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1000文字小説 作者:折坂勇生
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63・ブサイク


「あなたって本当にブサイクよねぇ。頭はもじゃもじゃしていて、あら、それってハゲ? それともファッションにしている、なんてことないわよね?」
 頭のてっぺんのハゲかかった箇所を指差して、悪気なく聞いてくる。
「本物だよ。最近抜け毛が多くてな。髪が薄くなる一方なんだ」
「ふーん、触ってみていい?」
「触るな、結構気にしてるんだ」
「いいじゃない、それはそれで魅力的だもの」
 無理にフォローしてくれている訳ではない。本心からそう言っていた。
 彼女は美術品を観賞するように、興味深そうに、私のブサイクなツラをまじまじと見ていく。
「アナタって、見れば見るほど面白い顔をしているわよね。眉毛は濃くて、目元は小さくて、鼻は飛び出て、口が小さくて、しかもひん曲がっていて、顎だってバナナみたい突き出てるんだもの。他には……あら、耳もユニークな形をしているのね……それから、あら、こんな所にほくろがあるんだ」
「顔なんか見ての通りだろ、品定めしないでくれよ。俺がブサイクなのは、自分で分かっているんだ。子供の時から、ブサイク、ブサイクって言われ続けてきたけど、それでも慣れることなんかなかった。格好良く生まれたかった、こんな顔を作ってしまった神様を、恨んでいる」
「そんなものかしら。私には良く分からないわ」
「君は美人だからな、しかもとびっきりの」
「そんなのどうでもいいわ。いまどき美人なんて、珍しくもなんともないでしょ。ほら、そこの女性……」
 彼女は、通りすがりのスタイルの良い女性の方を指さした。
「あの子だって美人じゃない。私とどこが違うってわけ?」
「うーん、そうだな。目元がちょっと違ったような、そうでないような」
「そんなもんでしょ。美人なんか、みんなと変わりないって言ってるのと同じだもの」
「雰囲気は違っていた。きみは活発だし、物事をはっきり言う。さっきの女性は大人しそうだった」
「そりゃ、性格は違うでしょうけど」
「それで俺は君を選んだんだ」
「それは、どうもありがとうね。でも、浮気したら、怒っちゃうわよ。あなたってブサイクすぎて、モテモテなんだもの」
 時は21××年。科学の進歩は人間の容姿を発達させてしまい、世の中は理想通りの美形だらけになっている。悪く言えば皆似たり寄ったりで、量産型のロボットのようだった。
 そんなわけで、私の様な原始的な個性豊かな顔をしたブサイクの方が、貴重な存在であり、モテモテなのも無理はない話なのである。
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