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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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6-15.ムーノ男爵領の人々(6)

※2015/1/18 誤字修正しました。
 サトゥーです。洋ゲーを初めてやった時、人の命が軽く扱われている事に驚いたものです。カルチャーギャップというにはかわいい話ですが、異世界での軽さは予想以上でした。





 盗賊達は、ロープや投網で騎士達の足を止めてから襲い掛かったようだ。オレ達が、彼らを目視できる場所まで来たときには、投網に絡め取られた騎士達が、網の中から必死に抵抗している姿が見えた。剣で切れそうなモノだが、素人考えなんだろうか?

 盗賊達も必死で攻撃しているが、騎士達の全身甲冑の守りが堅いせいで、なかなか攻撃が通らないようだ。

 盗賊達の射手は3人しかいないので、オレとポチで手分けして樹上から射落とす。どうしていつも樹上にいるんだろう。不思議だ。

 オレ達に気がついた盗賊達が向かってくるが、200メートル近くあるので、接近してくるまでに半分に減らせた。ミーアの刺激の霧(マスタード・ミスト)を吸い込んで、咳き込んだ盗賊達を、獣娘達が容赦なく無力化していく。一応、誰も死んでいないようだ。
 御者をルルに任せ、ナナに(シールド)を張って守ってもらう。

 オレも(シールド)を張って、獣娘3人と一緒に戦場に向かった。
 獣娘達が盗賊の相手をしている間に、騎士を拘束している網を短剣で切っていく。

「良くやった商人! 盗賊どもめ、ムーノ男爵の正騎士エラル様の剛剣の餌食となれ!」
 もう一人の騎士さんは無言で目礼してくれた後、騎士エラルの後に続いて盗賊達を血祭りに上げている。この2人はレベル9しか無いが、装備と戦闘技術の違いもあって、その殺戮は一方的だ。リザ達が殺さないように無力化して地面に転がしておいた盗賊も、きっちり止めを刺している。本当に容赦ないな。

「おおと、騎士の旦那、そこまでだ」

 盗賊の首領らしきヒゲダルマが森から出てきた。側にいる手下が、旅装の女性を人質にしている。女性はロープでグルグル巻きにされている。

「ふん、人質か」

 なんだ、危機察知がすごく反応している。どこかに伏兵か? 周囲に目を配る。

 違う。

 騎士エラルの方からだ。

 人質の女性ごと後ろの男を刺そうとする騎士エラルの剣を、オレが投擲した短剣が弾いた。

 ふう、間に合った。

 オレは、女性の無事を確認しつつ、後ろから突き出される盗賊の剣を避ける。騎士エラルからは、位置的に攻撃した相手が、オレか盗賊か判断できなかったようだ。

 そこにヒゲダルマから罵声が上がる。

「ちぃ、人質も関係なしか、それでも騎士かよ」

 騎士よりも、ヒゲダルマの盗賊の方がヒューマニズムに溢れてるとは……。
 斬りかかる騎士エラルの剣を、ヒゲダルマの斧が受け流す。

 もう一人の騎士が人質を抑えていた男を背後から斬る。この世界って騎士道はないのか?

「トルマ!」

 その悲鳴は人質にされている女性から上がった。なんだ? 押さえていた方も盗賊じゃなかったのか。男の名前を叫ぶ声を聞いて、人質の女性も盗賊だと判断したのか無口騎士の剣が女性を襲う。(シールド)を頼りに間に割り込む。

「騎士様、相手を間違えてます。この人は盗賊じゃありません」

 オレの言葉が信用されたのかは判らないが、無口騎士は、この女性を殺さないでおいてくれた。

 騎士エラルと打ち合っていたヒゲダルマも、無口騎士の加勢が入ると瞬く間に討ち取られた。ヒゲダルマが負けたのを見て盗賊達が逃げ出そうとしたが、ポチやタマの投石で足をやられて捕縛されてしまった。

「この卑怯者め」
「ふん、痴れ者め。誉れ高い騎士が、盗賊ごときを掃除するのに対等の礼を尽くすとでも思ったかっ。まったく、いくら退治しても湧いてきおって」

 盗賊を始末し終わった騎士達は、馬車前にロープで括ってあった盗賊まで撫で斬りにして、止めを刺していく。過剰な殺戮にしか見えない。騎士達に抗議しようとしたが、いつの間にか側まで来ていたアリサに止められた。

「ふん、盗賊など生かしておくだけ食料の無駄だ。お前たちの助力には感謝してやる。ありがたく思え。盗賊共の装備もくれてやるから、商いに使うのだな」

 とても感謝しているとは思えない言葉を残して、騎士達は去って行った。

 ちなみにトルマ氏は生きている。即死していなかったので、体力回復の魔法薬(ポーション)を飲ませたら、見る見る顔色が戻っていった。何度見ても、この即効性が気持ち悪い。まだ気を失っているが、呼吸は安定している。

 ハユナさん――人質になっていた女性の名前だ――の話だと森の中の盗賊のアジトに彼女の赤ん坊がいるらしい。その子を人質に取られて逆らえなかったそうだ。

 アジトまで一緒に来るというハユナさんを、アリサの魔法で眠らせる。





 オレとミーア、アリサの3人で盗賊のアジトを襲撃する事になった。

 アジトにはオレ一人で行こうとしたんだが、アリサがどうしても行くと言って聞かなかったのと、血の匂いで気分を悪くしたミーアもそれに便乗して来たので、一緒に行く事になってしまった。

 アジトは、街道から、ほんの100メートルほどの場所にある。アリサの魔法で屋外から盗賊を眠らせた後、悠々とハユナさんの赤ん坊を助け出した。

「よ~し、赤ん坊救出ミッション・クリア!」
「ん」

 アリサが、ちょいちょいと呼ぶので、赤ん坊をミーアに預けてそちらに行く。

「あの赤ん坊の持ってるギフト。かなりレアよ」

 赤ん坊には「神託」という変わったスキルがある。

「どういうスキルなんだ」
「神殿の神官や巫女さんが沢山集まって、何時間も掛けてできる神託と同じ効果があるの」
「便利だな」
「ただし、無闇に使いすぎると無くなっちゃうそうだから、濫用はできないみたい」

 神さまホットチャンネルって感じかな。なんとなく、会社携帯を持たされてる営業マンをイメージしてしまった。

「さて、赤ん坊は兎も角、この盗賊どうするの?」
「武器防具の類を回収して、放置でいいだろう。仲間も全滅したし盗賊も廃業するんじゃないか?」

 アジトには、盗賊が3人ほど居た。荒事に向かないような華奢な容姿だったので、始めは捕虜なのかと思ったが、所属がさっきのヒゲダルマと同じ盗賊団だったので一味に間違いないだろう。

「相変わらず、甘々ね。まぁ、いいわ。それにしても、華奢な男の人ばっかりね。さっきのヒゲダルマの愛人なのかしらね? 何となくBLっぽい感じがするから許すわ」

 盗賊達の嗜好や貞操はどうでもいいので、彼らの装備品を回収するのは、妄想で口元が緩んでいるアリサに任せた。

「お宝発見」

 アリサの事だから、なにかエロ系のアイテムかと思ったが、ふつうにネックレスだ。
 ラピスラズリの小さな宝石が填められている。

「アミュレットよ。盗品でしょうけど、結構良さそうな魔法の品ね。種類までは判んないわ」

 程なく物色も終わり、数本の直剣をはじめとした武器防具、短剣や矢束などを回収した。食料品関係は、酒などの嗜好品のみ回収する事にした。

 マップで調べると、ボスの部屋の壁に隠し倉庫があった。中を調べると、合計金貨5枚分くらいの貨幣と宝石類、上等そうな酒瓶が多数、それと、不似合いな事に書物が何冊かあった。

「盗賊が勇者の物語なんて隠し持ってるんじゃないわよ。オマケに騎士と貴族令嬢の恋物語なんて……」

 ヒゲダルマの癖に文字が読めたのだろうか? どちらかと言うと、故買屋にでも売却しようとして保管していた可能性の方が高そうだ。

「じゃじゃ~ん、コレ見て」
「でかした、アリサ」

 アリサが見せたのは上等そうな服と、スクロールが2本だ。防護陣(シェルター)誘導矢(リモート・アロー)の2枚があり、残念ながら防護陣(シェルター)は使用済みだった。
 恐らく旅の商人か貴族が、護身用に持っていたものなのだろう。

「何よ、スクロールだけ? こっちの服にも注目してよ~」

 鑑定してみる。魔法道具の一種みたいだ、わかったのは材質がユリハ繊維という聞いたことのない材料だったのと、魔法防御と物理防御の数値が高い事だ。変な特殊効果が無い様なら、男物で悪いがルルにでも着てもらおう。

「魔法の効果の付いた服みたいだな、特殊効果の説明文の意味がわからないから装備するのは保留だな」
「う~ん、呪われて脱げなくなったらイヤだものね。勿体無いけど、仕方ないわね」

 他には、アジトの裏手には馬が3頭も繋がれていた。近くの納屋を探したが、馬具は1頭分しか見つからなかった。1頭だけ品種が違うみたいだったので、その馬に馬具を付ける。

「あら、羽振りのいい盗賊だったのね」
「そうみたいだな、馬具は1つしか無かったよ」
「乗る」

 ミーアが、鞍を付けていない馬に乗る。故郷では良く野生馬に乗って遊んでいたそうだ。
 オレもミーアに習って、馬に乗ってみる。もちろん鞍を付けたやつだ。鐙に足を掛けて一気に乗る。

>「乗馬スキルを得た」
>「騎乗スキルを得た」

 後者は馬以外に乗るときのスキルっぽいな。アリサだけ歩かせるのも可哀想なので、オレの前に乗せる。オレの胸に頭を預けるのはいいが、お尻を押し付けてくるのはやめろ。アリサが赤ん坊を抱えたままなので、口頭で注意して止めさせたが、馬車に戻ったらお仕置きだ。もちろん、性的で無い方で。

 赤子を抱いて馬車まで戻ると、盗賊達の屍骸が路肩の草むらに並べられていた。ちゃんと装備を回収してあるみたいだ。

「ご主人さま、まだ屍骸から首を刈っていませんが、如何いたしましょう?」
「そのまま放置でいいよ、街までまだ2日はあるから(にお)いそうだ」

 30個の生首と旅なんて嫌過ぎる。
ようやく、話が進みだしました。
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