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1000文字小説 作者:折坂勇生
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76・眠れない



 いくら目を瞑っても眠れなかった。
 なぜだか体が興奮しており、睡眠につくことができなくなっている。
 寝なくてはならない。
 しかし、
 「寝なくては、寝なくては」
 と自分に言い聞かせれば言い聞かすほど、私の意識ははっきりとしてきてしまっている。
 試しにと、羊の数でも数えてみたが、154匹ほどで飽きてしまった。むしろ154匹もよく続けたものだ。
 他にも、
「リラックス、リラックス」
 と緊張を解くように自己暗示かけてみるが、まるきり効果がなくて無駄に時間を消費するのみ。
 何をしようにも、眠ることができない。
 ベッドの上で、横になった体をごろごろと動かしていた。
 落ち着かない。安らかにいられない。時間だけが一刻と過ぎてしまっている。
 諦めて、私はベッドから起き上がった。明かりを付けようとスイッチを入れるが、電気が点かなかった。
 どうなっている。
 何度も、スイッチの入れ切れを繰り返して、やっと蛍光灯は部屋を照らしてくれた。
 蛍光灯は眠っていたらしい。羨ましいことだ。
 読書をすることにした。読んでいれば、そのうち眠くなるだろう。
 読みかけの歴史小説を探してみるが、机にあったはずのそれが見つからなかった。
 違う場所にあるのだろうか。
 外出時に持って歩いている本なので、ありえる話だった。それでも、私の部屋のどこかしらにあるはずだ。
 本を見つけだそうと、部屋中を探し回った。苛立つことに、発見できなかった。そうなると、さらに気になってくる。私は部屋を散らかしながら、本探しを続けていった。
 急に、トイレの中かもしれないと思い立った。私はトイレの中でも、本を読んでいるのだ。
 トイレにも本は無かった。
 便器を見て、急に私は尿意を感じた。用を足した。長いこと続いた。終わった後も、すっきりしなかった。
 あれだけ出したのに、まだ尿意が残っている。
 寝室に戻ると、部屋中がガラクタで埋め尽くされていた。泥棒かと思ったが、本を探していた私がやったことだった。
 そろそろ朝だろう。
 時間を確かめようと、目覚まし時計を探した。
 ガラクタの山の中に時計はあった。
 時計の針は12時だった。
 ショックを受けた。信じられないことに、私が床についてから、時間が止まっていた。
 すると、目覚まし時計がジリリリリリ!と急に鳴りだした。
 飛び起きた。
 パジャマは汗でぐっしょり濡れていた。周囲を見回すと、カーテンの隙間から朝日の光が差し込んでいた。
 安堵した。
 私は眠れないでいる夢を見ていただけだった。
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