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1000文字小説 作者:折坂勇生
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74・こどもはなんでも見ている


 ぼくは、ちえちゃんとままごとをしていた。
 そんな小さな子供の遊びをするのは恥ずかしかったけど、ぼくはちえちゃんのことが大好きなので、すっごくうれしかった。
 だって、ぼくがパパで、ちえちゃんがママの役をしてるんだもん。
 ぼくは会社から帰ってくるところ。パパのように、お酒を飲んでフラフラとなって、家に入っていった。
「ひっく、ただいまーだぜ」
「おかえりなさいっ」
「ちっちっち、ちがうんだよなー。お帰りなさいって言うのは時代おくれなんだよ」
「え、そうなの?」
「そうそう。うちのパパとママはそんなこと言わないんだぜ」
「じゃあ、なんていえばいいの?」
「うんとね。おかえりなさいませ、ご主人様っていうんだよ」
「なにそれ」
「うん。パパが帰ってくると、ママがそんなこと言ってたんだ」
「ヘ~ン、ヘンだよ、それ」
 おかしーいってちえちゃんは「あはは」って笑った。
「でもパパ、喜ぶよ。顔を真っ赤になって、今日のママはメイドさんかぁ~へっへっへっへ~ってさ」
 ぼくが「へっへっへっへ~」ってパパの真似をすると、ちえちゃんはさらに大笑いだった。
「あははは、うちではそんなこと言わないよ~。でも、やってみるねっ」
 ちえちゃんはトットットットって後ろに下がってから、くるりとこっちを向いた。そして足首まである長いスカートを軽く持ちながら上品に歩いてきた。
「おかえりなさーい、ご主人様」
「も、もえ~」
「あはははははーーーっ、それなにっ!」
 ちえちゃん大ウケしていた。
「パパがいつも言うんだよ、おかえりなさいご主人様って言ったらさ、ママにもえ~、もえ~、て」
「もえっ、もえっ、もえっ」
 ぼくの家では普通だったけど、ちえちゃんにとってはすごくおかしかったようで、「もえっ」「もえっ」と笑いながら真似をする。
「ちえちゃんの家は、そんなこと言わないの?」
「いわないよー。普通におかえりなさいってだけ。あっ、でもねぇ」
 なにか思い出したようで、もったいぶるようにニコニコとしながら、つづきを言うのに少し時間を空けていた。
「ちえが眠ってたときに、お父さんが帰ってきてね。お母さんがおかえりなさいって言ったら、お父さんの大喜びする声したの。それでね、なんだろうなぁって、こっそりのぞいてみたんだ。そしたらね……」
「そしたら?」
「お母さんったら裸にエプロン着ておかえりなさいって、言ってたんだよ。おしりまるだし」
「もえ~!」
「うん、お父さんのチンチンもえあがってた」
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