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1000文字小説 作者:折坂勇生
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49・見たことのある顔


「どっかで見た顔なんだよな。どこだっけなぁ? 小学生の頃のダチじゃなかったし、つい最近見かけた気がするけど、そうでないような……。テレビで見た? まさか有名人? いや、あんなヘボ顔だ、ありえん。あれは有名じゃない、無名人だ。エキストラで出演していて、たまたま覚えていたとか? うーん、ありえるような、そうでないような。つか俺、最近テレビつけてないわ。じゃあネットか? なんかの記事でみた顔なのかもしれん。いや、違うな。くそっ、分かるようで、わっかんねぇ!」
「おまえ、まだ考えてるのかよ。バッカじゃねぇの」
 一緒に歩いていた友人が呆れていた。
「気になるんだって。さっきの男、会ったことある奴なんだ。きっとあるんだ。でも、いつ、どこで会ったのか、思い出せないんだよ。それって、気味わるくない?」
 駅前で友人を待ち合わせていた時に、道を聞いてきた男がいた。
 その場所を教えている時に「どっかで見た顔だな?」と、妙な近親観が沸いたものだ。
 しかし彼の方は、そんな親しみはなかったようで、礼だけ言うとさっさと去って行った。
 彼が消えた後も気になって仕方ない。以前に会った事のある男のはずなのに、いくら思い出そうとしても分からない。
 それに、向こうは俺のことを知らなかった。
「気にしすぎだ。そろそろ忘れろよ」
「だって、ここまで出掛かってるんだぜ」
 自分の喉をちょんちょんつついた。
「あとちょっとで思い出せそうなんだ」
「デ・ジャウとか、そんなんじゃねぇの?」
「いやいや。どっかで見たんだよ」
「誰かに似てるとか、そんなんかねぇ」
「似てるかぁ。そうかも知れない。誰に似てたんだろ?」
 頭の中で、俺が今まで出会ってきた人の顔を次々に思い浮かべてみる。
 仕事先で会ってきた人々の顔、叔父叔母や従兄弟などの親戚の顔、学生時代の友人知人の顔、姉貴と義兄の結婚式に来ていた人々、などなど数多くの人の顔を脳内でリストアップするが、さっきの男と一致しなかった。
「近い顔はあるけど、そいつじゃないなぁ」
「まだやってんのか。おまえに付き合ってると苛々してくるわ」
「誰だったかなぁ」
「もう諦めろ。俺、トイレ行ってくるわ」
 友人が、トイレに向かって歩きだした。
「あ、待ってくれ」
「なんだ?」
「俺も行く」
 しょんべんを済ませて手洗いをする。
 洗い終えたら顔をあげた。
「ああああっ!」
 鏡に向かって、俺は叫んだ。
「どうした?」
「こいつだっ!」
 さっきの男に似た奴が、鏡に映っていた。
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