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不老不死の魔女とはどうやら私のことらしい 作者:Ellen

1章.混乱の王宮編

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15.王と罪人

「私、人間じゃありませんよ?」

私が冗談で言ったことに、レクセリアさんは驚いて返してきた。まるで、知らなかったのですか、とでも言いたげに。
しかしそれは私にとって余りにも衝撃的で、私は一瞬硬直した。

「はえ?」

未だに状況がよく分からず、変な声が漏れる。

「あのですね」

「ちょっとだけ待ってください」

レクセリアさんが説明をしようとしているが、とりあえず落ち着くことが先決だ。そうして少し深呼吸をして、私は調子を取り戻す。

「はい。お願いします」

「私は、魔族なんです」

そう言って、レクセリアさんは耳の近くにある髪飾りをずらした。そこには短い角が2本生えていて、それは禍々しくもあり美しい、何とも形容し難いものだった。

「これは、魔族の象徴であり、空気中の魔力、いわばマナと呼ばれるものに対して敏感な反応を示します。私が魔族であるからにもかかわらず王宮で働いているのは、私が昔、ある事情で魔族の集落を追放されて、人間から迫害を受けていました。その時、当時王様だったアドルフが私のことを拾ってくれたのです。」

そう、レクセリアさんはどこか厳しい表情で言う。その奥にどんな気持ちがあるのかも私は知らないが、表情から察するに辛いことがあったのだろうか。

「追放って...」

そう私は零す。レクセリアさんはいったい何をしてしまい、どんな罰を受けるに至ったのか。いや、現に今追放されているから罰はそれだけなのかもしれない。単に拾われたと言っても、そんな簡単に話が進むはずがない。

「私の母は、罪を犯しました。それはもうとても重い罪でした。母は処刑されました。そして私も殺されるはずだったのですが、ある人間のお陰で追放で済んだのです。」

罪。娘であるレクセリアさんも死刑になりそうなものなのだから、それは本人も言っている通り取り返しのつかないほどの罪なんだろう。

「私は、アドルフに受けた恩を返そうと今まで働いてきました。しかし、彼が王を辞職すると言った時、私のやることが分からなくなりました。」

レクセリアさんは、アドルフにこう言われたらしい。自分のやりたいことをして、好きなところで生きろ、と。それでも彼女は王宮で今まで通り働くことを選んだ。それは、彼女にとっての感謝の現れなのかもしれない。

「端的に説明すると、私が強いのは私が魔族だからです。」

これでこの話は終わりです、とレクセリアさんは言った。
湿っぽい話は終わらせて。暗い過去の話は、もうやめたかったのだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

夕食の時間。先程あんな話を聞いてしまったから何も気にならないという訳はないが、出来るだけ考えない様に意識する。
私は、何も知らない。魔族が何なのかも知らなかったし、今回の事でそれを痛感した。

明日、軍の入隊試験がある。恐らく入れるだろうが、今こんなことを気にしていてはいけないだろうか。
部屋に戻ると、ヤマトが起きていた。

「ねえ、ヤマト」

「どうしたの?」

「衝撃の事実を知った後、その人にどう接したらいいと思う?」

「別に今まで通りでいいんじゃない?だって、その事実が過去だって現在だって、その人はその人なんだから。逆に、それまでと違う態度をとってしまうとその人が傷ついてしまうこともある。心ってのは難しいものなんだよ」

少し、元気を貰えた気がする。レクセリアさんはレクセリアさんだし、他の誰かに変わったわけでもないのだから。

「明日かー...」

「頑張ってよね?明日の結果で、僕のこれからが決まるんだよ?」

そう言ってヤマトは笑う。

「落ちるわけないでしょ?なんてったって私は、魔女なんだから」

ヤマトの人生だけでなく、私のものもかかっているんだけどな。どちらにせよ、アドルフの言っていた『戦う王』を実現させるためには、合格しなければいけない。

「何処の世界に行っても人は変わらないんだな」

至極当然の事だが、人はそれを忘れがちだ。不条理な罪を、親しいから、家族だからという理由でも負わせる。

何処に行っても、人間は醜い。そして、私もその醜いうちの一人である。人間が自然に戻ると、世界はどうなるだろうか。醜いくせに綺麗になろうとするのは、見苦しいと言われるだろうか。

「私は、ちゃんとした人間になれるかな」

「大丈夫じゃない?完璧な人間なんて、ただの化物だよ」

元の世界にいたような、汚い人間にだけはなりたくないものだ。
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
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