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1000文字小説 作者:折坂勇生
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42/82

42・川辺の決闘

 おれと野郎は川辺で殴り合いをしていた。
 原因は、おれが付き合っている女の珠希を巡っての争いだ。
 喧嘩を仕組んだ張本人である珠希は両手を組んで、ハラハラとした表情でおれたちの喧嘩を眺めているが、どっちを応援しているのかは謎だ。
 なにしろ彼女は、おれの女であると同時に、喧嘩している野郎の女でもあった。
 要するに、二股を掛けてたって訳だ。
 発覚したとき、どっちが好きなのか問いつめたら、「ふたりとも好き」と答えた。呆れたが、そんな女だった。美人は得だ。それでも男は別れ話を切り出さない。挙げ句の果てに「勝った方と付き合う」ということで、決闘なんか始めてしまった。
 互角の戦いだった。野郎は一見すれば軟弱そうな体つきなのに、テニスをやっているらしく、すばしっこくて、体力があった。あっさり終わると思っていたのに予想以上に長引いている。
 慣れない喧嘩なんかするもんじゃなかった。体中が痛かった。顔を殴られすぎて、腫れ上がってしまっている。鼻がズキズキする。折れちまったかもしれない。イケメンが台無しだ。
 相手の男も、同じように腫れ上がり、鼻血を噴き出していた。ブサイクのツラがさらにブサイクに成り下がっていた。
 お互いが最終ラウンドを戦っているボクサーのようになっている。
 残念なことに、これは正式な試合ではない。判定なんか糞くらえな殴り合いの喧嘩なので、どちらかがノックアウトするしか勝負がつかない。
 おれは疲れ切っていた。へとへとだ。そろそろ終わりにしたかった。なのに相手の闘志は燃えまくっている。
「珠希は俺の女だ」というオーラをぷんぷんさせて、おれに挑んできている。おれが珠希を騙した悪党だと信じ切って、お姫さまを取り戻すナイト気取りとなっていた。
 いい迷惑だ。さっさとくたばってくれ。
 おれは、やつに突進する。ヘロパンチなっていた。しかし、ヤツも避ける力がない。モロに当たった。威力がなかろうと、体力の失なった状態では応えたようだ。チャンスだとおれはパンチを連続でお見舞いする。
 それでやっと野郎は倒れてくれた。
 勝利だった。嬉しくない。バカらしさだけが残った。
 珠希が、走ってくる。笑顔を見せていた。
 ボクシング映画の1シーンのように、勝者のおれにキスをプレゼントしようとしている。
 くそ、ヒロイン気取りになりやがって。
 自分を巡って男が争ってたんだ。さぞかし快感だったに違いない。ふざけやがって。
 おれは、ありったけの力で珠希を殴った。
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