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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
490/540

15-15.勇者vs魔王(2)

※2016/11/14 誤字修正しました。
 サトゥーです。ピンチのタイミングに颯爽と登場する主人公は大好きですが、最良のタイミングでいつも登場するのをみると、出番まで待っているのではないかと邪推してしまいます。きっと、運命の女神に愛されているだけですよね。





「ふう、これで最後だね」
「それにしても、竜槍かご主人様の拳でしか壊せないなんて、偽核(フェイク・コア)で盾を作ったら強そうね」

 最後の偽核を砕き終わったところで、アリサがそんな感想を口にした。

「もろい~?」
「指で簡単に砕けるのですよ?」

 地面に落ちた偽核の欠片を回収してたタマとポチが、アリサに欠片の脆さを実演する。

「ご主人様、先ほどの守護者から創魔魂(ゴーレムソウル)を五つと、創魔心臓(ゴーレムハート)を回収致しました」
「ありがとう、リザ」

 リザがソフトボールサイズの魔核と一緒に、この迷宮固有の特殊アイテムを回収してきてくれた。
 オレは受け取った戦利品をストレージに回収する。

 その時、最小サイズで表示していたマップに動きがあった。
 魔王部屋に勇者達が到着したようだ。

「ご主人様、大変よ! 転移テレポート遠見(クレアボヤンス)が阻害されてるわ」
「――本当だな。目視転移はできるから、迷宮の壁を転移で越えられないみたいだ」
宝物庫(アイテムボックス)、『開け』――こっちは使えるのね」

 転移での脱出も無理らしい。
 メニューの情報を見る限り、「ユニット配置」での移動は普通にできそうだ。

 そんな確認をしている間にも、勇者のいるボス部屋に魔物達が集まりだしている。

「勇者達が心配だ。オレ達も早めに援護に行こう」

 オレはそう告げて、仲間達と一緒に迷宮の折り返し地点まで駆ける。
 移動速度アップの為に、瞬動が使えないアリサとミーアはリザとナナが運び、瞬動のスキルが低いルルはオレが抱えて行く。

 瞬動や縮地を駆使したので、中継地点にあたる円柱形のマグマ部屋まで、僅か数分で辿り着いた。
 カリナ嬢が遅れ気味だったが、なんとか付いてきている。

 ドリンク剤や軽食を仲間達に食べさせている間に、「魔力譲渡(トランスファー)」で全員の魔力を回復させる。

「ご主人様ひゅひんはま~?」

 ビーフジャーキーを咥えたままなので、聞き取り辛い。

「敵みたいだね」

 タマが指差す先の空間が歪み、茶色の上級魔族が細い通路を塞ぐように現れた。

「主上の命により、茶の五番――」
「リザ」
「承知」

 名乗りを最後まで聞かず、リザの竜槍が上級魔族の魔核を貫く。
 最後の悪あがきに上級魔族がリザにベアハッグを仕掛けるが、それは叶わないようだ。

「あくそくざん~?」
「成敗、なのです!」

 ビーフジャーキーを呑み込んだタマとポチが、上級魔族に止めを刺した。

「えいっ」

 ルルの新型加速砲が火を噴き、通路の反対側の壁から出現しようとしていた上級魔族の上半身を吹き飛ばす。

「後始末は完璧にね」

 残った下半身は、アリサの空間魔法で周囲の壁ごと塵へと帰った。

「むぅ」
「本番があるとミーアに告げます」
「みんな強すぎですわ」

 出番がなかったミーア、ナナ、カリナ嬢がぼやく。

 そんな弛緩した空気に、カラカラと石が落ちる音が水を差す。

「今度は足場を潰す気か――」

 前後の足場が崩れ始め、マグマ部屋が魔力中和ニュートラル・マジック化され、魔法や魔力由来のスキルが使えなくなった。

「なんくるないさ~?」
「まったく、わたし達じゃなかったら、とっくに全滅してるわよ」

 前衛陣は壁に指やつま先をめり込ませて、強引に足場を作っていた。
 非力な後衛達は先ほどの移動と同じ組み合わせで確保している。

 そのまま横穴まで強引に進み、移動を再開した。

 オレ達はめまぐるしく経路が変わる回廊を最適解で進み、勇者達のいるボス部屋を目指す。
 性懲りも無く「迷宮の主ダンジョン・マスター」が邪魔をしてきたが、オレ達はその全てを難なくクリアして通路を進んだ。

 歯がみする迷宮の主ダンジョン・マスターの声が聞こえたような気がするが、きっと気のせいだろう。

 ボス部屋へ続く最後の通路に入った途端、先頭のナナから報告が届いた。

「マスター、前方に魔物の群れだと告げます」
「リザ、ポチ、先鋒を任す。タマ、フォローは任せた」
「承知」
「はいなのです」
「あいあいさ~」

 リザからアリサを受け取り、排除指示を出す。

 レベル三〇から五〇までの広範囲なレベルの魔物の群れだ。
 どの魔物も石化や麻痺などの厄介な能力を持っているが、オレの上級支援魔法に護られている限り、相手が上級魔族クラスでも問題無い。

 魔王は規格外なのが多いので、完璧とは言いがたいけどね。

「とっぱ~?」
「なのです!」

 血臭と魔物の咆吼の向こうでタマとポチの叫びが届いた。
 どうやら、ボス部屋に到着したらしい。





「良かった、勇者達は無事だ」

 オレは安堵しながらも、状況を把握する。

 ここは勇者達の戦う広場を見下ろす高台のエントランスで、ここにはメリーエスト皇女と神官ロレイヤ、それから満身創痍の黒騎士達と何人かの気を失った随員が転がっている。
 周囲には魔物の死骸が積み上がり、黒騎士達は瀕死の状態ながらも一命を取り留めていた。
 広場へと続くスロープにも、魔物の死骸と瀕死の黒騎士達が転がっている。
 彼らが死んでいないのは偏に、神官ロレイヤの魔法のお陰だろう。

 そんな彼女達も、魔力回復薬の使いすぎで「過量服薬(オーバードーズ)」という珍しい状態になってへたり込んでいた。
 どうやら、俺達が到着するタイミングはギリギリだったようだ。

 起伏豊かな広場では奥の方で勇者と魔王が戦っており、勇者側は「天覇の魔女」リーングランデ嬢と弓兵のウィーヤリィ嬢が、魔王側は二体の上級魔族が、それぞれ支援していた。
 上級魔族から分裂したとおぼしき、小人のような下級魔族が邪魔な感じだ。

 そして、広場の中央ではルススとフィフィが三体の上級魔族に追いかけられながら、決死のマラソンを続けている。
 リアルでMMOのレイド戦のような光景を目にするとは思わなかったよ。

 広場の上空には飛行型の魔物が飛び交っており、隙を見つけては襲いかかるようだ。

 オレはコンマ一秒でそれらを確認し、仲間達にゴーサインを出した。

「魔族達よ! 滅びを恐れぬのならばムシケラのように飛び込んでくるがいい、と告げます」

 微妙に中二病が入ったナナの範囲挑発に、広場にいた五体の上級魔族が矛先をナナに向けて襲ってきた。
 上空の飛行型の魔物や小人型の下級魔族もだ。

「火に飛び込む、何とやらね! 煉獄の蒼焔(ブルー・インフェルノ)三連打、範囲マシマシで!」

 アリサの放った青い炎が魔族達や部屋の中にいた飛行型の魔物を焼き払う。
 轟音が少し耳に痛い。

 三発の煉獄の蒼焔(ブルー・インフェルノ)を連続で使うほどアリサの魔力は多くないので、一発目の直後に上級魔力回復薬を飲んでいた。
 魔法のリキャストタイムの間に、魔力を補充し終わる気だろう。

 ルススとフィフィが悲鳴を上げて岩陰に隠れていたが、さすがにその辺はオレの空間魔法で保護してあるので大丈夫だ。

 爆風に巻き上げられた砂塵が広場からこちらの高台まで流れてきたので、「風圧ブロウ」の魔法で吹き散らす。

「ひとりじめ~?」
「ずるいのです! ポチも活躍したかったのです」
「二人とも、油断してはいけません」

 リザが窘めるのと、白煙の向こうから仲間を盾にしていた上級魔族が姿を現した。盾にされた方は体力が尽きたらしく、黒い塵に変わって消えていく。
 生き残ったのは二体だけらしい。

「ん、天嵐テンペスト

 ミーアの背後に浮かんでいた黄金色の疑似精霊ガルーダから、雷を纏った黄金の羽が放たれた。
 黄金の羽の連打は二体の上級魔族を天井近くまで跳ね上げ、血煙が雲になりそうな勢いで激しく渦を巻き、上級魔族を切り裂いた。

「ポチ、タマ、魔刃砲で加勢します」
「あい~?」
「らじゃなのです」

 リザが魔槍ドウマで、タマとポチも魔刃砲用にチューンした真銀(ティルシルバー)の魔剣で魔刃砲を連打する。
 本気装備ではないので、少し威力が弱めだ。

 ルルはサブマシンガン型の魔法銃で、アリサの攻撃から漏れた雑魚を始末してくれていた。

 オレは仲間達を少し見守りながら、神官ロレイヤとメリーエスト皇女の所に歩み寄る。

「お二人とも、ご無事で何よりです」
「サトゥーさん、助力を感謝します」
「あの伝説の中にしか存在しないような魔法は、あの小さなアリサ王女が使ったの?」
「ええ、そうですよ。ちょっとばかり秘宝の助けを借りましたけどね」

 アリサには悪いが、メリーエスト皇女の驚き方が極端だったので、少し話を盛っておいた。

「それよりも、こちらをお使い下さい。妖精の女王様から戴いた魔力回復アイテムです」
「ペンドラゴン卿、今は無理――」
「大丈夫ですよ」

 メリーエスト皇女が「過量服薬(オーバードーズ)」状態の事を口にしようとしたのを止めて、水晶型のペンダントを握らせて、その先端を押させる。
 もちろん、単なるアクセサリーなので、そのタイミングで「魔力譲渡(トランスファー)」を使って魔力を回復させた。
 同じ事を神官ロレイヤにも行って、こちらの準備は完了だ。

 オレは勇者ハヤトの加勢に向かう。

 いつの間にか湧いていたエメラルドゴーレムを蹴散らしてリーングランデ嬢の危地を救った後、魔王と対峙する勇者の傍らに立った。

「お待たせしました、ハヤト様」
「サトゥーか、よく来てくれた」

 魔王に対峙する勇者が満身創痍だったので、中級魔法薬を振りかけて外傷を癒やしてやる。
 これだけだと威力が弱いので、同じタイミングで回復魔法をかけた。

「お手伝いいたします」

 オレはそう告げて、妖精剣を抜いて横に並ぶ。
 公開レベルを50にしてあるので、共闘しても問題ないだろう。

 それに、オレには最前線でやるべき事がある(・・・・・・・・)

「サトゥーだけに良い格好はさせないわよ」

 勇者の反対側には「雷の大剣」を構えたリーングランデ嬢がついた。

 ウィーヤリィ嬢は少し後ろに陣取る。
 あくまで支援に徹するようだ。

「死ぬなよ」
「はい、もちろん」

 四つん這いになって狂獣のように襲ってくる魔王の攻撃を柳のようにいなし、オレは勇者が攻撃するタイミングを作る裏方に徹した。
 魔王の動きが俊敏な上にトリッキーなので、なかなかやり過ぎないようにするのが難しい。

「サトゥー! 前に出すぎるな! 魔王の一撃は当たらなくても肉を抉るぞ!」
「はい、ハヤト様」

 ちょっと必要があって(・・・・・・)、魔王の近くをキープしていたのだが、勇者から注意されたので、心持ち距離を取る。
 この辺りなら、縮地を準備しておけば間に合う(・・・・)だろう。

「は、速い。ハヤトと魔王はともかく、サトゥーまで同じ速さで動けるなんて……」

 リーングランデ嬢がやけに驚くので、オレはなるべく常人の速度を意識して動きながら、魔王の攻撃を偶然・・受けられる動きを行う。
 一見大変そうだが、「先読み:対人戦」スキルがあるので楽勝だ。

 もちろん、リーングランデ嬢もただ指を咥えて見ていただけではない。
 詠唱の速い「破裂」をタイミング良く挟んで、魔王の動きを阻害していた。

「お待たせ!」
「あたし等を忘れないでよ」

 ルススとフィフィも魔王の削り役に参加する。
 純戦士な二人はリーングランデ嬢と違って、俊敏な魔王の動きに追いつけるようだ。

「入れ食い~?」
「サックサクなのです」

 出口から雪崩れ込んでくる魔物は獣娘達を始めとした仲間達が、嬉々として殲滅している。
 迷宮の主ダンジョン・マスターも弾切れらしく、強い魔物は出てこないようだ。

「サトゥー、後ろ!」
「ありがとうございます、ウィーヤリィさん」

 オレの背後に出現した砂塵ゴーレムを、魔刃で保護した妖精剣で薙ぎ払う。
 砂と崩れたゴーレムから転がった魔核が、新たに灰泥ゴーレムとして復活する。

 迷宮の主ダンジョン・マスターの嫌がらせだろう。

「ちっ、邪魔するな!」

 勇者はこの嫌がらせにストレスが溜まっているようだ。
 この辺りで元から絶とう。

「タマ、魔核の回収を頼む」
「にんにん~?」

 オレが小さな声で呟くと、影から顔を出したピンク色の忍者が「了解」の手信号を残して影の中に消えた。
 なお、タマが本来いる位置では、タマ人形が戦うフリをしていた。

「おわった~?」

 影の中からタマの小さな声が聞こえた。

「ありがとう、助かったよ」
「えへへ~」

 オレが影に向かって礼を告げると、はにかんだような声を残してタマの気配が消える。
 仲間達の場所では、再びタマ人形と入れ替わった本人が戦闘を行っていた。

「雑魚敵が出なくなったわね」
迷宮の主ダンジョン・マスターの補助も無尽蔵ではないのでしょう」

 オレは魔王の爪を避けながら、リーングランデ嬢の呟きに答える。

「よし! 『変身』が尽きた。リーン、サトゥー、畳みかけるぞ!」

 勇者の声に確認すると、さっきまで魔王から漏れていた紫色の光が消えていた。

 ――ZHWWWUUUUUUUWN。

 話ができるなら説得したかったが、もう魔王に自我は残っていないようだ。

 魔王の周りに出現した雷球を、リーングランデ嬢の「魔法破壊(ブレイク・マジック)」が消し去る。
 魔王の方がレベルが高いのに大したもんだ。

「では僭越ながら、私から――魔刃突貫ヴォーパルランス

 ポチの初期必殺技をマネて、突撃を兼ねた突き技を行う。
 もちろん、本気の一撃を放ったら妖精剣が砕けるので、威力もレベル50のポチ相当に抑えた。

 ――ZHWWWUUUUUUUWN。

 魔王がとっさに張った分厚い魔法障壁を砕き去る。
 本体に当たらないように寸止めだ。

「双剣乱舞!」
「大剣両断!」

 そこに滑るように現れたルススとフィフィが、手数と重い一撃という対照的な技を魔王に放つ。
 防御魔法の剥がれた魔王の体表を、二人の必殺技が削る。

 ――ZHWWWUUUUUUUWN。

 魔王の反撃を身軽なルススは回避したが、技後硬直のあるフィフィがその一撃を受けて地面を転がっていく。
 大幅に体力が減ったが、まだ普通の大怪我くらいだ。

「止めだ、魔王!」

 勇者の聖剣アロンダイトが青い烈光を放つ。

閃光螺旋突きシャイニング・ストラッシュ

 勇者の必殺の突きが魔王に――。





「ふぅ、ギリギリのタイミングだったじゃん、俺ちゃん死ぬかと思った」

 地面に転がる小さな(ねずみ)人の魔王を見下ろしながら、紫色の体毛(・・・・・)をしたイタチ人がおちゃらけた言葉を吐き出す。

 その言葉とは裏腹に、彼の声は震えていた。
 ここは先ほどとは別マップにある迷宮の主の部屋ダンジョン・マスターズ・ルームだ。

「――ああ、助けに来ないのかと思って心配したよ」

 オレの言葉にイタチ人がギョッとした顔で振り向いた。

「やあ、初めまして、迷宮の主ダンジョン・マスター殿、それとも――」

 魔王をギリギリのタイミングで助けると踏んで、最前線で待ち構えていた甲斐があった。

「――イタチ人の魔王(・・)と呼んだ方がいいかな?」

 預言にあった最後の魔王に向かって、オレは問い掛けた。
※次回更新は 8/21(日) の予定です。

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