サンタクロースがやってきた!(5/10)PDFで表示縦書き表示RDF


先週末に更新しようと思っていましたが更新が遅れてしまいました……。
さぁ、気を取り直して第4話 サンタクロースと文化祭【当日】をお楽しみください。
サンタクロースがやってきた!
作:伊玖夜紗望



第4話 サンタクロースと文化祭【当日】


 やってきました。遂にやってきました。
 文化祭当日です。
 学校は活気に溢れております。
 ……さて、俺等の、何だったか……メイドネットマンガ喫茶だったか? とりあえずどれくらい繁盛しているかと言うと、
 物凄く繁盛しちゃってるわけでしてこれが。
 長蛇の列ができてまして。忙しいわけなんですよ。――いや、男子は正直暇です。やる事ありません。せいぜい材料運びぐらいですがそんなもの二、三人いれば事は足りるわけで。
 とにかく、俺は暇であるという事が言いたい。
 で、なんとなく校内をうろつき回っているのだが特にめぼしいものは無い。――当り前か……文化祭ランクで何を期待しているんだか……。一人ってのも何か虚しいな……。
 野球部の方でも行ってみますか……。

 我が学校は、クラスと部活で出し物をするわけだが、部活、特に運動部に入っている奴等は凄く忙しい。その中でも特に忙しいのは――野球部とサッカー部である。
 この二つの部は、いつから始まったかは知らない伝統がある。
 野球部が豚汁でサッカー部がチャーハン。
 文化祭の時はずっとこのメニューらしい。何故かは知らないけど。
 そして、この二つは二大人気食べ物なのだ。
 昼飯時になると、長蛇の列が並び、ものの一時間ぐらいで完売してしまうほどの人気商品なのだ。つまり、美味しい。いや、これマジで。
 去年は豚汁は食べれたがチャーハンは惜しくも逃してしまった(というか、買ってきたのを一口食べた所で怜那に奪われた)。
 というわけで、昼には少しばかり早いがもう買っておこうというわけである。
 今は十一時前。少しばかり列が出来ていたが許容範囲内。まずは豚汁。
「おお、軻々良じゃねーか」
 そう声をかけてくるのは、ユウだった。
「クラスの方は大丈夫か?」
「大丈夫だろ。今の所は女子しか出番が無いな」
「昼忙しそうだな」
「ああ、今でかなり忙しいからな。――ユウ。お前いつから休憩になるんだ?」
「分かんねーな。昼にならねーと……」
「そっか」
「何かあんのか?」
「…………」
「お、おい、ど、どうした? 顔色が悪くなっていくぞ」
「や……奴に……げ、劇を見に来てくれって……昨日、チケットを渡された……」
「……ああ、そうか……」
「お前の助けが必要だ」
「分かった。先輩に掛け合ってなんとかしよう」
「助かるぜ」
 豚汁を受け取り、店を後にする。
 次にサッカー部に行き、クラスの奴等に声をかけ、チャーハンを受け取り、行くあても無いので教室に帰る事にした。



 な、なんじゃこりゃー!?
 人多過ぎ! 熱気凄っ! むしろ熱い!
 教室に入れねーっ!
「あれ? イノカラじゃん。何してんの?」
「ああ、怜……」
「あっちに凄く綺麗なメイドがいるぞっ!」
 その声と共に並んでいた客が一斉にこっちを見る。
「……なんか……怖いんですけど」
「写真撮影は禁止にしてるからな、目に焼き付けておこうとしてるんだろ」
「いや……あれは殺気だ……お前と親しく話している俺を殺そうとしている目だ……」
「自意識過剰だな、イノカラは。――おっ、チャーハンじゃねーか。もーらい」
「ちょ、待て。それ俺の」
 その時、教室からメイド委員長が顔を出して愛椎を呼ぶ。
 ――……可愛い。
「愛椎さーん! 手伝ってー! 手が回らない!」
「おー、委員長。分かったー。――じゃ、そういう事で……」
「いや、返せよ。――お、おい、返せ。返せーっ!」
 ……こ、今年も盗られた……。
 ……仕方ない。また買いに行くか。
「軻々良さんじゃないですか! 何してるんですか?」
「ミナリアか……。ちょっと食べ物でも買いに行こうかなと、思ってたとこ」
「私も行きます〜」
「仕事は?」
「今は休憩です」
「ふーん。じゃあ、行くか」
「はいっ!」
(あの野郎〜っ! 今度は可愛いサンタと話してやがるっ!)
(なんだよあいつ!?)
(腹立つなぁ〜)
 ……怖っ! 客の呟き怖っ! ここにいてはいずれ殺されるっ!
「ミナリア、早く行くぞ」
 ミナリアの手を引っ張って教室前を去っていく。ミナリアは、「あうあう……」と、言っていたが、無視した。

 まさかの行列。
 まだ十一時過ぎだぞっ! 何故こんなに並んでいる?
「……ミナリア、どうする? かなり待たされるぜ。――ミナリア?」
 辺りを見回す。
 少し後ろでぼーっとしていた。
「…………えへへ〜」
「――おいっ、ミナリア」
「はわっ!?」
「何顔赤らめて手を見てんだよ。――食べるんなら早く並ばないと無くなっちまうぞ」
「へっ、あ、はい」
「ったく」
 その時、サッカー部員らしき人物が走ってきて、
「すいません、もう売り切れてしまって。新しい材料を今から買いに行きますのでまた昼に来てください」
 と、告げに来た。
 ……マジかよ。
「……どうする? 売り切れたらしいよ」
「…………」
「ミナリア?」
「…………」
 さっきから手ばっかりを見ている。
「おいっ」
「は、はいっ!」
「どうかしたのか? 怪我でもしたのか? ちょっと見せてみろよ」
「い、いえっ、け、結構です! 何でもありません!」
「顔も赤いし……風邪とかじゃないだろうな」
「な、何でもありません!」
「……ならいいけどさ。無理すんなよ」
「は、はい。…………えへへ〜」
 ……変な奴。
「ところでイノカラさん」
「さりげなくイノカラって呼ぶな」
「そのポケットからはみ出ている紙切れは何ですか?」
「ああ、これね……」
「どうかしたんですか?」
 そうだった……これもあったんだ。時間は確か三時からだったよな……。――お、そうだ。ミナリアも誘っておこう。
「ミナリア、劇とか見ない?」
「はい?」
「いや、劇のチケットが無料で手に入ったから一緒に見ないかなーって」
「そ、それは私を誘ってくれているのですか?」
 その通りだけど……何故、そんなに眼をギラギラさせている? 怖いぞ。
「行きます! 絶対行きます!」
「おお、そうか……」
 ……劇とかが好きなのか?
「……それじゃあ三時前に迎えに行くから教室にいろよ」
「了解しました」
 と、敬礼し、そして、「あ、もう休憩終わりですので帰ります」と、言った。
「チャーハン買っといてくださいね」
「……了解」
 あと一時間以上列に並ぶ事にになってしまった。



 さあ、覚悟を決めよう……。
「気合入れ過ぎじゃね?」
「馬鹿者! これ位やっておかないと死ぬかもしれないのだぞ」
「いや、まぁ、俺はあいつを応援してもいいけどね」
「ユウ……てめぇ……」
「二人っきりではないのですね……」
「何か言った? ミナリアちゃん」
「い、いえ、何でもございません」
 さて、時間は三時前。体育館前である。俺とミナリア、そしてユウがいる。
 あと十分……。俺にとっては死刑台への階段を一歩一歩上っているかの様に時の流れが感じられた。
 両頬を掌で、パンッ、と叩く。
 よし! 覚悟が決まった。
「……軻々良さんは何をしているのですか?」
「彼氏に久々に会うから気合入れているのさ」
「かれ……し?」

 さあ、遂に劇が終わってしまったぞ。さあ、どうする俺? 逃げるか……、いや、それをするとまたいつぞやみたいにストーキングされること間違い無しだ。ここは受けて立つしかないっ!
「何かお前……初々しいぞ……」
「これは、まだかまだかと待ってるわけではない。時が経ち過ぎていく事をまだかまだかと待っているんだ」
「どっちにしろ待ってるじゃねーか」
「誰か来るんですか?」
「ん? ああ、こいつの彼氏だよ」
「違うっ! あいつは俺にとっての天敵だ!」
「そう思うなら、さっさときっぱりと断れよな」
「いや……でもさ……あいつは悪い奴では無いんだよ。だから傷付けたくないというか……」
「……その優柔不断さがダメなんだろうな」
「……ちっとも話が見えてきません」
 一人首を傾げるミナリアだった。
 更に待つ事五分。
 遂にその時がきたっ!
「すいません。お待たせしてしまって……」
「か、彼が……」
「そう、軻々良の彼氏さんだ」
「やめてくださいよ、ユウさん。彼氏だなんて……」
 顔を赤らめてこっちを見るな。

 彼が、我が天敵である――供漲十夜くみなぎとうや――だ。彼は男である。男である! 何度でも言うが、男である! なのに何故か俺に好意を抱いていると言うか、恋愛意識を持っているのである。――何度でも言うが、彼は男である。一体、何故惚れられてしまったかは分からないが、とにかく俺に惚れているのである。
 ま、それは置いといて(嫌な事まで思い出してしまいそうだから)、彼は演劇部に所属している。その外見から一年生の時点でステージに立ち、二年生になった途端三年生を差し置いて主役に抜擢されたのだ(先程の劇もこいつが主役だった)。――とにかく、こいつは格好良いのだ。少しばかり日本人離れしているくらいに鼻が高く、瞳も大きく、顔も小さく、肌も女子が羨むほどに綺麗で、更には背も高く、八頭身である。外見は誰もが羨む物を持っているだろう。
 だからこそ――だからこそだ。勿体無い。何故男好きなのか? 勿体無い……。この話はあまり有名ではないらしく、たまに(月一ペースで)女子に告白されている。それをいつも即答で断る。断る理由は「好きな人がいるから」。……女子達も、まさか好きな人が同性とは思うまい。
 ……いい奴ではあるんだけどな。

「凄いイケメン!」
 ミナリアが叫んだ。
 ああ、こいつも外見にやられてしまったか……。
「あ、どうも初めまして。供漲十夜です」
「初めまして。軻々良さんの主人、本名は長いのでカット。ミナリアと言います」
「主人?」
 とりあえず、頭にチョップを喰らわせた。かなり本気で。
「あうっ! 今までで一番痛いっす……」
「下らん事をほざくからだ。自業自得だな。――じゃ、俺は忙しいからそろそろ帰るわ」
 これ以上ここにいたら何言われるか……。
 踵を返したところで、
「待ってください」
 と、制止がかかる。
 はぁ……、面倒な事になってきたな……。
「今日の僕はどうでしたか?」
「よかったんじゃねーか。なあ、軻々良」
「とても格好良かったですよー! ねっ、軻々良さん」
「……………………まあ」
「じゃあ、付き合ってください」
 こういう事態になる事を事前に察知していた俺は、精一杯の笑顔を向け、
「やだ」
 と、即答した。
「何故ですかっ!? 僕が男だからですか!? そうなのですか!?」
「……いや、問題はそれだけじゃないけどね。ま、それが一番の問題かな」
「なら、モロッコにでも行って……」
「いや、性転化しろとかそういう事でもないから」
「ならどうすれば!?」
「どうすれば……って言われてもなー。……な、ユウ」
「俺に振るな。――だから言ったろ。与えるか、奪うかだって」
「そんな事言ったってな……こいついい奴だし……」
「か、嘉良雀君に、い、いい奴って言って貰えた……」
 いや、そんな事で目を潤まされても……。
「もう今日はいいです。これで満足です。でも――諦めませんから!」
 いや、是非とも諦めていただきたい。
 やがて十夜は、それでは、と手を振りながら去っていった。
「ふう……。何とか今回は逃れる事が出来たな」
「おめでと。――っと、そろそろ戻らねーと怒られるぜ、愛椎に。……ん? そういえば、なんであいつは来なかったんだ?」
「怜那はあいつの事が苦手なんだよ。――おい、ミナリア行くぞ」
 ミナリアは十夜の背中を見続け、はわぁ〜、とか言っていた。
「おい、ミナリア」
「あの人格好良いですよね〜」
「俺等の話聞いてなかったのか?」
「それを除いても格好良かったです。……ああ、トナカイもあれぐらい格好良かったらなぁー……」
「だったらあいつの所に行けばいいだろ」
 ……あれ、俺、何言ってんだ?
「あいつに乗り換えればいいだろ。俺の所から出ていけばいい。俺は別に構わない」
 だからこんな事言いたいわけないのに……なんで……。
「か、軻々良さん?」
「お、おい、何言ってんだよお前?」
「悪ぃ、先に帰るって皆に言っといてくれ」
「わ、私も……」
「ついてくんな!」
 思わず叫んでしまった。外にいる人達が一斉にこっちを向く。
「まだ仕事があるだろ。じゃ、そういう事で……」
 俺は振り向く事なく、家に帰る事にした……。



 さっきから携帯が鳴り響いてる。
 音が途切れる。
 着信相手を確認する。
 またしても、怜那からだった。
 これでクラスの奴等からの着信回数は二十回を超えた。

 俺は家に帰ってから何もしたくなく、着替えもせずにベッドに横たわった。
 なんであんな事を言ってしまったんだろう……分からない……。
 グゥ〜、と腹が鳴る。
 ……ったく、こういう時でもしっかりと腹は減るのかよ。
 窓の外を見ると日が沈んで月が出ていた。
 時計を見る。七時を回っている……。
 ……遅い。六時には文化祭も終わるんだからもう帰って来てもいい頃なのに……。
 その時、玄関が開く音がした。
 急いで一階に下りて、迎え入れる。
「た、ただい……」
 いきなり、そのまま俺の胸へと飛び込んできた。
 と、思ったら、今度は胸倉を掴まれた。そんな彼女の瞳は涙と怒りに溢れていた……。
「あなた……あなた……彼女に何を言ったのよ!?」
 こ、この言葉遣いと態度。するとこいつは――
「ミメリアか?」
「そんな事どうでもいいわよ! ミナリアに何を言ったのよ!? ――彼女……ずっと泣いていたのよ……。あなたが帰ってから、ずっと、ずっと……泣いていたのよ! 何をしたのよ!?」
 俺はあまりにも凄い迫力に圧倒されていた……。
「ずっと謝り続けている……この中でずっと謝り続けている……。あなたの事、信用していたのに……大丈夫だと思っていたのに……。――私はあなたを許さない……。絶対に許さない……」
 そう言い残し、部屋へと閉籠ってしまった……。
 それからも食事を取らずに部屋に閉籠ったままだった。


なんか、最早コメディーじゃなくなってきている気が……。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう