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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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15-24.トラザユーヤ

※2016/10/17 誤字修正しました。
※2016/11/27 一部修正しました。
 サトゥーです。ミステリーの解決編で探偵役の主人公が華麗に謎を紐解いていくシーンは、カタルシスが満載で実に素敵です。ただ、その時にことごとく自分の推理が外れているのを突きつけられる辛さも訪れるのが玉に瑕ですね。





「ほう? よく分かったな。正解だ」

 トボけるかと思ったが、彼はあっさりと認めた。

 軍師トウヤ――いや、賢者トラザユーヤがフードを下ろして仮面を取る。
 隻眼の瞳の奥で、ゆらゆらと炎のような紫光が踊るのが見えた。

 一方で、剃り上がった頭部に髪や眉毛はなく、尖った耳の先端さえも整形しているようだ。

 そういえば、オレが「トラザユーヤの迷路」で読んだ彼の手記には「私の命はもうすぐ尽きる」と書かれてあったはず。
 どうして、彼は元気なんだろう?

 さすがに「あなたは死んだはずでは?」なんて質問は失礼すぎて無理だ。

「だが、エルフのトーヤは死んだ。ここにいるのはイタチ帝国の軍師トウヤと理解して貰いたい」
「どういう事だ?」

 賢者としての自分を抹消したいのだろうか?

「愚かな私が魔王化するところを陛下(・・)に救われたのだ。そして、あの時に私のエルフとしての人生は終わった」

 賢者トラザユーヤ――軍師トウヤが自嘲気味に昏い笑みを浮かべる。

 確証はないが、「迷路」を造るために自身のユニークスキルを使いすぎたとかだろう。
 それにしても、何年前の話か知らないが、よくイタチ皇帝があんな離れた場所まで出向けたものだ。
 その頃は気ままな皇太子、もしくは継承権の低い皇子の一人だったのかもしれない。

「その恩返しに帝国の建設をしていたのか?」
「――恩?」

 軍師トウヤが首を傾げる。

「違うのか?」
「理想の帝国を築く手伝いをしたのは、イタチ人族の遺跡で見付かった『創迷種(ダンジョン・シード)』を譲り受けるための対価だ」

 ――創迷種(ダンジョン・シード)

 その新しいワードに、オレはセーリュー市の迷宮の事を思い出した。
 あの迷宮も創迷種(ダンジョン・シード)とやらで造られたのだろうか?

「旧交を温めるのはその辺りにしておけ」

 取り残された感のある皇帝が、話を本題に軌道修正する。

「すまぬ、タロウ(・・・)。少しいらぬ事まで喋ってしまったようだ」
「皇帝を付けろ。ここには部下達の耳もある」
「気を付ける、タロウ皇帝」

 さっきは「陛下(・・)」と呼んでいたのに、今は気安い感じに皇帝を名前呼びしている。
 イマイチ、軍師トウヤと皇帝の関係が掴めない。

 そうだ、本題の前に幾つか確認しておかないと――。

「その前に確認しておきたい。シガ王国でテロ活動を行ったのは何故だ?」

 シガ王国が仮想敵国だったイタチ帝国の皇帝の行動なら、後方攪乱は当然と思えたので尋ねていなかったが、これがシガ王国に好意的だったはずの賢者トラザユーヤが指示したのなら、その意図を確認しておきたかった。

「テロ活動?」

 しらばっくれているというよりは、何を指しているのか分からないという感じだ。

転身丸リボーン・シードをパリオン神国の間者に与えたのはお前達だろう?」
「概ね間違っていないが正確ではない」

 軍師トウヤがややこしい言い回しで訂正する。

「我らが転身丸リボーン・シードをパリオン神国に与えたのは事実だが、それは大陸西方の乱を拡大させ、神々の注意をそちらに引きつける為だ。パリオン神国の間者が、戦争そっちのけでシガ王国でテロ活動をするのは我らにも想定外の事だ」

 オレは軍師トウヤの瞳を見つめる。
 そこに揺らぎや濁りはない。

 なるほど――嘘は無いようだ。

 セリビーラの迷宮地下で行われていた魔人薬の密造も、魔族が後ろで糸を引いていたようだしね。





「トウヤ、神の禁忌について教えてやれ」
「それは構わぬが、自分で資料を当たった方が良いのではないか?」
「2万年分の記録を読むのは不可能だろう? 検索エンジンに接続できるわけでもないのだ」

 オレのストレージに収納したら検索できるのだが、それは言わない方が先に結論を教えて貰えそうだ。

「資料は後で読ませて貰う。先に概要を教えて欲しい」
「神が禁忌(・・)として扱った(・・・)のは『転生者や転移者による集積回路(LSI)技術の伝授』『恒常的な大量輸送手段』『都市間の簡易な通信手段』『工場の近代化による大量生産』『活版印刷』の五つだ」

 なるほど、ムクロの言っていた鉄道は二つ目、通信塔は三つ目に該当したわけか。
 帆船や大型飛空艇による輸送は、辛うじて二つ目に引っかからないのだろう。
 空間魔法や都市核間通信は三つ目の「簡易な」という条件を満たしていないから平気なようだ。

 それにしても、四つ目は危なかった。
 もう少しでエチゴヤ商会で始めるところだったよ。

 ただ、一つ目の集積回路技術は「賢者の石」や魔核をベースにしたゴーレム製作技術が、ほぼ類似しているはず――いや、エルフ達以外で知っているのはオレくらいだった。
 という事は、あの技術も外に漏らしたら危ないわけか……。
 魔法技術だからセーフな気もするが、危ない橋を渡ることもないだろう。

 ――待て、何かおかしい。

「禁忌として『扱った(・・・)』?」

 オレが軍師トウヤの言葉を繰り返すと、皇帝がニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。

「そうだ。神は明確に『これが禁忌だ』とは言っていない。禁忌を起こした国に天罰を与え、その国が禁忌を犯したと神託の巫女を通して通達したに過ぎない」

 なかなか酷い。

 後出しで「それは犯罪だから罰を与えるね」とでも言われて処刑されるようなモノだ。

「記録を読めば分かるが、禁忌に該当した行動から天罰までにかなりの時差がある。早い場合は翌日に、遅い場合は10年も経過してから天罰が落ちた事もある」

 イタチ帝国はその最長記録よりも長く禁忌を犯しているわけか……。

「その違いが分かるか?」

 軍師トウヤに代わって、皇帝がオレに問い掛ける。

「神託スキル持ちの有無、あるいは神聖魔法スキル持ちがいるか、か?」

 オレはリートディルト嬢との出会いの時の会話を思い浮かべながら答える。
 教区への隔離と合わせて考えると、大きく間違ってはいないだろう。

「そうだ」

 オレの答えを聞いた皇帝が、肉食獣のような凶悪な笑みを浮かべる。

「小国の一つで試して確証を得た」

 ――おいっ。

「ウリオン神の『断罪の瞳』などの先天性スキル(ギフト)では神罰は起こらぬようだ。神聖魔法持ちもスキルが低ければ神へは届かぬ」

 かつてマキワ王国で捕虜にした特車隊の者達に聞いた話だと、その小国では禁忌として滅ぼされなかったような話をしていたが、皇帝の話しぶりから察するに……。

「その小国はどうなった?」

 結果は分かっているが聞かずにはいられなかった。

「むろん、滅んだ――」

 実験結果を告げる研究者のような冷静な言葉に、偽善的な怒りが沸き起こる。
 知り合いのいない国が滅ぼうと関係ないはずだが、どうしても感情移入してしまう。

「怒りを収めろ。我らが滅ぼしたわけではない」

 間者が持ち込んだ技術を嬉々として導入したのは、その小国の王だ、と皇帝が告げる。
 わざと間者に掴ませただけだ、とも。

「タロウ、人族はイタチ人族のように合理的思考はできぬ。それは勇者とて同じ――否、勇者なればこそ、弱者が一方的に搾取される事を嫌うはずだ」
「ふむ、どちらにせよ。我が国に牙を剥いた国を一人残らず殲滅する予定だったのだぞ?」
「それでもだ」

 軍師トウヤが皇帝を窘めるのを聞きながら、オレは大きく深呼吸をして心を静める。
 カンストした精神(MND)値のお陰で、スイッチを切り替えるように冷静さが戻ってくる。

 便利な身体に感謝するべきだが、なんとなく自分自身に薄気味悪いものを感じてしまう。

「どうせ命を奪うなら、意味ある死を与えるのが――」
「その辺にしてくれ。オレは約束を破りたくない」

 皇帝の言葉を遮り、一方的にそう告げる。
 一応、情報の対価に「ここで破壊活動を行わない」と約束したしね。

「――合理的な思考を持つ者を見つけるのは、砂漠の中で星の欠片を探すよりも難しいようだ」

 皇帝が何か嘆いていたが、軽くスルーして軍師トウヤに向き直る。
 彼にはまだ聞くことがある。

「王弟から聞いた。神に対抗するような手段は『誰もが知るが故に、誰もそこに辿り着けぬ』のだと――」
「あやつも存外口が軽い」

 オレの問いに軍師トウヤが嘆息する。

「ブレインズの開発するロケットは見たのだろう?」

 その問いに軽く首肯する。

「答えは宇宙だ」

 ――あれ? わりと普通な答え。

「この世界の神の既知の範囲は地上から、せいぜい低軌道。地上から見えない月の裏側あたりにでも科学技術を継承する施設を造れば、やつらには手が出せぬ」

 なるほど――そんなに簡単な話とも思えないが、皇帝がオレに要求した内容とも合致する。

 ――む?

 一瞬だけ、そうほんの一瞬だけだが皇帝の表情がピクリと動いた。
 軍師トウヤが言った事は嘘とまでは言わないが、それだけではない可能性がある。

 ここで尋ねても答えが返って来ないだろうし、少しだけ心の奥に留めておこう。

「トウヤ、キサマが欲しがっていた『賢者の石』と『闇晶珠』が手に入る目処がついたぞ」
「それは重畳。これで南の海まで出向いて、あるかも分からぬ海底都市を探す手間が省ける」

 オレが思案している間に、皇帝と軍師トウヤがそんな会話を交わしていた。
 どうやら、海底都市ネネリエを探していたのは、心臓部にあるはずの浮遊機関そのものではなく、浮遊機関の核に使われているはずの闇晶珠の方が必要だったらしい。

「それで、いつ手に入る?」
「それはそやつ次第だ」

 皇帝がオレに向かって脂肪に覆われた顎をしゃくる。

「すぐにでも渡そう」
「――何?」

 オレはアイテムボックスから取り出した『賢者の石』と『闇晶珠』を軍師トウヤに手渡す。

「さすがは勇者。無限収納(インベントリ)は収納上限がないから、いつでもアイテムを持ち歩いているようだ」

 軍師トウヤが羨ましそうに呟く。
 アリサの話だと、転生者も「無限収納(インベントリ)」を持てるような話をしていたが、今のところ出会った事がない。

 皇帝は満足そうに頷き、手元の鈴を振って覆面達を呼ぶ。

「クロよ。こちらも約束を果たそう。ここから持ち出す事は許さぬが、聖上の記録庫にある石板は好きなように読んで構わん」

 皇帝がそう告げて、たおやかなボディラインをした覆面を呼ぶ。
 容貌は分からないが、AR表示によると120歳くらいのスプリガンの女性らしい。

「案内もなしに十数億枚ある石板を探すのは辛かろう。司書の一人を付ける。好きなように使え」
「感謝する」

 オレは皇帝に礼を告げ、司書に連れられて石板庫へと向かう。
 軍師トウヤは既に地上へと戻っており、皇帝もエレベーターを起動して謁見の間へと移動を始めていた。

 石板庫の扉に司書が手を触れるとポワッと光が点って鍵が開く音が聞こえた。

「こちらが無限書棚となります」
「空間拡張の類いだろうが……すごいな」

 石板庫の扉を潜ると、果てが見えない書棚がどこまでも続いていた。

「一番古い石板の場所へ案内してくれ」
「はい、こちらです。私から離れないようにしてください。この覆面をしていない者が迷うと二度と外に出ることはできません」

 司書が脅すように告げる。

 ユニット配置があるから出るのは簡単だが、ここに戻ってくるのが面倒なので彼女から離れないようにしよう。

 数歩しか歩いていないのに、背後に扉はなくなっており、周りの書棚も随分古びたモノに変わっていた。
 ファンタジーな感じで、じつに良いね。

「こちらが2万年ほど前の最古の石板になります」
「分かった」

 ――さて、と。

 石板一枚当たりの記述量は128文字ほどだが、億単位のを普通に読むのは時間がかかりすぎる。
 やはり、ここは奥の手と行こうか。

「少し特殊な読み方をする。驚かないようにしてくれ」
「特殊? 石板を傷つけるような――」
「もちろん、傷一つ付けないと約束する」

 オレは司書の言葉を遮って保証し、「理力の手(マジック・ハンド)」を伸ばして100枚以上の石板を選択し、ストレージへと収納する。

「――石板がっ!」

 驚く司書が言い終わるよりも早く石板を元の場所に戻す。
 もちろん、最初にあった通りの場所だ。

 ストレージ内に収納した石板の内容を、映像データとして保存しておいたのだ。

 本来は古書を保存する為の「複写保存(コピー・ストレージ)」という上級魔法を使ってみた。
 紙へのペーストは時間がかかるが、映像ファイルとして保存する分には一瞬で終わる。

「さあ、どんどん行こう」
「は、はい」

 オレは司書を急かして、次々に複写保存していく。

 どんどんペースを上げていきたいところだが、1000枚程度を同時に収納するのがやっとなので、並列思考スキルを利用して保存の終わった内容を読みながら複写を進める事にした。

 石板の記録によると、東の小国ルモォークにあった影城などの浮遊城が現役だった2万年ほど前のモノが最古のようだ。
 トロールの魔王が狗頭の古王との戦いに敗北して、この石室に封印されたところから記録が始まっている。

「――トロールの魔王の愚痴ばかりじゃないか」

 封印されてから100年ほどはトロールの魔王の愚痴や狗頭の悪口が多い。
 続いて多いのが、神々や古代魔法帝国に対する文句だった。

 トロールの魔王の言葉を信じるなら、当時の古代魔法帝国は神々の加護を背景に、地上の王国を属国にして酷い圧政を敷いていたようだ。

 狗頭やトロールの魔王は古代魔法帝国の支配から地上の国々を解放する目的で、神々に反旗を翻したようだ。
 ただし、どんどん狗頭が暴走していって助けるはずの地上の国々まで滅ぼし始めたので、トロールの魔王と反目するようになり、最後には敗北して封印されたらしい。

 狗頭とその下僕(しもべ)は程なく、神々や神の使徒達に倒されてしまったと記録にある。
 もっとも、狗頭はセリビーラの迷宮を苗床にして、数百年から千年ほどのスパンで復活を繰り返していたようだ。

 大抵の魔王は多くても数回復活を繰り返したら、二度と復活しないのに比べて、狗頭だけはしつこいほど幾度も復活し続けている。
 そのたびに喧嘩っ早い古竜や天竜達が狗頭にリベンジマッチを挑んで蹴散らされ、神々に懇願された竜神が出陣して倒すのが定番になっていたらしい。

 記録を見る限りでは、トロールの魔王のように封印され続けているモノは少数のようだ。

 驚くべき事に、一番ヤバそうな魔神は神々によって封印されている事が分かった。
 もっとも、情報源自体が「神託の巫女」なのでどこまで真実か怪しいが、魔神は月に封印されているらしい。
 竜神とのケンカに負けて疲弊しているところを封じられたそうだ。

 これが事実なら、封印されたままの状態で転――いや、魔神がそれをしていると確証があるわけじゃない。
 憶測に憶測を重ねるのは止めよう。

 ここの記録を読めば読むほど、皇帝達の言っていた言葉が事実だと分かる。

 ただし、転生者や転移者が神に逆らえないという話については、あまり確証らしきモノは得られなかった。
 確かに、勇者らしからぬ行動ばかりを取っていた勇者が加護を失って魔王に殺されたり、魔王と和解した直後の勇者が魔王を暗殺したりと、不可解な行動はあった。
 また、逆に魔王が平和裏に統治していた王国を、突如自身の手で滅亡させたという事例や勇者と一緒に行動していた転生者が、魔王を退治して凱旋する途中に勇者を手にかけたりした事例は確かにあったが、神に行動を操られたと強弁できるほどではないと思う。

 記録の中には神や神の使徒に挑んだ転生者や勇者は幾人かいたが、いずれも勝利した者はいない。
 一部の魔王が神の使徒を下していたが、神そのものに勝利した者はいないようだ。あの狗頭でさえ、数度引き分けた程度だった。

 軍師トウヤ達は、これらの事例から神に勝つ方法を見つけたのだと思うが、オレには分からなかった。
 神と戦って勝つ手段など、同じ神をぶつけるくらいしか思いつかない。

 ムクロのように神を脅すという手法も、成功したのは彼の一例だけだ。
 それ以外は全て脅しをスルーして滅ぼされている。

「――これでようやく600年前か。あと少しだ」

 さっきから静かな司書に視線を向けると、口から魂が飛び出そうな顔で床にへたり込んでいた。

 オレはちらりとメニューの時刻表示を確認する。

 うん、熱中しすぎた。

 あと少しだし、全部読み終わってから帰りたいのだが、彼女はさすがに限界のようだ。
 案内役の司書を別の人に代えて貰うとしよう。

 オレは彼女を抱えて、入り口の扉へと空間魔法で「転移テレポート」する。

 扉を開けながら、オレの脳裏に一つの疑問が湧き上がる。

 ――宇宙に拠点を持つのが目的なら、あの核兵器は何の為に保管しているんだろう?

 石板の資料から考えて、神に物理攻撃が効くとも思えない。

 その時、空間魔法の「無限遠話(ワールド・フォン)」の呼び出し音がオレの脳裏に響く。

 ――アリサからだ。

『ご主人様、今通話大丈夫?』
『ああ、問題無い。何かトラブルか?』

 オレの問いにアリサが言い淀む。
 マーカー一覧にある皆の情報を見る限りだと、命に関わるトラブルではないようだ。

『いやー、それがトラブルというかなんというか』

 アリサにしては煮え切らない態度だ。

『ちょ、ちょっとナナ。無理だってば、これはタクティカルトークと違って周りの声は届かないんだって』

 どうやら、ナナに何かあったらしい。
 オレはアリサと会話を繋いだまま、ナナに「遠話(テレフォン)」を繋ぐ。

『マスター! 浮気はいけないと告げます! マスターをマスターと呼んで良いのは私だけ――気安く呼ぶのは禁止だと告げます』

 余計に訳が分からなくなった。
 ナナは向こうで誰かと会話しているらしい。

 これは一度、孤島宮殿に戻った方が良さそうだ。
 世界の危機より家族の危機だよね。

 オレはメニューを開いて、ユニット配置に指を滑らせる。

『うげっ、マジかっ!』

 アリサから危険な言葉が漏れた。

 ――猶予は少なそうだ。

 オレは孤島宮殿へとユニット配置で帰還する。

 そこには――。

「マスター、見つけた!」

 雪のように真っ白なストレートロングの髪をした幼女がオレに飛びついてきた。

 えーっと、君は誰かな?

 親猫を見つけた子猫のような幼女に、オレはその問いを発する事ができず。
 アリサの方に救いの視線を向けた。
※次回更新は 10/23(日) の予定です。

※2016/10/10 4億PV突破記念SSを http://ncode.syosetu.com/n9902bn/493/ に割り込み投稿しました。
※2016/10/19 復活した狗頭の倒し方が少し変わりました。
※2016/11/27 トウヤの瞳の描写を少し変更しました。
+注意+
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