ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  ゼロと弓兵 作者:ロージ
プロローグ

「答えは得た―――大丈夫だよ遠坂」

そう、答えは得た。



 『誰もが幸せであって欲しい』

そんな叶うはずのない願いを追いかけていた。
全ての人間を救うことなんてできない。
そんなことは、守護者となった彼が一番よくわかっていた。
だから彼は決して望んではいけない願いを持ってしまった。

――――――自身の消滅。過去の、守護者になる前の自分を殺すこと――――――

だが、そんな有りえてはいけない願いを欲した彼を誰が攻められようか?
彼はすべてを犠牲にしてまで理想を追ったのだ。
家族、友人、後輩、義姉、そして―――いつも見方をしてくれた姉。
全て失ってまで追い続けた。
それでも、その理想にまで裏切られた彼には、絶望以外何もありはしなかった。

彼はついにそのチャンスを得た。
舞台はかつて自分の生まれ育った町。自分の人生の転機となったある戦争。
彼は動いた。一度経験したこととはいえ、もうそのときの記憶は薄れていてほとんど思い出すことのできない中、手探り状態で必死にチャンスを待ち続けた。
誰にも邪魔されるわけには行かない。他のサーヴァントはもちろん、自分のマスター、そして“彼女”にさえも。

そうしてついにその時は来た。
アインツベルンの城。邪魔者は誰一人としていない。最も警戒していた“彼女”さえ手を出さないこと誓った。
何の文句もない。そもそもここまで自分の思い描いた、長い間望んでいた状況に文句などつけられるわけがない。
互いに剣を握る。
彼は全力で戦った。同じ剣、同じ構え、同じ戦い方。しかし、そのすべてにおいて、彼は過去の自分自身より優れている。
ここまできて殺せなかったら次の機会がくることがないかもしれないのだ。手を抜くなどとは一切考えない、隙があれば切り殺す。圧倒的なまでの差が二人の間にはあり、彼が負けることなど、ありえないことだった。

ならば―――彼の胸を突き破る短剣は、いったいなんだというのか。

あこがれていた父から譲り受けた思い、理想。
たとえ叶うはずのない夢物語だとしても、その理想は

「決して、まちがいなんかじゃないんだから」

そうして彼は敗れた。
ボロボロの体でも過去の自分は教えてくれる。長年捜し求めていた答えを教えてくれるのだ。


―自分の歩んできた道は

――自分が信じてきたものは

―――決して、間違ってなんていなかったのだから




「俺もこれから頑張っていくから」

紅き弓兵は満足そうに微笑むと、二度目の聖杯戦争の舞台から降りていった。



・・・・・・

英霊の座に戻っていく。
座に戻れば今回のことは【記憶】から【記録】になる。
ただの記録となった今回の記憶は、本体のオレにはなんら影響を及ぼさないだろう。
それまでと同じように理想に絶望したままにただかつての自分を殺すことを願うだろう。
それでも、俺は覚えている。
あの愚直に前だけを見ている瞳を、傷ついてもあきらめないその姿を、

そして、あの叫びを…

だからこれからも戦える。
これからも俺は“正義の味方”としてやっていけるのだ。
そんなことを考えているとき
突然、体が引かれる感覚がした。

「むっ。召喚か?」

本来座に戻る途中に召喚などされるはずがない。
だが実際に目の前に見える光る鏡のようなものに体が引っ張られている。

「強引な召喚のようだが。ふむ、なかなか面白そうだ」

紅き弓兵はそう言って笑い、鏡の中に入っていった。



・・・・・・

意識が戻る。
ゆっくりと目を開き、初めに目に入ったものは

「あんた、誰?」

不機嫌そうにこちらを睨む少女の顔だった。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。