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1000文字小説 作者:折坂勇生
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5・強盗



「動くな!」
 書斎の椅子に腰掛けていると、後ろから声が聞こえた。振り返ると、覆面をかぶった男がいた。
 窓から侵入してきたようだ。
「誰かね?」
「見て分かるだろ」
「強盗か」
 男は肯定として、銃口を突き付けた。
「おっと、これ以上動いたらあの世行きだぜ。死にたくなきゃあ金を出しな」 
「それは本物かね。モデルガンではないだろうな?」
「本物だよ。この引き金を引けば、ドカンとあんたの頭がふっとんじゃうぜ」
 私を怖がらせるよう、ニヤニヤと銃を見せびらかしている。
「そっか、それは好都合だ。キミが来てくれたことを歓迎するよ」
「なにふざけてやがる。さっさと金をだすんだ」
「金はない」
「死にたくなければ、出すしかねぇぜ」
「ああ。早く殺してくれ」
「なに?」
「これを、見なさい」
 強盗に、机の上にある小ビンを見せる。
「なんだ、そりゃ?」
「毒薬だよ。これを飲めば私は死ねるんだ」
「なんだと……」
「さっきから、飲もうとしているんだが、飲む勇気がなくてね」
 時計を見れば、深夜の2時16分だ。
「ふう、かれこれ4時間もこの状態でいたのか。情けないな。この世に未練はなくとも、死ねないでいるとは……」
 自分が情けないと、大きくため息をつく。
「あんた、自殺する気なのか?」
「そうだ。会社が潰れてしまってね。私は破算した。大事な女房、子供にも逃げられた。この屋敷だって、近々売り払われることになっている。私に残っているのは膨大な借金だけだ。そうなれば、死ぬ以外に救いの道はないだろ?」
「ちっ、厄介な家にお邪魔しちまったな」
「頼むから、その銃で私を殺してくれないか? もちろん、礼はする。金はないが、コレでどうだ?」
 引き出しにあった金の腕時計を渡した。
「父の形見だ。売ればかなりの額になるだろう。さあ、一思いに私を殺してくれ」
 強盗は、手にした時計を眺めていたが、思い直して床にたたきつけた。
「ふざけるな! 俺は強盗だ。殺し屋じゃねぇんだっ!」
「さっき殺すと、言ってたじゃないか?」
「脅しに決まってるだろ。本気で殺すわけねぇよ!」
「やれやれ、情けない強盗だな」
「勝手に言ってろ、くそっ!」
 強盗は、開いた窓から出て行った。
「殺してくれないのかっ!」
 窓から呼ぶと、「ファックユー!」と早々に逃げてしまった。
「あなた、誰といたんですか?」
 物音で目が覚めたのだろう。パジャマ姿の女房が顔を出した。
「ああ、頭の悪い強盗を追っ払ったよ」
 そういって私は、ドリンク剤を飲んだ。

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