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1000文字小説 作者:折坂勇生
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1・現代の吸血鬼

 ねえ、吸血鬼の事覚えてる?
 ほら、5年ぐらい前かな。吸血鬼が実在したって、話題になったことあったじゃない。
 思い出した? そいつの事だよ。
 あいつまだ居るんだよ。まだ献血している。彼は吸血鬼だから、人間の血を、食事にしなくちゃならない。
 人間の食べ物は、彼の体は受け付けない。当然、トマトジュースなんてNG。動物の血もダメなんだ。
 生きた人間の血をザクっと直接飲まなくてはいけないんだ。
「お願いします、血を飲ませてください」
 なんて頼まれて、「わかりました」って、体をささげるヤツなんていないよね。
 しょうがないから、吸血鬼は人間を襲うことで生き延びてきたんだ。
 血を吸われたからって、死ぬことはないし、吸血鬼にもならないけど、やっていることは犯罪だ。
 ある日、彼は捕まってしまった。
 実在した吸血鬼は大きなニュースになった。人間の血がなければ生きていけない彼の事情を知り、世間は同情した。
 そして、吸血鬼専用の献血ルームを設置することにしたんだ。
 自分の血が吸われるんだ。始めは怖いけど、痛みはないし、段々と脳がとろけるような快感がやってくる。
 美少女なら歓迎するけど、残念ながら吸血鬼は男性であって、薄い髪をした腹のでたブサイクなおじさんだ。
 気持ち良くなっても嬉しくない。
 ルームの中は監視人がいるので、必要以上に血を吸われる事は無いし、鋭い牙で吸われた時、肩に跡が残るけれど、一時間すれば直ぐに消えてしまう。
 話題になった時は、沢山の人が吸血鬼に吸ってもらおうと、長蛇の列を作っていた。あまりの盛況ぶりに完全予約制になって、半年待ちとなるほどの大人気だった。
 ピークのときの吸血鬼は丸々と太っていたっけ。
 それでね最近、吸血鬼の献血ルームを見つけたんだよ。
 懐かしさで中に入ったら、やせ細った吸血鬼がいた。
 ブームが去ったからだろうね。話題にならず、忘れられて、お客さんが来なくなったんだ。
 僕の顔を見るなり、吸血鬼は「よくきたね」と弱々しい声で歓迎して「ありがとう」と僕の血を大切そうに吸っていった。
 監視人が「もう終わりだ」と言った時、吸血鬼は悲しい顔をするけど、「また来てね」とニッコリと微笑んだ。
 おじさんに微笑まれても嬉しくないけど、「うん」と頷いて、また来る事を約束しちゃった。
 だって可哀想なんだもの。
 今にも死にそうな顔をしていて、次に来たとき、生きているのか心配になるぐらいだ。
 しみじみ思うよ、僕が吸血鬼で無くて良かったって。
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