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1000文字小説 作者:折坂勇生
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10・プレゼント


 二十四歳と言ったのは嘘だった。
 二十八歳。
 年下だと思っていたのに、本当は私よりも年上の女性だった。
 しかも、バツイチで、「四歳になる息子がいる」と告白された時は、表に出ようとする動揺を押さえ込みながらも、「気にしない」と彼女に告げていた。
 過去に結婚しており、しかも子供までいる。
そんな大きな事実を隠してきた女と、付き合い続けるほど俺は寛大ではない。
 彼女とはひょんな成り行きから関係を持ち、交際するようになっただけだ。元から好きだった訳ではなかった。彼女が私のことをどう思っているのかは知らないが、私の方はいつ別れても構わない。交際する女がいないのは寂しいから、付き合っているだけのこと。
 他に付き合っている女もいないので、暫くは関係を続けてもいいだろう。たまには子持ちの女性も悪くはない。簡単に抱ける女がいたほうが、ムラムラしたときに便利だ。要は生きたダッチワイフとして使っていけばいい。
 捨てるのは簡単にできる。

「パパ。いらっしゃい」
 やっかいなのは、そのガキに懐かれたことだ。
 母親にそう言えと命じられたのか、会って二ヶ月ほどで、私のことを「お兄さん」から「パパ」に呼び名が変わった。
 可愛げのないガキだ。
 良く泣き叫び、鼻水を垂らし、食べ物を口にこぼし、部屋中を散らかし、聞き分けが悪く、まるで生きた台風だ。一緒に暮らしていたなら、虐待したくなったことだろう。
 毎日、顔を合わせないのが救いだった。
 デパートのおもちゃ売り場で買ったプレゼントをやると、「ありがとう」もなしに取って、包装をズタズタに破いていった。母親に叱られ、やっと「ありがとう」と言ってくれる。喜んではいるようだが、あげなきゃ良かったという気持ちになった。
 彼女が料理を作っている間、私はテレビを眺めていた。するとガキが肩に乗って、プレゼントしたおもちゃを手にしながら遊び始めた。殴りたい衝動を抑えながら、仕返しとしてプロレス技を盛大にかけてやった。
 ガキは痛がりながらも喜んでいた。
 母親は、そんな私たちを微笑ましく眺めている。顔は「もうすっかり家族ね」とでも言っているかのようだ。
 ふざけんな。
「プレゼントのお礼にあげる」
 帰り際に、ガキは一枚の画用紙を渡してきた。
 へたくそな絵だ。
 母親とガキ、そして私を描いたらしい。
 三人は仲良く手をつないでいた。

 家に帰ってきた私は、ガキの絵を破いてゴミ箱に捨てることにした。
 しかし、破る前に思い直して、部屋に飾った。
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