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1000文字小説 作者:折坂勇生
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59・フェチ


「言っていいのか、悪いのか、分からないが、そろそろ言わなくちゃかわいそうだから、言うことにするわ」
 ミヨとのデート中。サ店でくつろいでいる時に会った時から言おうか迷っていた話題を切り出した。
「十分に堪能したしな。名残惜しいがそろそろいいだろ」
「えっと、それってなにか、重大な告白でもすんの。あのね、別れ話は嫌よ。それとプロポーズならまだ先にしてよね」
「そんなんじゃないから、安心しろよ」
「じゃあなによ。ドキドキしてくるじゃない」
「心の準備はできてるか?」
「だからなによ、じれったいわね」
「鼻毛、見えてる」
 指を差して指摘した。
「へ?」
 きょとんとする。
 言葉の意味が分かったようで、ポーチに入っている小鏡を出して、自分の鼻を確かめた。
「げげげっ!」
 鼻毛が見えているのを確認すると表情を歪めた。
「い、いやだぁ。見えちゃってるじゃない。もっと早くに教えてよ。最悪じゃないの、恥ずかしい」
「なんで、いいじゃん」
「よくないじゃんっ!」
 そういいながら、誰かに見られないように片手でそっと鼻を隠して、ちょびっと出ている鼻毛を抜こうとする。
「あー、もう最悪。タケルさ、ミヨのこと嫌いになんないでよね」
 ティッシュで鼻を拭きながら、照れながらも困ったように、色目を使って俺を見る。
「なんないって。鼻毛のミヨってかなり可愛かったぜ」
「可愛くないって、ヤバイってば」
「本当だってば。時効だろうから暴露すると、俺と初対面の時だって、ミヨは鼻毛を出してたんだぜ」
「げげげっ、マジっマジっ?」
「疑いのない事実だ」
「だってあの時って合コンでしょ? みんなに見られてたってわけ?」
「見られまくり。誰も言わなかっただけよ」
「うわぁ、チョー最悪じゃない。みんな引きまくりだって。ああん、教えてくれた方がまだマシだよぅ」
 おでこをテープルの上にぶつけて、両手を頭に乗せて、この世の終わりだっていう仕草をする。
 ミヨは気付いたように、がばっと顔を上げた。
「つかさタケル、よくそれで、ミヨとつきあう気になったね?」
「それが決め手だったからな」
「は?」
「俺さ、マジかわいいって思える女の子が鼻毛をちょこっと出しているのに、グッとくるんだよね。いわゆる萌えゾーンっつーの? まぁなんてーか、俺って鼻毛フェチなんだよ。そんでミヨのこと好きになったんだ。いやホントに。あの鼻毛にビビビッと来て、鼻毛のミヨに惚れたんだよ。君の鼻毛に乾杯!」
「乾杯すんなっ!」
 殴られた。

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