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1000文字小説 作者:折坂勇生
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17・むかしむかしあるところに……

 老人の家に、武将の恰好をした若者が遊びにきた。カブトは桃の紋章が付いている。
「さて、おぬしの名はなんて言ったかのう?」
 老人はお茶を注いで、庭にある満開の桜を見つめながら言った。
「桃太郎です」
 若者は恥ずかしそうに答えた。
「なんでそんなヘンな名を付けられたのじゃ?」
「桃から生まれたからです」
「ハハハハハハ」
「どんぶらこ、どんぶらこと、川から流れてきた大きな桃から、おぎゃあと生まれてきました」
「ハハハハハハ」
「それだけで恥ずかしいのに、桃太郎と名付けられました。ネーミングセンスゼロです」
「ハハハハハハ」
「しかも、大きくなったら鬼退治です」
「ハハハハハハ」
「犬。キジ。サルが家来になりました」
「ハハハハハハ」
「桃太郎さん桃太郎さん、お腰に付けたきびだんご、一つ私に下さいなと歌ってきたんです」
「ハハハハハハ」
「よくよく考えたら、わたし動物と話しています」
「ハハハハハハ」
「しかも、犬、キジ、サルがきびだんごを食べるんですよ。喉をつっかえなかったのが奇跡です」
「ハハハハハハ」
「船で鬼ヶ島に行きました。鬼がいるから鬼ヶ島です。分かりやすいです」
「ハハハハハハ」
「鬼たちは、犬、キジ、サルを相手にして降参しました。弱いです。アレは誰だって倒せます」
「ハハハハハハ」
「財宝を奪い取りました。やってることが強盗です。情けなくなりました」
「ハハハハハハ」
「そんなに笑わないでください。わたしは自分の存在が恥ずかしくてならないのです」
「ハハハハハハ、すまん、すまん。わしだって似たようなものだよ」
「なんて名前ですか?」
「花咲爺だ」
「えっと、花咲爺さんと呼ばれているだけなのでは?」
「いやいや、生まれてからずっと、わしは花咲爺なのさ」
「え?」
「花咲が名字。爺が名でのう。赤ちゃんの時からわしはジジイよ」
「ハハハハハハ」
「しかも、名は体を表した。飼っていた犬が殺されてな。その灰をあそこにある枯れ木にまいたのさ」
「ハハハハハ、どうなりました?」
「花が咲いたっ! ハハハハハ」
「ハハハハハ、咲いちゃいましたか」
「花が咲いて花咲爺よ。わしは本当に花咲爺になってしまった、ハハハハハハハ」
「ハハハハハハ」
「しかし、上には上がいる。隣りのじいさんはもっと凄いぞ」
「ハハハハハハ、なんて名前です?」
「いじわる爺さんだっ」
「ハハハハハハ」
「性格もいじわるだったがあんな名だ。捻くれるに決まっとるわっ」
「ハハハハハハ」
「ハハハハハハ」
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