挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
1000文字小説 作者:折坂勇生
32/82

32・平和の中に侵略者


「ああっ!」
 高橋と駅ナカにある立ち食いソバを食っていたら、急にヤツが叫んだ。どんぶりから、ソバつゆがこぼれそうになる。
「馬鹿野郎。びっくりさせるな」
「あー、急に思い出した。いや俺さ、実は宇宙人なんだよ」
「さっさと食え。会議始まるぞ」
 アホらしくて付き合いきれん。
「いや、冗談抜きで本当なのよ。信じられないと思うけど」
「どうせ、地球だって宇宙にあんだから宇宙人だってオチだろ」
「いやいや本物だ。ЫЙёЖ星って星からやってきたんだよ」
「なんだその、ひゃらふこりゃしふぉら星ってよ」
「ЫЙёЖ星だ。んまぁ、地球人には言えない発音だけどな」
「それが事実だとして、なんの為に地球にきたんだ?」
「そりゃ決まってる。地球征服だ」
「助けてっ、ウルトラマンっ!」
「シュワッチ! じゃなくて、本当なんだってば」
「ウルトラマンだって本当だぜ。実は俺の正体がそうだ」
「単に、着ぐるみショーの中の人だっただけだろ」
「なんだ、知ってたのか」
「前に聞いた話じゃないか」
 二人してソバをずるずると食べた。高橋は汁をずずっと飲んでいる。
「んはぁ、うめぇ!」
 感激していた。たかだか290円のかけそばで美味い美味いと喜んでいる。幸せなヤツだ。
「で、侵略はいつするんだ宇宙人くん」
「やめた」
「なんで?」
「俺の星よ、戦争と破壊ばっかで、食い物なくなっちまったんだ」
「住めなくなったんで、地球を乗っ取ろうってのか。良くあるパターンだな」
「それで、偵察隊が地球人になりすまして地球に来たんだ。そしたらよ、そいつら感激したんだよ」
「なんで?」
「食い物が美味かった。めっちゃ美味かった。今まで俺たちが食ってたのは、地球でいうゴキブリみたいなもんだと気付いたのさ」
「そりゃよかったな」
「俺たちは思ったんだ。この国を侵略して地球人を滅ぼしたところで、このべらぼうに美味いメシにありつけないぞと。それよりも地球人になって、美味いメシをいっぱい食ったほうがいいじゃないか。それで、俺たちは記憶を消して、この星の住民になったんだ」
「ふーん。それじゃ、わが星の食料に感謝したほうがいいな」
「ああ。地球のメシは感動的に美味い。宇宙一の味だよ」
「そりゃ照れるな」
「しかし、美味すぎるのも困ったものだ」
「なんかあんのか?」
「最近、人口が爆発的に増加してるだろ? それ、美味いご飯を目当てに、宇宙人がどんどんやってきてる証拠なんだ。この星は近い将来、宇宙人だらけになるだろうな」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ