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1000文字小説 作者:折坂勇生
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26・無言電話


 電話が鳴った。
「はい、はい、はい」
 水を流さずトイレから出てきた私は、7回鳴った所で受話器を取った。
「はい、山下です」
「…………」
「もしもし」
「…………」
「もしもーし」
「…………」
「もしもーしのどちらさまですか?」
「…………」
「おーい、誰かいるのかー?」
「…………」
 電話の向こうからは、うんともすんとも声がなかった。しばらく黙ってみても、相手の方は沈黙したままだ。
 これはイタズラ電話なのだろうか。無言を通してなにが楽しいのか。相手が困った反応を楽しんでいるのだろうけど、そんなに面白いものとは思えない。
「…………」
「…………」
 無言のまま時間だけが過ぎていく。電話越しで睨めっこしているようなものだった。
 既に一分が経過していた。
 私の主義として、相手が先に電話を切らなくては、自分の方からは切らないというものがある。
 特に理由はない。私の方から電話を切るのがなんとなく嫌なのだ。こういう相手であっても、例外ではなかった。
 しかし困った。
 受話器を置きたいのにそれができない。電話は相変わらず沈黙している。3分経っても、相手は切ろうとしないのだ。
 用事のない休日であるし、電話代は向こう持ちなのが、せめての救いであった。
 このままだと一時間が経とうとも、この状態が続いてしまいそうだ。
 かくなる上は……。
「電話にでんわ」
「…………」
「だじゃれを言ったのはだれじゃ」
「…………」
「このシャレ、シャレてるね。よしなシャレ」
「…………」
「つまらんシャレで、アイムソーリー、ひげソーリー、のソーリー大臣」
「……ぷっ」
「…………」
「…………」
「今、笑った?」
「…………」
「ああ、笑ったぞ、笑ったな、私にはちゃんと聞こえたぞ。私のギャグで、ギャングがギャグンとなったんだな。いい気味だ、たまごの黄身ではないぞ」
「…………」
 さっきの「ぷっ」しか反応なかったが、それだけでも大きな収穫だ。とりありず、相手は聞いてはいるということが分かったのだ。
「喉が渇いたな。ソーダ、コーラせたコーラを飲もう。と思ったが、ないソーダ。コーラ参った。息子にソーダんしたら、お父さんのを飲んだのお前か、コーラーっ!」
「…………」
「コンビニで弁当買ったベントーベン」
「…………」
「どうだ参ったか。こんなにシャレをまいたんだ、シャレイはいらんぞ」
「おまえバカだろう」
 相手はガャチンと電話を切った。
「勝った勝ったでカッターナイフ」
 にやりと笑って私は電話を切った。
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