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1000文字小説 作者:折坂勇生
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77・手作りハンバーグ


「せつなちゃん、お夕食を、こっちで食べていかない?」
 暗くなってきたので帰ろうとしたら、彩音ちゃんのママが誘ってくれた。
 彩音ちゃんも、
「そうしなよ。せっちゃん、一緒に食べよ」
 って、笑顔でさそってくれる。
「でも……悪いよ……」
「遠慮しないで、わたしたちお友達でしょ」
 お母さんは夜おそくまでお仕事。なので、帰り道にあるコンビニでお弁当を買ったのを、家でチンして一人で食べることになっていた。
 だから、お誘いはとても嬉しかった。
 一人でないご飯は久しぶり。
 私は元気に「うん」ってうなずいた。
「じゃあ、ハンバーグを焼くから。食べたいだけ取っちゃって」
 ハンバーグの材料をよく練り混ぜた、山盛りの具が入ったボウルを渡してくれた。
「自分が食べれる分だけ取るんだよ」
 彩音ちゃんは、
「私は2つにするの」
 と、ボウルから中身を取ってそれを半分に分けた。
「こうやると美味しくなるんだ」
 両手でキャッチボールするように行き来させながら形を整えていった。
 私はねばねばしたハンバーグを大きめに取って、彩音ちゃんの見よう見まねで形を作っていく。
 柔らかい粘土で遊んでいるみたい。これが食べ物になるなんて、不思議な感じだった。
 私たちが作った生のハンバーグを、彩音ちゃんのママは熱したフライパンの上にのせていった。
 ジューと、いい音をさせて、油が飛び散っていく。
「お母さん、私のチーズを入れてね」
「はいはい。せっちゃんも入れる?」
「……うん」
 私の意識はハンバーグを焼いたフライパンしかなかった。
 蓋をされてしまい、中身はよく見えなかったけど、ハンバーグが焼き上がるのを最後まで見続けていた。


 今日はお母さんと一緒の日だ。
「ハンバーグ作って」
「なんでよ?」
 滅多にない私のわがままに、面倒くさそうにしている。
「ハンバーグか。確かあったわね」
 そういって、冷蔵庫を開けてごそごそと探している。
「あったわ。ハンバーグできるわよ」
 取り出したのは、電子レンジで簡単にできるレトルトのハンバーグだった。
「お母さんが作ったの食べたい」
「なんでよ」
 嫌な顔をする。
「雪凪は知ってるでしょ。お母さんは料理ヘタなの。こっちのほうが、簡単で、とっても美味しいんだから。ほんといい時代になったわね」
「違うもん」
「何が違うのよ。美味しい方がいいじゃない」
 お母さんはレトルトの袋を開けて、ハンバーグを取り出した。
「違うもん……違うもん……そんなの違うもん……」
 私はそう呟くしかなかった。
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