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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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15-27.天罰

※2016/11/7 誤字修正しました。
※2016/11/7 一部修正しました。
 サトゥーです。天罰というと聖書を思い出しますが、日本でも神罰や「バチが当たる」という言い方で色々と寓話などの中に存在しているようです。
 もっとも、直接、天罰や神罰を浴びたことはないですけどね。





 <<<傾聴せよ>>>

 威圧感のある声が三度(みたび)空から(・・・)降ってきた(・・・・・)

 オレのスキル欄に「神託」というのが増えている。
 どうやら、これは神からの(・・・・)託宣(・・)らしい。

 複数の言葉――否、複数の意味を持つ言葉が脳裏に直接届く。
 どうやら、神は音声での会話ではなく、直接的な方法で多くの人々に通達しようとしているらしい。

 しばしの沈黙の後に、本題が始まる――。

 <<<禁忌>>>
 <<<禁忌>>>
 <<<禁忌>>>

 一柱ではなく、複数の神々が一緒に告げているようだ。

 <<<禁忌>>><<<イタチ>>><<<禁忌>>><<<不遜>>><<<禁忌>>><<<滅び>>><<<禁忌>>><<<天罰>>><<<禁忌>>><<<執行>>><<<堕落>>><<<戒罰>>><<<信仰>>><<<許請>>><<<平穏>>>

 なんというか、感情が先走りすぎて上手く説明できないヒステリーなヒトのような印象を受ける。
 もしくはチューニングができていない混線したラジオを聞くような感じか?

 人々の間から、苦悶の声が漏れた。

 どうやら、激しいイメージの連鎖が人々を苛んでいるらしい。
 それでも、誰一人立ち上がることなく、その苦痛に耐えている。

 それほど、神々への畏怖というのは強いのだろう。

 オレが平気な理由が少しだけ気になった。

 やがて、鐘の音が鎮まり、奔流のようなイメージを伴った神々の宣託が終わる。
 今一つ意味が分からない言葉が交ざっていたが、概ね「禁忌を犯したイタチ帝国に天罰を与える」という事で間違いないと思う。

 ただ、気になったのは言葉だ。
 前に狗頭戦で会ったアンノウンな幼女は普通に会話していた。

 ――もしかしたら、さっきのは神ではなく、神を騙る何かなのだろうか?

 多くの人々は気を失ってしまったが、気丈な人達はよろよろと身体を起こしはじめた。

 ケイ達やシェルミナ嬢を置き去りにするのは少し躊躇われるが、回復魔法を振りまくだけで許して貰おう。

 オレはユニット配置で、イタチ帝国に置き去りにしたままのリザ達の場所へと移動する。





「ご主人様!」
「サ、サトゥーさん、大変です!」
「良かった、二人とも無事だね」

 ユニット配置で移動すると、オレに気付いたリザとゼナさんが飛びついてきた。
 高レベルの彼女達は平気だったようだが、館内のメイド達は皆気を失っているらしい。

 取りあえず、イタチ帝国の状況の把握よりも、先に二人の安全を確保しよう。

 オレは二人を連れて、孤島宮殿へと戻る。

「サトゥー」
「リザ~?」
「お帰りなさい、なのです」

 孤島宮殿宮殿に戻ると、年少組がまっさきに出迎えてくれた。

「あれ? ご主人様?」

 アリサの暢気な様子に違和感があった。

「もしかして、ここには神の託宣が届かなかったのか?」
「ほへ? ナニソレ――」

 惚けた様子のアリサが、言葉の途中で咥えていたセンベイを落とした。

 どうやら、届かなかったらしい。
 神の干渉まで防ぐとは、ユイカに結界を張って貰って正解だった。

「――もしかして、イタチ帝国に神罰が執行されたの?」

 マジメな顔になるのは、口の周りのセンベイの粉を払ってからにして欲しい。
 オレは首肯してからアリサの口元を拭い、皆を連れてリビングへと向かう。

 そこに、エチゴヤ商会からの緊急連絡が届いた。
 オレは空間魔法の「戦術輪話タクティカル・トーク」で、支配人とティファリーザに回線を繋ぐ。

『神の託宣なら把握している。シガ王国周辺や支社のある場所に問題が起こったら、緊急通信で遠慮無く報告しろ』
『判りました、クロ様』
『では、情報収集と分析に努めます』

 オレが通話を切ろうとしたところで、支配人から待ったが掛かった。

『クロ様、一点だけ。エチゴヤ商会支社の支社長達に、蓄積した物資提供を采配する権利を付与します。宜しいですね?』
『もちろんだ。エチゴヤ商会に関する全権を君に与える。頼りにしているよ、エルテリーナ』
『は、はい! クロ様!! 死力を尽くしてご期待に応えます!』

 オレのやや無責任な丸投げセリフに、支配人から非常に力強い返事が返ってきた。
 エチゴヤ商会は彼女とティファリーザに任せておけば大丈夫だろう。

 一つだけ思いついたので、ティファリーザに遠話を再接続する。

『ティファリーザ、言い忘れた。託宣報告のあった支社は記録しておいてくれ』
『――承知いたしました』

 なんだろう?

 気のせいか、ティファリーザが若干不機嫌そうというか、呆れているような雰囲気を感じた。
 まあ、大した事はないだろうから、暇ができたら直接様子を見に行こう。

 オレは通話を切って、リビングの定位置に腰掛ける。

 既に孤島宮殿のレギュラーメンバーが揃っていた。
 非レギュラーメンバーの魔王シズカとブラウニーのメイド達も勢揃いだ。





「さっきマキワ王国で神の託宣らしきものがあった」
「神の託宣ですか? 巫女の受けた神託ではなく?」

 オレが語り始めると、セーラが問い掛けてくる。

「ああ、雲の上から声が降ってきた」

 もちろん、雲の上や雲の中を調べたけど、誰もいなかった。
 少なくともマップではね。

「どうしてマキワ王国に? サトゥー様はイタチ帝国に行っていたのでは?」
「元偽使徒のケイがザイクーオン神の神聖魔法を行使できたと報告が来たから確認にでむいていました」

 王女の問いにそう答える。

「ザイクーオン神は30年前に竜神様に殺されたって言っていなかったっけ? いくら何でも復活が早すぎない?」
「復活が早まった理由は不明だよ。ケイがザイクーオン神の神聖魔法を使うのはこの目で見た。復活はたぶん、事実だろう」

 ヒカルの質問に答えながら、皆を見回す。
 もう質問はないかな?

「それで、どんな託宣があったの?」
「ああ、普通の話し言葉じゃなくて、イメージを伴った単語が降ってくる感じかな?」

 アリサが先を促してくれたので、本題へと戻る。

 オレはあの時聞いた単語をなるべく正確に皆に伝えた。
 主にセーラに聞かせる為だ。

「セーラさんが神託を受けたときとの違いはあるかな?」
「神託の巫女以外に聞こえる事と複数の声が重なって聞こえるという点が違いますが、概ね同じです」

 少し思案していたセーラが答える。

 あの空からの託宣の時に得た「神託」だが、今のところ、スキルポイントを振って有効化(アクティベート)する気はない。

 ただ、後々、神々と交渉する必要ができたときに役に立ちそうだ。
 会話している間に、相手の住む神界という亜空間の場所が判れば、こちらから出向いて直談判もできそうだしね。

「やっぱ、イタチ帝国に天罰が落ちるのかな?」
「たぶんね」

 問題はそれ以外だ。

 託宣の中にあった「執行」「堕落」「戒罰」が、イタチ帝国を放置した周辺諸国を指すのではないかと思えてしかたない。
 その後にあった「信仰」「許請」「平穏」は、「神に祈って許しを請えば平穏が訪れる」とも取れる。

 もし、そうなら、「神に祈る」必要があるような災厄が降りかかる可能性があるんだよね。

「私のせい、でしょうか?」

 セーラがこちらを縋るように見上げる。

 時期的なモノから考えて、イタチ帝国の遊園地に遊びに行ったセーラのせいとは考えられない。
 もし、神託スキルを持つ者の見聞きしたモノが無条件で神々に届くのであれば、セーラよりも先にスラムで助けた神託幼女の方がトリガーになるはずだ。

「イタチ帝国の自業自得でしょ?」
「それでも、イタチ帝国の下々の民衆までも、皇帝と一緒に裁かれてしまうなんて……」

 アリサのフォローにセーラが首を横に振る。

「それは大丈夫ですよ。民衆は助けます」

 オレがそう答えると、アリサとヒカルが驚いたように立ち上がった。

「ちょっと! 神様と戦う気?」
「無理よ、イチロー兄ぃ! いくら強くても神々はダメだってば」

 オレがそんなに好戦的に見えるのだろうか?
 それにヒカルは驚きすぎて、孤島宮殿でのオレの名前を呼び間違えている。

「神々と戦う気はないよ」

 オレがそう言うと、あからさまにセーラがホッとした顔を見せた。
 もちろん、アリサ達もだ。

「天罰で民衆が虐殺されそうだったら、禁呪で異界に避難させるつもりだよ」

 魔力をバカみたいに使うので、聖剣にストックしていた魔力が尽きそうだけど、また虚空のエーテル流の中で再チャージすればすぐだ。
 ここしばらく消費オンリーで、魔力充填をサボっていたツケが出た。

 オレはそこで言葉を切って皆を見回す。

 さてと、状況の共有とオレの方針は伝わったようだ。

「さて、これからのオレ達の行動だけど――セーラさん」
「はい!」
「セーラさんには公都のテニオン神殿で、もう一度今回の件の神託を受けてきて貰えませんか?」
「わかりました。巫女長様――リリー巫女見習いに頼んで、聖域を使えるようにお願いしてみます」

 オレはセーラの護衛に、ゼナさんとカリナ嬢を付けて送り出す。
 ゼナさんは連続出張だけど、快く引き受けてくれた。

「システィーナ殿下とヒカル、それからペンドラゴンチームはこの孤島宮殿で待機。出動を要請する時はいきなりになると思うから、なるべくリラックスしていて欲しい」

 結構無理な注文だが、皆何も言わずに首肯してくれた。

 緊急時もヒカルとアリサ、それから魔王シズカの三人は理由を付けて孤島宮殿に残そうとおもう。
 神の欠片を持つ者が神に逆らえないという情報があるしね。

 自分の事を棚上げしてそんな事を考えていると、その魔王シズカから声が掛かった。

「私にも何かある?」
「ああ、悪いけどしばらくは別荘に戻らずに、この孤島宮殿にいて欲しい」
「欠片?」
「ああ、そうだ。この間みたいな事を頼む事になるかもしれないんだ」

 魔王シズカにそうお願いした。

 イタチ帝国には沢山の転生者達がいる。
 その内の何人かがユニークスキルの使いすぎで魔王にならないとも限らない。

 そうなった場合に、眷属化してユニークスキルを除去できる彼女の能力は重要になってくるのだ。

「よし、それじゃリラックスしに海釣り大会でもやるわよ!」
「あいあいさ~?」
「ポチは今日こそイシダイを釣ってみせるのです!」
「ならば、私は海猫を釣ってみせましょう」

 アリサが号令をかけると、皆が和気藹々と部屋を出て行く。

 にょきっとアリサが扉から顔を突き出した。

「『命を大事に』よ!」

 今度はひょこっとヒカルがアリサの後ろから覗き込む。

「『無茶は禁止』も忘れないでね」

 わざわざ日本語で言う必要はないと思うが、オレは「もちろんだよ」と答えてユニット配置で移動した。

 目的地はイタチ帝国――。

 天罰執行の確認と残りの石板を閲覧するために。

※次回更新は 11/13(日) の予定です。


※2016/11/7 ユイカの事を忘れている人が多そうなので「ユイカに結界を」の辺りを少し追加しました。

※カドカワBOOKS公式サイトに12月発売予定のデスマ新刊のページができたようです。
  http://kadokawabooks.jp/product/108/
 活動報告での告知は見本が届く月末くらいにする予定です。
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