挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
1000文字小説 作者:折坂勇生
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

21/82

21・♂→♀=犯罪


 ついにやったぞ! 私は性転換の薬の開発に成功した。
 瞬くも間に、体つきはほっそりと柔らかくなって、胸が風船のように膨らみ、下半身に有るべき男の象徴を失って、正真正銘、紛れもない女の体になってしまうのだ。
 トーンの高い声は、誰が聞いても女に思うであろう。
 もちろん見た目も女だ。
 私は、この薬を犯罪に利用することにした。
 研究所の同期に、気に入らない男がいた。名は波多辺と言う。自意識の塊であり、他人を見下しており、人に不快感を与えるのを趣味とする最低な奴だ。
 根っからの悪党なのに、羨ましいほどに女にモテる。そして、本人は三度の飯よりも女好きときたものだ。
 泣いた女は数知れず。恋人を取られて泣いた男も数知れず。
 現に私も、妻を奪われて、泣いた男の一人だ。
 この薬によって、長年の復讐を果たすことができるのだ。
 私は早速、性転換の薬を飲んだ。
 白衣を着て、研究所の廊下を悠長に歩いていった。こっちにやってくる男たちの目線を感じた。だが何も言うこともなく、スタスタと通り過ぎていった。私が女だから意識したのだろう。好きなだけ注目すればいい。多くの人に見られることで、私のトリックは成立するのだ。
 私は自分のカードを使って、波多辺のいる研究室に入った。記録が残るので、私のカードで部屋に入ったと知れるが、警察にはカードを盗まれたと言えば済む話だ。
 部屋にいるのは、波多辺が一人だ。
 彼は気配に気付いて顔を上げた。私のことを見ると、眉を上げて、口を開こうとする。
 私はその隙を与えることなく、ナイフを取り出して、波多辺の胸に突き刺した。
 彼は悲鳴もなく、倒れていった。
 目的は達成した。
 波多辺は血を流して死んでいる。ざまあみろ。これで復讐を果たしたのだ。いい気味だった。
 私は部屋の隅に設置された防犯カメラを見た。殺人の映像が、ばっちりと記録されていることだろう。ニヤリとした。カメラがあるかぎり私は安全なのだから。
 これこそが私のトリックだ。
 誰が男が女に変身して殺人を犯したと想像するであろうか。そんなマンガのような話はあり得ない。私が女になって波多辺を殺したのだと告白してみたところで信じてはくれまい。
 警察は、波多辺が捨てた数多くの女の一人が犯人だと、防犯カメラと目撃者を頼りに女の行方を追うであろう。
 完全犯罪だ。
 私は笑みを浮かべて、殺人現場を後にした。
 しかし私は逮捕された。
 防犯カメラに映った女を、私が女装した姿だと勘違いされたからだった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ