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1000文字小説 作者:折坂勇生
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34・幽閉されしお姫さま


『誰か。誰か。私の声を聞こえるものよ。誰か。聞いてください。助けて欲しいのです。お願いします。誰か。聞いてください。私の国を助けてください』
 心の中から少女の声が聞こえてきた。誰の声だろうか。そう思いながら声に意識を寄せてみると、雅やかなドレスを着た金髪で青い瞳の美しい女性が浮かんできた。場所は牢獄の中だ。彼女は両手を組んでひたむきに祈っている。天上の雲まで届いた高い高い塔の最上階にて幽閉されているようだ。塔の頂上には、巨大な竜が座っており、恐ろしい遠吠えをあげていた。
 私の中に突然に浮かんできた、異世界と思わしきこの光景は一体なんであろうか。意識のある状態にも関わらず、夢を見ているのであろうか。
 それにしても、祈りささげている気品のある少女は、なんという美しさであろうか。こんなに美しい女性は未だかつて見たことがない。これが夢であろうとも、あの世からのお迎えだろうともかまわない。もっと彼女の姿を見ていたい。そんな気持ちがあった。
 うっとりとしていると、私の疑問に答えるかのように心の中からの声が聞こえてきた。
『私は光の世界に住むスイート王国の姫ミルフィールと申します。我が国は、300年前の戦争で闇の王を封印してから、争い事のない平和で豊かな生活を送ってきました。しかし、あらぬ者の手によって、闇の王ムシバイキンの封印が解かれてしまったのです。戦争を知らず、人を傷つける武器など持ち合わせていない私たちは抵抗することができずに、闇の王の攻撃にただ耐えるしかありません。美しい自然は破壊され、スイート王国は火の海となり、天を照らした光は瞬くも間に暗黒のものとなりました。王国は支配されて、国の姫である私は闇の王に囚われて、この魔神の塔に閉じ込められてしまったのです』
 悲しみにふるわせて、涙を浮かべながら、真剣になって語りかけてくる。
『戦のできない私たちになすすべはありません。このままでは、闇の王ムシバイキンの手によって、世界は滅ぼされてしまうでしょう。私たちに残された希望の光はただ一つ。それは、別の世界に住む勇者を、ミルフィール王国へ導くことなのです。私の声を聞ける勇者よ。お願いします。あなたしか頼れる者がいません。愛と勇気の力をもって、我が国を助けてください。あなたならきっと、この国を救うことができるはずです』
 助けにいきたいものだ。
 しかし、寝たきり老人の私に何ができるというのであろうか。
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