遅くなりました。本当にすいません。
これでも急いで文章作成しましたので誤字やおかしい文があると思います。
できれば報告してほしいと思っています
8話 フーケ
sideフーケ
しめた。
私のゴーレムでも壊せなかった壁をあんな小娘がひびを入れちまったのは癪だけど、絶好のチャンスだ。
1番の危険人物である使い魔は、なぜだかひもと鎖でぐるぐるに巻かれており、どう見たって私に危害を与えることはできない。あとはあいつらがひもを解くのを邪魔しながら逃げるだけだ。
まさか『破壊の杖』を盗むのがこんなに簡単に済んじゃうなんて考えもしなかった。
ちょろいもんだね。
これであの子達の生活が少しでも良くなればいいんだけど…
「ははは。トリステインの学生たちよ、『破壊の杖』奪取の手助け助かったぞ。感謝する」
念には念を入れて、低い声を出して男のフリをする。
普通ならしゃべるなんてバカみたいなことはしないんだけど、あの使い魔がいるから今回は特別だ。
あいつは、なんか怖いんだ。
何もかもを見透かされているような気がして…この前だって普通の平民と同じように、魔法を使えないくせして貴族のガキに勝ってしまった。
私はあの決闘が始まったとき、絶対に負けると思っていた。
でもその予想に反して、あの使い魔は勝った。そのせいもあって、私は全くといっていいほどあいつの本当の実力を計ることが出来ていない。
もっと強いのか、それともあれがあの使い魔の精一杯なのか…
だからこんなセコイ小細工でも、しているのとしてないのでは心の余裕は大きく違ってくる。
使い魔と小娘たちの間に土の山を作る。これでもし小娘たちが使い魔のところに行こうとしても、その隙に楽々逃げられる。
「ちょっと待ちなさいよ!」
学園始まって以来の落ちこぼれ、そのくせ私が傷ひとつつけられなかった壁にひびを入れ、またあの奇妙な使い魔を召還した小娘が叫んでくる。
「なにか用かな、お嬢さん?私は忙しくてね、そろそろ帰らなければいけないんだよ」
「あんた、『土くれのフーケ』とかいう怪盗でしょ!だったらみすみす見逃すはずないじゃない!」
「おや、私の名をご存知か。そうかそうか、私も有名になったものだ」
「黙りなさい。行くわよ、ファイア!」
「ルイズだけにいいとこ見せられないわ。ファイヤーボール」
「エアハンマー」
しけた爆発音と同時にゴーレムの体に拳大の小さな穴ができる。
なんだ、やっぱりあれはまぐれだったのか。まぁ、そんなまぐれでもこのフーケ様ですら傷ひとつつけられなかった壁にひびを入れちまうなんてたいしたもんさね。
でも、それだけじゃ私のゴーレムはやられないよ。こいつはいつだって数多くのメイジたちを打ち破ってきた猛者。たかが学園の生徒3人が力を合わせたからって倒されちまうなんてこと、絶対ありえない。
「悪いが君たちの相手をするだけの時間がなくてね、そろそろ帰らせてもらうよ」
「待ちなさい!」
「うるさいな君たちは」
本当にうるさく思う。いつこの音を聞いて教師たちが来るかわからないから、早くこの場から立ち去らなくちゃいけないってのに、邪魔だね。
ゴーレムに命令をする。呪文を唱えたわけではないが、こいつはちゃんと私の命令どおりの行動をする。
ゴーレムの手が持ち上がり、その手のひらが小娘たちに向けられる。
「吹き飛べ!!」
手のひらの中心から巨大な岩を弾丸のように飛ばす。
土属性を操るメイジにとって基本中の基本。無駄に形を整えたりする必要のない、ただ大きな塊を作って飛ばすという、いたってシンプルな魔法。
「…風よ…」
青髪が風の盾を作る。
へぇー。あの年にしてはずいぶんと厚い盾を作れるものだ。
だが、たとえあれほどの盾でもこっちは巨大な岩。この超重量の岩をちょこっと軌道を変えただけではどうにもならない。
「きゃっ!」
軌道をずらされたため直撃にはならなかったが、小娘たちの目の前に落ちた岩は、地面ごと3人を吹っ飛ばした。
今のうちに逃げるとしよう。
あの青い髪と赤い髪のやつらは吹き飛ばされながらもまだこちらに杖と視線を向け続けている。服は泥だらけになり、砂埃で視界が悪い状況で尚、意識は私に向けられている。
ほんとに学園の生徒とは考えられないくらい優秀なやつらだったけど、今回は私の勝ち。
あとは目の前の塀を登って逃げるだけ。あいつらの足じゃ到底追いつけるはずがない。
「さらばだ。なかなか楽しめたよ」
あの使い魔の主人である小娘が何か叫んでいるが、私には返事をするつもりはすでにない。
今回の盗みも見事成功。少しハプニングはあったが、これぐらいで目的を達成できたというのなら、安いもんだね。
・・・・・・
sideエミヤ
フーケと呼ばれていた泥棒が逃げていく。私には何もできない。
ひもで巻かれているだけなら力任せに引きちぎれたのだが、さすがに鎖はな。
これもすべてルイズたちのせいである。あとでお仕置きが必要だな。
しかしこの学園のなにが盗まれても私には全くもって無関係。
偶然そこにいただけ。それ以上でも以下でもない。
それにしても、なかなかに強力な魔法使いだった。
ゴーレムの大きさはあのバーサーカーさえ凌駕している。速さは段違いに遅いとはいっても、大きいということはそれだけで十分な武器になる。
先日のギーシュとは段違いの実力であることは間違いない。
「あーもー、エミヤ!あんたなにやってたのよ!逃げられちゃったじゃない!!」
ルイズが怒鳴りながら私の元まで来る。私の元まで来ると巻いていた鎖とひもを解く。
体が自由になった瞬間、げんこつを落とす。
ルイズは小さく、キュ、と呻いた。
「なにを言っている。君が私を縛りさえしなければ私も参戦できたのだぞ。今回はマスターの責任だ」
「うぅ…」
「やーい、怒られたー」
1つため息をつき、キュルケにもげんこつを落とす。
「いったーい。なにすんのよ、エミヤ」
「君にも責任があるだろう」
「…うぅ…」
ルイズはキュルケの様子を見て、ププ、と笑う。
それに怒ったキュルケも反応し、ルイズを挑発する。
もう一発いっとくか?
本当に仲が良いのか、悪いのか…
・・・・・・
翌日
思っていた通りに慌ただしく教師たちが動いている。
『破壊の杖』というものがどれだけ貴重なのかは知らないが、仮にも宝物庫に入れられるほどの一品だ。少なくとも保存するだけの価値があると認められたもの、ということだ。
そんな喧騒の中、私とキュルケ、タバサは気にせずに朝食をとっている。
「全く、騒々しい連中だ」
「仕方ないじゃない。あの破壊の杖が盗まれたのよ?このくらいの騒ぎは普通よ」
「秘宝」
「・・・」
「それも頷ける。頷けるのだが、それにしても騒がしい。もう少しほかの人のことを考えてほしいものだ。私たちのように静かに朝食をとっている者もいるというのに…
まぁいい。それより、今日の朝食はどうだ?」
「いつも通りおいしいわよ」
「美味」
「・・・」
「そうかね?私としては少し味付けを薄くしてしまったと思うのだが?」
「女の子にはこれくらいでちょーどいーのよ。前にも言ったでしょう?ダイエットしなきゃいけないって」
「もう少し濃くして欲しい」
「・・・」
「ふむふむ。キュルケはこれぐらいでよくて、タバサは濃ゆめだな。
よし。昼食を楽しみにしていてくれ。君たちの満足できる食事を作ろう」
「ええ、楽しみにしてるわ」
「(コクッ)」
「・・・」
「さて、今日はデザートにも挑戦してみたのだが、食べるかね?」
「本当?でもどうしようかしら。今日も結構食べちゃったからこれ以上食べる余裕はないし…
ああん、もう。なんで最初から言ってくれなかったのよ。そうしたらちゃんと計算して食べてたのに」
「食べたい」
「・・・」
「キュルケもタバサも食べるか。すぐ持ってくるから待っているといい。
………それで、ルイズも食べるかね」
先程から、無言、不機嫌、仁王立ち、で後ろに立っているルイズにも尋ねる。
ルイズは明らかに怒り一色に染まった目を向けながら、ようやく口を開く。
「あんたたち、今がどんな状況か分かってんでしょうねぇ?」
「どんな状況といわれてもな、朝だが」
「そうね、いつもよりうるさいけど」
「…(コクッ)」
「っっちっがうでしょーー!!!!!」
轟音。
今までもルイズの出す声の大きさに驚いていたが、今回のも過去最高クラスの大きさだ。
「……うるさいぞルイズ。食事中はもう少し小さな声で話したほうがいい」
「だから! 昨日! 私たちの! 目の前で! 破壊の杖が! 盗まれちゃってんのよ!!
私たちもあそこにいたんだから、早くフーケが捕まるように協力しなくちゃいけないでしょ!!!」
「まぁ、いいからそこで座って、私の作ったデザートを待っていろ。
昨夜のことは朝食後に話そう。今はとりあえず食事をとって一日のエネルギーを蓄えたほうがいい」
ルイズが納得していないようにして座る。
「そうよルイズ。あなたの気持ちは分からなくもないけど、そんなに焦ってもいい結果にはならないわ。
とりあえずエミヤの作ってくれたデザートを楽しみましょう?」
「……わかったわよ」
ルイズがしぶしぶではあるが納得したことを確認すると席を立ち、デザートを取りにいく。
デザートはシュークリーム。久しぶりのデザートなのだが、なかなかに手のかかるものを選んだ。
シュー皮は基本に忠実に作り、フワフワさっくり。隠し味に塩を一つまみ入れている。カスタードクリームには新鮮な卵黄をふんだんに、そして牛乳と生クリームの両方を使い、これまたフワフワにできた。
手早くシュー皮を半分に切り、クリームを入れる。
ちょうど10個できているので、2つをマルトーとシエスタに、残りは一皿に2個ずつ乗せて持っていく。
デザートをテーブルの上に置くと、3人は驚いていた。
「なにこれ、初めて見るわ」
「すごい」
「どうした?まさかシュークリームを見たことがないのか?」
「ええ。そうだけど、これって、しゅーくりーむ?っていうの?」
この世界ではシュークリームは作られていないらしい。
「まぁ食べてみるがいい。一応自信作のつもりなんだが、なにせ久しぶりのデザートだ。間違った調理法になっているかもしれん」
さぁ、私の作ったデザートは女性が喜ぶほどのものになっているのか。
味見はしたし、我ながらおいしいとは思ったのだが、やはりデザートは男の私よりも女性の意見のほうがいい。いつまでたっても甘いものに関して、私では女性に勝つことはできないだろう。
ムッ。まずいな、そう思うと柄にもなく緊張してきた。
「そうなの?でも今食べた中であんたの料理がおいしくなかったことなんてないし、とりあえず、
……………
っ!なによこれ、おいしいじゃない!」
「ええ、すっごくおいしいわ。私このお菓子大好き」
「(コクコク)」
予想以上にいい反応だ。
よかった。なんとか喜んでもらえるだけの出来になっていたのか。
「気に入ってくれたか。よかったら、私の分も食べるかね?」
「いいの?」
「ああ。調理中に何度か味見もしていたし、君たちがおいしそうに食べてくれるのを見れるだけで、わたしは十分だ」
「そう?それなら、いただきましょう、タバサ」
「(コクッ)」
ふむ、キュルケとタバサか。
まぁタバサに関しては昨日の恩もあるし、ちょうどよかった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
そこに割り込む声。ルイズだ。
「なによ、ルイズ。文句でもあるの?」
「あるにきまってるでしょ?!
なんでご主人様の私がエミヤの分のしゅーくりーむもらえないのよ!」
「そんなの決まってるじゃない。私たちはあんたよりも前から一緒にご飯食べてるのよ?それならあんたよりもらってもいい資格はあるはずよ」
「理由になってないわ。それにね、さっきも言ったけど、私はこいつのご主人様なのよ。私のほうが資格があるに決まっているわ」
全く、この二人はホントに…
「じゃんけんすれば良いだろう。それなら公平だ」
「くっ、だから私はあんたの、「あれ~もしかしてルイズったら私たちに勝つ自信がないのかしら?だからこんなに必死になっちゃって、フフ、情けないわねー」いいわ受けてたってやろうじゃない!!」
ルイズもこんなレベルの低い挑発に引っかかるとは、ダメだな。
「「じゃーんけーん…」」
結局、グー、パー、パーでルイズが負けていた。
~~~~~~
さて、急に場面は飛んでいるが、今ここは学園長室。
先ほど、食事を終えるとほぼ同時に学園の教師に呼ばれ、ここにいる。
「今日君たち集まってもらったほかでもない。昨夜起きたこと、知っておるだろう?」
「はい。昨日私たちの目の前で土くれのフーケから破壊の杖を盗まれてしまいました」
「そうじゃ。で、じゃの。フーケについての情報を分かる範囲で良いから教えてもらえんかのう?」
「分かる範囲って言われても、暗くてよく見えなかったからわかったのって黒いローブ着た男ってことだけかしらね?」
なんとっ。部屋にいる学園の教師たちがざわめき始める。
ルイズから聞いた話によると『土くれのフーケ』とは神出鬼没の怪盗であるらしい。現在フーケについての情報は何一つとして手に入ってなく、唯一分かっていることといえば、〝少なく見積もっても〟トライアングル以上のメイジであるということだけだという。
今まで煮え湯ばかり飲まされてきたフーケが〝男〟だった、という今後の捜査において重要な手がかりになる情報が入ったのだから、それなりに気になっても仕方がないだろう。
だが私は、フーケが男だ、とは断定できないと思っている。
終始ローブをかぶっていたため姿を確認することはできなかったし、それに男にしては体が細すぎた。だからといってフーケが女性だったともいえない。世の中には女性と間違ってしまうくらい線が細い男もいる。
つまり性別を判断できるだけの情報はまだ手に入ってないということだ。
「うむ、有益な情報じゃの。
それで、フーケが昨日行った犯行について教えてくれんかの」
「はい。フーケはゴーレムを使って宝物庫の壁を破壊し進入、破壊の杖を盗るとそのままゴーレムを使って逃げようとしました。なので私たちは3人がかりで戦闘を試みましたが、全く歯が立たずに、そのまま塀を乗り越えて逃げられてしまいました。
その後に、私たちも外に出てフーケの姿を探しましたが、あったのはゴーレムに使われたと思われる土の山だけでした」
「そうか。それにしてもフーケめ、この魔法学園に単身で挑むとはの、なかなかに大胆な行動する。
しかし今の話を聞く限りじゃフーケもあまり遠くには行けてないようじゃの。
ミス・ロングビルー。ん?おらんのか?おーいロングビル、どこにおるんじゃー」
「オールド・オスマン、ここにおります」
この部屋に入ってくる一人の若い女性。この女性がオスマンの言っているミス・ロングビルと言う人間なのだろう。
「おお、どうしたのじゃ。こんな一大事にもかかわらず席を外すなんて君らしくないぞ」
「申し訳ありません。私なりにフーケの調査をしておりました」
「調査?」
「はい。今朝方起きてみたら学園中が大騒ぎでしたので詳しい話を聞こうとオールド・オスマンを探していました。すると途中で、宝物庫の壁に大穴があいているのを見つけましたので、何事かと宝物庫に入ってみると、壁に書かれているフーケのサインを見つけました。今国中の貴族が恐れている大怪盗ということが分かったら、いてもたってもいられず急いで町のほうまで調査に出て行きました」
「そうか、早い仕事じゃ」
「そ、それで、その結果を教えてください」
コルベールがあわてた様子で問う。
「はい。今現在においてのフーケの居場所が分かりました」
「な、なんですと!」
コールベールが驚いている。
「ほう、そこまで。その情報はいったいどこで手に入れたんじゃ?」
「近所の農民です。近くの森にある廃屋に入っていった黒いローブを着た男を見たと言っておりました。
ここからは私の推測ですが、おそらくその男がフーケであると思われます」
「黒いローブを着た男。そいつです。そいつがフーケで間違いありません!」
ルイズが叫ぶ。
確かに先ほどキュルケが言っていた特徴と同じだ。
ルイズの言葉にオスマンは一度頷くと、鋭い目をしてロングビルに尋ねる。
「その廃屋はここから近いのかね?」
「はい。徒歩で半日、馬で4時間ほどです」
「わかった。
我々は今からフーケを捕まえる。我々が、じゃ。王室には話さんし、頼るつもりはない。我々にかかってきた火の粉は我々の手で振り払おうではないか。
貴族として生まれ、この由緒正しい学園の教師になることが出来た優秀な君たちなら必ずやフーケを捕まえられると信じておるぞ。
捜索隊に入るのはすべて個人の意志によって決めさせてもらう。相手が一人とはいえ、多人数で動けば勘付かれてしまう可能性がある。そのため捜索隊に入るのは早いもん勝ちじゃ。
さぁ、我と思う者は杖を掲げよ。フーケの魔の手からこの国を守ろうと思う者は高らかに己が名を謳うがいい。自己の危険を顧みずフーケと戦おうとする者はその勇を誇りにして、堂々と胸を張るがいい。
さあ、その杖を掲げよ!」
シーン………
誰一人として杖を挙げるものが出てこない。
気まずい空気が流れるオスマンが、コホン、とひとつせきをする。
「誰もおらんのか?
はぁ、嘆かわしいのう。わしがもっと若かったらすぐさま掲げておっただろうに」
オスマンが何度も深いため息をこぼすが、それでも誰も手を挙げようとはしない。
…もういいだろう。もうこれ以上ここにいる理由がない。一応、フーケの居場所も見つかったと言っているし、後はここにいる人間たちが何とかするだろう。
それにしても……クク、やはり女性は怖い。さすがは〝生まれながらの女優〟といったところか。
早く教室に行こう、そうルイズに耳打ちしようとしたとき、ルイズが勢いよくその手の中に握られている杖を掲げた。
「はい!私に、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールにフーケを捕まえさせてください!!」
部屋中に驚愕が広がっていく。かくいう私自身驚いてしまった。
ルイズは解っているのだろうか?
ここにいる連中がなぜ、その杖を掲げないのか。それはそれだけ危険だということだ。
中には、関係ないこと、なんで自分が他人の失態の尻拭いを、と考えている者もいるだろうが、多数がフーケの実力と自身の力の差を絶対の差と考えているのだ。それだけここにいる人間は、魔法の腕に関してのみ、フーケのことを認めているということ。
「……なにをバカなことを。いいですからここは私たちに任せなさい」
「だって、誰もしようとしないじゃないですか。だったら私が、絶対にフーケを捕まえて見せます!」
「やめておいたほうがいい、ルイズ。昨日見た限りでの判断だが、君の実力、君が使える魔法で打倒できる相手じゃない。
今回は自分の実力不足だったと思って手を下ろしておいたほうが懸命だ」
少し勢いに身を任せぎみに見えるため、ルイズをたしなめる。
「あんたは黙っときなさい!私は絶対にフーケを捕まえてやるんだから!」
話も聞かない状態だな。
なにをむきになっているのか。
「ふーん、ルイズがやるって言うんなら私もやらせてもらおうかしら」
なにを思ったのかキュルケも杖を掲げる。
「なっ!ツェルプストー、君まで。いいかい、君たちはこの学院の生徒だ。君たちを危険にさらすことは出来ないんだよ」
「別にそんなこと関係ないわよ。私はルイズにだけは負けたくないの。ここで手を挙げなかったら、私が臆病者みたいに思われるかもしれないじゃない」
ふふふ、と不敵に笑うキュルケには恐怖など、そういった負の感情を読み取ることが出来ない。
キュルケが杖を掲げたの見ると、タバサも杖を掲げる。
「タバサはいいのよ」
キュルケがそう言うと、タバサは首を短く振り、ジー、とキュルケの目を見つめる。
「心配」
タバサはそれだけ言うとまた正面を向く。
キュルケも、感動したような面持ちでタバサを見ると、そのまま正面を向いた。
「いいじゃろう。君たちはフーケと戦ったと言っておることじゃし、今度こそこの国をフーケから救ってくれ」
「が、学院長、正気なのですか?この子達を生徒なのですよ。だというのに……」
「それなら君がやってくれるのかね?ミセス・シュヴルーズ」
「……いえ…私は、その、今日はあまり体調がよくないので」
「まぁ、安心しておきなさい。そこにいるミス・タバサはその年でシュヴァリエの称号を持つに至った立派な騎士じゃよ」
学園長と私を除いて、この部屋にいる全員が驚く。
それだけその〝シュヴァリエ〟という称号はすごいものであるのだろうか。
「それにミス・ツェルプストーも、ゲルマニアの中でも屈指の軍人を輩出する家系で、彼女自身の扱う魔法の力はわしより君たち教師のほうがよく知っておるじゃろう?」
その言葉に気を良くしたのか、キュルケは得意げに胸を張り、髪をかきあげた。
続いてルイズも無いなりに大きく胸を張った。
次は自分が賞賛の言葉をかけられる番だと思っているのだろう。しかしオスマンは明らかに焦りながら頭を捻っている。
「ぇーーっとじゃな、ミス・ヴァリエールも優秀なメイジを数多く輩出する家系じゃろう?それにじゃな、その、彼女も、将来 は 優秀なメイジのはずじゃ?」
なぜそこで疑問系なのだろう?
それにしてもそこまでルイズには褒める点がないのだろうか。
ルイズもほかの二人と違うことに気づいたのか怪訝な顔を作っている。
「…そ、そうじゃ。それにミス・ヴァリエールの使い魔はこの間、平民でありながらもグラモン元帥の息子のギーシュ・ド・グラモンとの決闘で勝ったという話を聞いておる」
オスマンがそう言うと、コルベールはなにかに気づいたような顔を作った。
あまりにも不自然だったために、コルベールのほうを見る。
コルベールは焦りながらも取り繕ったような顔で言う。
「そ、そうですね、学園長。たしかにグラモン君を倒したほどですから、そ、相当頼りになりますよ」
なにかを隠している?私にか?
…もしかしたらこの二人は私に関してなにかしらの情報を持っているかもしれない。
それに決闘のときに輝いたこの左手のルーン。ルイズに聞いてみたが、「そんな能力なんて聞いたこともない」、と結局は分からずじまいだった。
ちょうどいいかもしれないな。
「少しいいか?」
「ん?」
学園長に話しかける。瞬間、周囲に緊張が走る。
もしかしなくてもここにいる人間の内、数人があの決闘の場にいたのだろうな。かなり抑えて戦ったつもりだが、私は平民という身分のはず。規格外には違いない。
「わしに何か用でもあるのか?」
「用ではなく、頼みだな。
私は私のマスターのおかげで、不本意ながらフーケ捜索とやらに参加しなければならない。それでだな、それが終わったら報酬を貰い受けたいのだが」
「報酬?」
「別に金銭や高価なものを欲しいと言っているのではない。ただ私の質問に答える、これだけだ」
「うむ、そのくらいでやってくれると言うのなら、喜んで受けようではないか」
よかった。この学院長は話が分かる。
別に断られていようとマスターであるルイズが行くというのなら、ついて行かなければならないというのに学院長はあえてその話に乗った。あっちとしても何か話したいことがあるのかもしれない。
「よし。これで話はまとまった。ミス・ロングビル、彼らをそのフーケが見つかったところまで道案内を務めてくれんかの?」
「はい。もとよりそのつもりです」
「うむ。それじゃあ君たち、くれぐれも怪我はせんようにな。もし危険な目にあったら、破壊の杖を捨ててでもよい、 絶対に無事で帰ってきておくれ 」
その学院長然とした姿は部屋中の人間の気が引き締まる。
「「「はい!」」」
その声にしっかりと、決意を持って頷く3人の少女。
「さぁ出発じゃ。ここでもたもたしとったらフーケに逃げられてしまう。がんばるんじゃぞー」
これが初めてのルイズとデルフリンガーとの共闘になるかもしれない。
格好悪いところを見られないよう頑張らないとな。
正直おかしなところが多かったと思いますので、見つけ次第修正を入れていきたいと思っています。
・・・とりあえず修正入れてみました。
現在この作品以外も書きはじめようと思っておりますので、次の話はいつになるか分かりません。
それでも待っていただけたら幸いです。
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