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1000文字小説 作者:折坂勇生
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27/82

27・和解


 打ちっ放しのゴルフ練習場。
 左腕を一本の棒であるように意識をし、真っ直ぐグリップを握りしめ、ゆっくりとクラブを上げていって、振り子のように素早く打った。
 打ち外した。
 ゴルフボールは真上に飛び上がり、50ヤードほどで落ちてしまった。
 3番ウッドで150ヤード飛ばすのを目指していたが、辿りついたのは5個も満たなかった。
 腕が衰えたのではない。年のためだ。
「へたくそだねぇ」
 私の後ろに、だぼだぼなズボンを着る若者がいた。久しぶりに見る間抜け面だ。人を小馬鹿にした顔は相変わらずだが、肉付きはたくましくなっている。
 真面目に働いているようだ。力勝負したところで、私に勝ち目はあるまい。
「調子が悪いんだ」
 ティーにボールを置いた。何も考えずに、力一杯に振った。邪魔者が見ているためだ。集中できず、あらぬ方向に飛んでしまった。
「そういや、いつもブービー賞を貰ってたよな。つまんない土産持って帰ってきてたっけ」
「最近は上手くなってきている。ブービーなんかここ数年もらっていないぞ」
「一位の景品を貰ってるのか?」
「いや、なにも無くなった」
「じゃあブービーの方がいいじゃん。弱くなれよ」
「減らず口をたたきやがって」
 おまえもやるかとドライバーを渡した。奴は素手でグリップを握った。
「グローブを使え」
「平気だって」
「使うんだ。手が傷付くぞ」
 嫌がったが、私のを貸した。
「野球のバットと違うんだ。力を入れるんじゃない」
「うるせぇ、おじいちゃんだ」
 おじいちゃんを強調していた。
 私のアドバイスを払い除けて、野球ボールを打つ感じで、力任せでゴルフボールを打った。100ヤードは超えたが、大きく右に曲がってネットに当たった。
「ちっ。手が痛ぇじゃねぇか。やーめた」
「どっちなんだ?」
「なんのことでぇ?」
「生まれたんだろ」
「ああ。女の子だぜ、おじいちゃん」
 そう笑って、ドライバーを返してきた。
 見本を見せてやると、私は深く息を吐いてから、ボールを打った。真っ直ぐに160ヤード飛んだ。目標到達だ。
 自慢気に彼を見ると「ひゅー」と口笛を鳴らす。
「俺は行くぜ。送っていこうか」
「いや。私も自動車だ」
「それもそうか。じゃな、親父。はやく孫の顔を見に来いや」
 息子は練習場から出て行った。
 五年ぶりの再会だ。勘当したあの頃と違って、いい顔をするようになっていた。
 初孫か。笑いたくなった。その照れを打ち消すべく、力一杯にドライバーを振った。
 ボールは大きく右に外れた。
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