であります。そもそもその教本は何処から来たのかという突込みは無にして欲しいものであります。

 とりあえず悪役令嬢らしく我見である、逆らうならば以下略と強行するのであります。彼女は王族の流れを汲む大貴族の令嬢、そんじょそこらの木っ端貴族やら平民が逆らえるものではないのです。勿論悪役らしく善意ではなく利益をとるための行動なので忠告を受け入れたところから効果が出てきました。反対する者達は自分等の利益が損なわれるからと抗っていたのですが、利ある提案をされたら渋々と言う態度を表しつつも受け入れるのでした。その渋々と言う態度は理不尽で踏み躙っているのだと胸が膨らむ予感とともにお嬢様は楽しみに待つのでした。


 無理やりな事業を強行して理不尽に嘆く者の涙で胸が膨らむかと思えば一向に膨らむ気配がありません。悪事を成しても胸が膨らまないというのは体質なのかと親戚の女性達を見ても大小の差はあれども女性の膨らみがあります。豊胸薬なる物を求めて使用したのですが効果がありません、売りに来た商人と制作した薬師を腹立ちまぎれに罪人としたのですが気が晴れません。

 取り巻きの婚約者の一人が胸のことで馬鹿にした発言をしたので有り余る武力で叩きのめしたのですがそれは胸の乏しい女性達の支持を得るだけで悪にもなりません。剣技に優れた者だったのになすすべもなく叩きのめされたばかりか王家に連なる素晴らしき女性と自らの婚約者を理もなく辱めるとは何事かとその若者は実家から性根を叩き直されますがどうでもよいことです。その様子を聞いた王子様が自らの婚約者に対して一部分がきゅっとなったりしたのは聞かなかったことにするのは慎みある行動というものです。




 お嬢様は王立の学園に通われております。これはお嬢様の祖父にあたる先々代の王が国内貴族の交流と質を高めるために個々の私塾や家庭教師で行われていた貴族教育を一括して行うのである。ある種の人質とか洗脳とかいうなかれ、少なくとも王国にとって有益な人材を見極めたり人脈づくりをしたりとかから揚げに檸檬をかけるのは蛮行であると教える事が出来るのである。

 教育の有用性は地方貴族にも伝わっているらしく領民や家臣の子弟を対象として私塾が増えているのは良い事である。最近では善き人材を王立の学園に送ることが一種の見栄となっているので身分差を問わずに有能な少年少女が集まっているのである。

 お嬢様の家がある領地でも数多くの有望な若者が上京して学びに来るのであります。その中には貧民の子やら嘗ての乞食の子達もお嬢様の肝いりで通うのであります。

 お嬢様は反政府組織は貧民の子を育てて構成員に仕立て上げると言う手口が書かれた書物を手に入れて逆臣ならば悪事だから胸が膨らむかなと思い至るのです、ここまで来ると悪役令嬢じゃなくて他の者だろうという突込みは無にしましょう。

 お嬢様は悪役っぽくするために教師に質問して潰してみようと試みるのでありました。数学の教師には解法の違いを突き付けたら中々熱い議論の末に自論を認めさせる事が出来、度々数学的議論を交わしあう仲となりました。それは夕日が落ちる河川敷でやれという気がしないでもないですが。暦学の教師とは時刻と他国の歴史解釈の違いについて突きつけて自家に秘された偉人の裏話をしたら、うらやまけしからん資料を寄越せと言ってきてうざいです。この手の資料集める学者の類は借りた資料を借り朴するので渡すことはできません、それ以前に王家やら諸侯家の秘事や恥部が多いので之を知った先生達は口を紡ぐか手の込んだ自殺をする羽目になるのですがどうでも良い事であります。語学の教師達に対しては特殊な言い回しや方言で回答して不正解とするならばこれは現地で使われている用法で不勉強と問い詰めて、教師はこれはその言語ではないというと、ではこの言語はなんでしょうかと質問して答えを得るとこの国では特定言語以外の言語がないという見解ですけどと政治的にややこしい質問して胃痛を増やしたりしています。

 お嬢様に付き従う領民の子達は流石お嬢様と感心して我々も続けとばかりに学び質問するので教師達の過労と胃痛は増えるばかりですが一部の学者や教師達は向学心に溢れた子供に接して生き生きとしているのは労働中毒なのか知識欲が抑えきれないのか疑問に思えます。とりあえず戦技教官、お嬢様をはじめとして活きの良いのがいるからって生き生きしすぎるな。他の領地の子達がついていけないから。あと、魔道学者、後腐れのない生まれの子達が有望そうだからって自分の流儀に染めるな!魔術馬鹿とか変態技術者とか周りの調整する事務官がなくのだから。

「はははっ!変態言うな!むしろこの程度こなせなくてどうするのだ!魔道は危険な技術だ、だからこそ繊細な操作と注意深さが必要なのだ。なんでも力任せにぶっ放して終わりなんて言うのはチート異世界人に任せ………てはいかんぞ、奴らこそ自制と精密操作が必要だと………」

「魔力任せというとなんか異世界人達の琴線に触れるものがあるのだろうね、彼等の祖国は節約節約省エネとか煩いみたいだし………」

「抑圧された環境だから技術が変に発達するのだろうか?彼等の故郷は文学でさえも規制をかけるらしいから………」


 そこの魔道学者達の会話は脱線しているので切るとして、お嬢様も領民達も取り巻きを含めて一大派閥を作っているのであります。派閥は良くないという面々もおりますがお嬢様はとても有能すぎるので嫉妬を得ますし取り巻き達や領民達は数はいるけど権力がないのであります。

 同郷の者同士身を寄せ合って研鑽するのであります。数の力でお嬢様の領地の者は優秀である事を示し、 平民だの流民だのという糞にはお嬢様が権力を行使するのです。権力とはこういう時に使うものなのです悪というものは舐められたら終わりなのです。侮蔑の行為で潰された馬鹿は多すぎて泣けてきます、まだ、引抜とか好敵手宣言してくれた方がマシですと言うのですがこれはこれで面倒くさいのであります。

 お嬢様は悪役令嬢らしく馬鹿な事を言ってくるのを正面から粉砕するのであります。時々、将軍の孫息子とか宰相の甥っ子とか王家の肝いりで入学してきた魔術師見習いとか大商家の跡取りとかいるのは気にしてはいけません。親とも話をつけておくのは貴族の嗜みです、胸の貧しさを除けば彼女は優秀なのです。暫定ではありますが王子様のお相手として国母となる予定なのですから些細な行き違いなんて言うのは話し合って埋めるものなのであります。

 彼等は親元からお話があるのですけど理解できないとお放しになってしまうので頑張りましょう。お話で済めばよろしいのですけど家からお放しとか下手すれば命をお放しなんていうこともあり得ます。


 

 そんな学生生活を送っているうちにお嬢様に取り巻きやら配下希望者が出来ています。寄らば大樹の陰、厳しい面があるけども比較的まともな者につくのは常識的な判断でありましょう。

 配下希望者とか取り巻きから面白い話を聞きました。王子様とその取り巻き達、将軍の孫息子、宰相の甥っ子だの以下略が一人の少女にまとわりついているというのです。暫定としてではありますがお相手に選ばれている身としては少々不満に思えるお嬢様であります。

 その少女の身元を調べてみると平民と大して変わらない騎士の娘で成績優秀で騎士団長から推挙されて入学している。婚約者に騎士団の若手………云々、しかもお胸様がご立派!これだけでお嬢様はこの少女を敵だと判断いたしました。

「お嬢様乳の大きさだけで敵と判断するのは……」

「平民その1、貴方が大きいのが良いからかばっているのね。」

「いえ、そう言う訳ではどちらかというと王子派閥が婚約者のいるのにチョッカイかけているのかが気になりまして、大きいおっぱいは……うぎゃぁぁぁぁぁ!」

「裏切り者は許さない!」

 平民その1、自分に正直すぎたためお嬢様の怒りを買ってしまった君の雄姿は忘れない。


 お嬢様は暫定とは言え自分の物(王子様)が取られるのが癪に障るので少女に釘を刺しに行きました。

「お嬢様、釘を買ってきました。トンカチはどれがいいです?」

「大工の子(旦那は寝取られていない)釘を刺すの意味が違いますわよ。件の少女にやさしく忠告するだけですわ。」

「お嬢様、私達も同行いたしましょうか?」

「そうね、貴族だけだと威圧的でしょうから貴方達も付いてきなさい。」

 お嬢様は少女のもとへ行ってやさしく釘を刺しました。

「貴女婚約者がいる身でホイホイ男のもとに行くのはやめなさい。貴女を守ってくれるのなんていないのですよ。」

「はい御忠告感謝いたします。」

 流石に身分差があれば少女も大人しく従わざるえません。王子の方にも釘を刺すことにしました。


 王子の元に行くとまともに取り合ってくれませんでした。

「私が誰を気に入ろうがお前には関係ないだろう。あの少女を囲んでいじめたそうではないか、王妃になりたいからといって排除とは底が知れる。」

「そういえば、頼ってきた他国の流民に家畜のえさを与えて追い払ったということを聞きました。」

「貸した金を強引に取り立てたり家で養っていた孤児を追い出したなんて言うのも噂に来ております王子様。胸が小さいと心まで小さくなるのでしょうかね。」

「小領主の経営に無理やり話をねじ込んで民を困らせているとか………豊胸薬欲しさに無様な金稼ぎでしょう。」

「学園で教師を多数イビリ辞めさせているのは僕でも知ってます。胸が小さい腹いせにあたっていたのでしょうか?」

「おお、なんということだ。なんという悪女。」

「そう言えば噂によると魔女に呪いをかけられて『悪事を働かないと胸が小さいまま』と言う呪いがかけられて………悪事をしている割には胸が………哀れでありますな。」

「なんだと、胸が欲しいがために悪事を働く等とはなんという見下げた性根。父上達は如何してこの様なものを宛がうのかが信じられん。お前は私に相応しくない、この王子の名の元に婚約話を進めるのをやめてもらうとしよう。こんな胸も性根も小さい女なぞ願い下げだ!」


 取り巻きのば……若者達は口々にお嬢様の悪事を暴き立てて悦に入り胸を揶揄しています。そして王子様も胸も性根も貧相な(と思っている)お嬢様を受け入れたくないと鵜呑みにするのです。お嬢様は悪事は身に覚えがあるのですが胸の件を持ち出されるとカチンと来ます。カチンと来ています。お嬢様の表情がなくなって額に青筋が……

「どうした、まな板だって少しは凹凸があるぞ。」

 

 ぷちん………


 お嬢様の中で何かがはじけてしまいました。

「胸胸って!そんな胸でしか女を見る事が出来ない男なんてお断りですわ!」

 お嬢様は生まれてこの方ため込んできた憤りを王子様の顔面に叩き込んだのであります。王子様は水平に飛んで壁にめり込むかの勢いでぶつかるのです。取り巻き達は王子様に暴行を加えようとしたお嬢様を取り押さえようと駆け寄るのですが魔力も武力もあり威圧的なお嬢様の前ではなす術もありません。


「お嬢様、王子様に暴行を加えるとは反逆罪物ですよ、胸がなくて自暴自棄になるのは………げはっ!」

「将軍の孫息子、その言葉が乙女に対して暴行を与えていることじゃないですか!女の敵!」

「ちょっと、我が叔父は……ぐはっ!………お家が無事に………おぼっ!ぶへっ!」

「大丈夫ですわ、この件は私が貴男方の暴言に切れての犯行ですわ。学生同士の些細な喧嘩としておさまりますわよ。」

「え、えっと……ぼく、ちっぱいも悪くないかなって……」

「ま、魔術師見習い裏切るのか?」 

「そりゃ、ぼくだって命が惜しいし………多少の変節くらいは………」

「あら、変節って?王子派から私に乗り換えるのかしら?」

「そりゃおっぱいがかわいそすぎるのは僕の作った薬でなんとでもなるしこんな魔力があるお嬢様に逆らうなんて単身魔王に………」

「そういえばあなたその薬は一般向けに販売しておりますの?」

「え、えっと……小遣いが欲しくて薬師に調合法を………」

「効きもしない薬を売りつけているんじゃないわよぉぉぉぉぉ!」


どかーん!


 哀れ、魔術師見習いはお嬢様の爆裂火球の餌食となったのです。

「あ、あれ……ちっぱいな侍女さんとか色々試したけど普通に……がくっ!」

 薬は詐欺ではなかったらしいです。なんという強力な呪い!


「はははっ、無力な平民に手をあげるなんてお嬢様は致しませんよね?」

「勿論無力な者には手を挙げませんわよ。だけどね大商家の跡取り、貴男に言いたいことがあるの。」

「な、なんでありましょうか?」

「貴男の所の商品巨乳であること前提にした品物ばかりで私の立場がないでしょうが!!それに胸の詰め物群れてかぶれましたわよ。あのときの苦しみをお返しして差し上げますわよ!」

「ちょ、ちょっと、お嬢様。それは貴女の個人的な………うぎゃぁぁぁぁ!」

 大商家の跡取りは自家の商品のクレームをその身に受けるのでありました。南無……



 お嬢様が暴れていると少女が教師陣を連れて王子様の元に来ました。

「あら、正義を成しているのですわ。少女、貴女に付きまとう糞虫はこの通り……」

 そこには図多襤褸となった王子様一派がおりました。

「え、えっと……お嬢様、王子様達に付きまとわれて困っていたのは否定いたしませんが少しばかりやりすぎでは………」

「あら、そんなお優しい事を言うのはこの駄肉があるからなのかしら?」


 むにゅ!


 お嬢様は少女の胸をわしづかみにしました。

「嗚呼、憎たらしいですわね。」

「お嬢様おやめください!」

 教師陣だけではなく警備の衛士達にお嬢様は抑えられ窘められ縛につくのでありました。




 お嬢様と王子様一派の騒ぎを聞いた王様に殿様達は頭を抱えました。やったことは反逆行為ではあるが原因があまりにも酷過ぎたからです。

「家臣よ、これ如何収めたらよいか?」

「某にも如何したらよいか………婚約の話は白紙にすれば良いのですが、この件を公に裁くのは娘に非が一部あるとは言え………宰相殿にはいい知恵がありませんか?」

「甥御の言は少々酷すぎる。わしも大きなおっぱいが大好きだしあの娘が胸さえあれば後添えに………ぐはっ!」

 宰相の言は殿様に強制的に沈黙させられました。とりあえず殿様は親ばかです。そんなこんなで手を拱いて居る内に話が広がって公の裁きをかけねばならぬところまで行ってしまいました。


 裁きの時が来ました。よくある悪役令嬢ものだとこの時にお嬢様が王子一派の仕返し代わりにイヤーんであはーんな展開があるのかもしれませんが王様の血族で有力な殿様の娘で胸を犠牲にして善行を成していると言われているお嬢様に対してそんな事をする者は殆ど居りませんでした。そんな怪しからんのは周りがタコ殴りにするのです。

 こういう時に平民や下級貴族、騎士階級関係でに手広く取り巻きがいるのは良い事なのであります。とりあえず謹慎というか軟禁状態で不自由ではありますがまともな扱いを受けているのでした。


「で、我が従妹(王様から見てお嬢様は従妹に当たります)よ、王子その他を殴ったことに対して申し開きはあるか?」

「いえ、ありません。すべて私の怒りと遺志で行いました。従兄にして我等が王よ正しき裁きを執り行いくださいませ。」

「我が息子にして王子よ、我が従妹に殴られたことに何かあるか?」

「はい、このような悪しき者が我らが血族で我が国にあることはとても耐えがたいものであります。二度と彼女が世にのさばる事が無いように厳しき裁きを願います。」

 

 王様は善き娘に裁きを下すのがとても嫌でした。でも王子へ成した事は死罪にも値することなのです。そこで王様は裁きの場にいる全ての者に尋ねました。

「この場において我が従妹には死を与えるのが相応なのだろう。何かそれに言ある者はないか?」

 神官さんが言葉を発しました。

「このお嬢様の胸は平らであるか?」

「何故にそれを聞く?」

「お嬢様は『善を成すならば胸が育たず、悪しきならば程よく育つ』という呪いを受けているのです。もし悪意を持って王子様とご一統を殴り飛ばされたのであれば膨らみがあるはずです。そもそも聞く所によれば王子様方が臣民の婚約者を寝取ろうとしたのが遠因であります。もし、お嬢様の胸の膨らみがあるのならばそれは大逆の意思があっての事、それは死に値することでありましょう。なれど膨らみがなければそれは諫言の拳、死を賭して諌めんとする彼女を失うならばこの国は誰が王の言動を正すために言葉を発するものが出ましょうか!それに件の少女は婚約者と結ばれることを願う身………だったよね?」

「えっと、し、神官さんそこで私に話をふ、振らないでくださいただでさえ注目受けて身の置き所ないのに………勿論私は婚約者である若手騎士と結ばれることをね、願います。」


 神官さんの言には一理ありました。途中で話を振られた少女はいきなりの指名に驚きつっかえながらも自らの願いを紡ぐのです。

「ふむ、少女よ。汝の想い人は幸いであるな。国母となる道を蹴ってまで添い遂げたいと願われるのだから。少女よ汝にはこの件に対して王の保護を与えよう、願わくば我等に幸いなるを見せてくれるように。」

 少女の答えに王は下手なとばっちりがいかないように自ら保護することを明言するのでした。この保護により女性陣からの王様の株が上がって多少ちやほやされるのですがそれは別の話です。


「見ればお嬢様はまっ平、悪意なく至誠の言で諌めそれに応じることなき王子様に掛けられた心なき言葉に怒り事を起こしたのでありましょう。」

「何を言っている神官、この女が胸を小さく誤魔化しているに違いない。そうやって自分の正当性を……げふっ!」

 あまりに下品な事を言っている王子様に思わず神官さんは蹴りを加えて黙らせてしまいました。

「おお、神よ。あまりの暴言に耐え切れず暴力に頼ってしまう我が身をお許しください。王よ、私も同罪でありましょう。」

「神官よ、そなたの一撃は女性に対する扱いのなっていない息子への躾である。少々やり過ぎな所もあるが不問といたそう。」

「ならばお嬢様の行為も私と同じ事でありましょう。お嬢様に厳罰を下されるのであれば私にも同等の罰をお与えください。」

「うーむ、神官よ何とも難しい問いを与えるものだな。確かに我が従妹の言動は私怨もあったかもしれぬが諫言である。後日、決を定める故、この場は解散とする。皆の者、手間をとらせた。」


 どこまでの罰が正しいのは測り兼ねた王はその日は棚に上げるのでした。真っ平、真っ平と女性の胸の部分をしつこく強調されたお嬢様は羞恥のあまり

「いっそ殺して………むしろあの神官なぐり殺して私も死ぬ………」

 と項垂れるのでした。




 数日が過ぎ、王は判決を言い渡すのです。

 王子とその取り巻きには臣下の婦女を無理やり奪おうとした事と女性に対する暴言に対して再教育を命じ一時的に特権を凍結させて一から学びなおさせるのでした。

 お嬢様には学園の施設を破損し学友を傷つけた罪として奉仕作業を命ずるのでした。王侯貴族に対する暴行がつかないのは王子様達の王侯貴族としての特権を事件当日にさかのぼって凍結したからであります。

 なぜか神官さんにも「お前女性の胸に対して酷い事言い過ぎ」と謹慎処分に処するのです。これは主に胸が慎ましい女性を妻女に持つ貴族たちの突き上げでした。あの捌きの場でお嬢様が死んだ目をしたのに同情したからなのは言うまでもありません。


 お嬢様の奉仕作業は少女や取り巻きをはじめとする学友諸子の助けもあって見事と言うくらいになされたのです。奉仕作業と言ってもアハーンでイヤーンな事ではありませんよ。

 奉仕作業を得て罪を許されたお嬢様は国の大半の者から善意の人だと称えられるのです。そう称えられるたびに死んだ目になっていくのは言うまでもありません。




「お嬢様、そう言えばお嬢様の生誕の祝いの席で魔女の呪いに打ち勝つ贈り物とありましたけど何を贈られたのですか?」

 穏やかな日々、胸をあきらめたお嬢様が取り巻きの一人からそんな質問を受けた。

「そう言えば私も聞かされていませんわ。」

 お嬢様もそんな事は考えてもいなかったと件の賢女を訪ねるのでした。


 


「ああ、お嬢様。なんと美しくなられて………」

「そんな世辞は良いから賢女様貴女は何を贈られたのです?」

「ええ、お嬢様が胸のために道を踏み外す事が無いよう『変毒為薬』悪を成そうとしても結果として善になる祝福を少々。」

 女性らしさに欠ける胸を張りながら賢女は祝福の内容を語るのでありました。

「お、おまえかぁぁぁぁぁぁいなければぁぁぁぁぁぁ!」

 その答えを聞いたお嬢様が思わず賢女の首を締め上げたのでありました。 

 


 


お読みいただいてありがとうございます。


蛇足ながら呪いをかけた魔女は先々代王の婚約者候補だったのですが胸が小さいのが嫌だと外され、失意のうちに魔女になったのです。

祝福を与えた賢女は胸の小ささが原因(と本人は思っている)でいき遅れたため表向きは善行を成しつつ巨乳は死ねと恨みを募らせながら賢女となったのです。


うん、どうしてこうなるのだろう?


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― 新着の感想 ―
[一言] これは辛い。 女の悲しみを的確に突いてくるギャグですね。 呪い、一生解けないんでしょうか?
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