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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
429/540

14-8.パリオン神国(3)[改訂版]

※2015/10/12 誤字修正しました。
※2015/10/12 一部修正しました。
 サトゥーです。お仕置きも度が過ぎると私刑リンチになってしまいます。やり過ぎないようにするには、冷静さを失わない事が重要ですね。





「さて、まずは都市核を掌握しておこう」

 闇賢者ソリジェーロ以外にも、都市核の力を使える者がいるだろうからね。

 青い光を漏らして宙に浮かぶ都市核に手を伸ばす。

『ようこそ、上位領域を支配する王よ。この地を衛星都市として登録されますか?』

 先ほど「既に占有ユーザーがいます」と表示された時とは違って、頭の中に男とも女とも判断し辛い声が語り掛けて来た。

 ――誰が王だ。

>称号「王」を得た。
>称号「無名王」を得た。
>称号「勇者王」を得た。

 オレの内心の突込みを無視して、ログに称号獲得のシステムメッセージが流れた。
 この「無名王」や「勇者王」というのは名前を空欄に、称号を「勇者」にしているせいだろう。
 上位領域というのは「竜の谷」の源泉の事に違いない。なにせ最強の竜神の支配していた源泉だしね。

「登録してくれ」
『承知しました――』

>称号「領主」を得た。

『――他の補助管理者は引き継ぎますか?』
「いや、引き継がない」
『補助管理者を解除します。補助管理者に貸与していた端末を回収されますか?』
「頼む」

 都市核の提案を肯定すると、目の前に欝魔王が身につけていたのと同じ意匠の腕輪が7つほど出現した。

『先代領主に貸与した一番端末と個体名シズカに貸与した四番端末が未回収です。新規作成の場合は貯留魔力2万単位が必要になります』
「いや、新規作成の必要は無い」

 都市核の告げたシズカとは欝魔王の名前だ。
 どうやら、オレのストレージ内にあるアイテムは回収できないようだ。

『環境設定は引き継ぎますか?』

 設定か……その辺を弄る気は無いのだが――。

「前領主とその以前の領主の差分を表示しろ」
『承知しました。赤が前領主、青が前々領主までの平均設定です』

 闇賢者が恣意的に変更したらしく、赤と青の表示だと大きく設定が違った。

 本来領民の生活を安定させる為にある都市核の魔力を、領主である闇賢者本人の強化や実験に使っていたようだ。

「設定を青に合わせて変更せよ」
『――変更を完了しました。魔力不足の為、気象状態設定の変更が設定値通りになるのは21日後となります』

 これで周辺の農村の生活も、少しはマシになってくれるに違いない。
 さて、そろそろ脇道から戻るとしよう。

「この部屋を閉鎖する事はできるか?」
「可能です。実行しますか?」
「実行しろ。解除する場合は端末から命令する」

 オレは床に置かれた7つの腕輪型端末を「理力の手マジック・ハンド」を介してストレージに回収し、都市核に命令を伝える。

 さて、こうして都市核を掌握したのには理由がある。
 都市内で自由に「ユニット配置」で移動する為だ。

 さて、準備もできたし、お仕置きを始めよう。





「おのれ、偽神の狂信者め!」
「な、なぜ『祝福の魔王』様が勇者の側についているんだ?」

 オレが欝魔王――シズカを従えて都市核の間の外に出ると、案の定、「自由の光」の戦闘員達が待ち受けていた。

 オレは対人制圧用の「音圧サウンド・プレッシャー」でレベルの低い者を昏倒させてから、無事だった者達や死んだ振りをしているヤツらを「誘導気絶弾(リモート・スタン)」の魔法でなぎ倒していく。

「おいおい、どういう状況だぁ?」
「あの白仮面が犯人のようですね」
「あれ食べればいいの? お腹空いたー」

 阿鼻叫喚のホールの入り口から、大物感を演出した三人の男女が現れた。

「し、四天王の方々だ!」
「こ、これであの勇者も終わりだ」
「なにせ疾風迅雷の――」

 未だに昏倒していなかったモブ達が、説明セリフで登場した男女の情報を口にする。
 続けて名前や異名を告げようとしたようだが、覚える気がないので、サクサクと始末する。

 魔法だと避けられそうだったので、久々の縮地と当て身の併せ技で、四天王の三人を叩き伏せる。
 疾風迅雷と言われてニヤケ顔をしていた男だけは、回避動作をしていたがオレのコンボ技を避ける事はできずに、地面を転がっていった。

 転倒男と残りのモブ達を追加の「誘導衝撃弾リモート・スタナー」で完全に無力化してやる。

 そこに四天王最後の一人が奇襲を掛けて来た。

ったぁああああああ!」

 壁を突き破って現れた、「自由の光」の幹部戦闘員を「理力の腕マジック・アーム」で殴り倒す。
 レーダーで捕捉していたのでバレバレだ。

 ここに転がる「自由の光」達に転移魔法使いはいないようなので、魔法で拘束した後でオレの所有する「砂漠」の亜空間に投げ込んでおく。
 少し砂が熱いかもしれないが死ぬ事はないはずだ。





「闇賢者を倒した手際で判っていたけど、デタラメな強さね」

 魔王シズカが呆れたように腕を組む。
 Fカップはありそうな双丘が強調されるが、彼女に誘惑の意図はないようだ。

 彼女を引き連れて地下墳墓への回廊を進む。
 途中の広間には無数の拷問器具が置かれていた。

「ふははは、仮面の男よ! このバゼフ様の仕事部屋に現れるとは運の無いヤツめ。これから貴様に真の痛みというものを――」

 拷問器具の間から現れた怪しい風貌のマッチョを、精神魔法の「痛みペイン」で無力化する。
 悲鳴を上げるかと思ったが、身体中から色々な体液を垂れ流して痙攣している。
 どうやら、自分自身は痛みに強くないらしい。

 オレは失神したマッチョを先ほどの連中と同じ場所に収監する。

 この部屋の拷問器具は「空間消滅ディスインテグレイト」で消去しておこう。
 残しておいても碌な事に使わないだろうし、ストレージに格納していても使い道がない。

 拷問器具が消えていく有様に、魔王シズカが目を丸くして驚いている。
 賞賛とも呆れとも取れる彼女の言葉を聞き流し、オレは霊廟の奥にある縦穴の手前の祭壇に進む。

「なんて、禍々しい雰囲気の場所かしら。不当な死を与えられた人達の哀しみが聞こえるようね」

 祭壇には「呪怨壷」というアイテムが並べてある。
 AR表示の詳細情報を見る限りだと、怨念や負の思念を収集する魔法道具らしい。

 ――KWONOURWAAAAMYUUUUYEEE。

>「霊聴」スキルを得た。

 悪いがホラーは苦手なので、そんなスキルを有効化するつもりはない。

「霊の声が聞こえる――」

 なのに、魔王シズカが余計な声を聞いてしまったようだ。

「彼らは復讐したがっているみたい」

 そりゃ、非業の死を遂げた者なら、普通そうだろう。
 だが、虐殺の手伝いをする気はない――いや、待てよ。

 もしかしたら、死霊魔法で産み出した怨霊なら制御できるかも。
 魔法書を読む限りでは、魔法スキルが高く、術者のレベルの方が死霊のレベルよりも高ければ制御は可能だと書いてあった。

 ならば、彼らの復讐を叶えつつ、オレの目的をこなす事ができるかもしれない。

 オレは死霊魔法の魔法書の中から、目的の呪文を見つけ出す。

「…… ■■ 怨霊君主創造クリエイト・レイス・ロード
『我が君よ、我に復讐の機会を与え給え』
「ダメだ」

 茶色いボロボロのローブを纏ったレイス・ロードが縦穴から浮かび上がってきた。
 エコーの掛かった背筋の寒くなる声でオレに訴えてきたが、殺人の片棒を担ぐ気はないのでサックリと却下した。

 レイス・ロードから不服従のような思念が流れてきたが、否定の返答を返したらすぐに静かになった。
 簡単に押さえ込めるが、破裂する寸前の風船みたいな印象がある。

「お前に命じるのは、お前達を殺した者達からスキルとレベルを奪う事だけだ」
『……それは愉快。じつに痛快なり。栄華を極めた者達を生き地獄へと突き落とす。我が主は復讐というものを実に良く理解している』

 レイス・ロードの評価は不本意だったが、これで「自由の光」の連中を殺さずに無力化できそうだ。





「こ、この怨霊め! 私の神聖魔法で浄化してあげますわ!」
「怨霊など、魔神様の加護を得た私の敵ではない」
「く、来るな! 来るな、このアンデッドめ! わ、私はこんな所で果てるわけにはいかぬのだ!」

 などと抵抗するヤツらもいたが、自由を失った身でレベル50のレイス・ロードのレベルドレインやスキルドレインを防ぐのは無理だったようだ。

 レイス・ロードの監督を魔王シズカに任せ、オレは都市内のレベル20以上の者達の捕縛に専念した。
 聖都の異端審問局にいる仲間達に助けを求めに都市を出た者達もいたが、それらも空間魔法の転移を使って奇襲し、他の者達と同様にレイス・ロードの犠牲者に仲間入りさせた。

 もちろん、異端審問局や枢機卿も同様のコースで処理してある。

 なお、ザーザリス法皇は「自由の光」の構成員ではなかったので、レイス・ロード行きにはしていない。
 彼の処分は後で魔王シズカと行うつもりだ。

「――どうだ終わったか?」
『終わった……。狂信者達の力は全て奪った。主よ、復讐の機会を与えてくれた事に感謝する』

 レイス・ロードはそうオレに告げると、浄化の魔法を使った時のように光に包まれて消えてしまった。

「何かしら?」
「レイス・ロードが残していったようだな」

 レイス・ロードのいた場所に「魂魄珠スピリッツ・オーブ」というアイテムが落ちていた。
 ヤツが奪ったレベルやスキルの結晶のような気もするが、AR表示の詳細情報が空欄なので正体が良く判らない。
 とりあえずはストレージの肥やしにして、迷宮下層に寄った時にムクロやユイカにでも尋ねてみよう。





「魔族め! この聖都のパリオン神の聖域に侵入するとは! ■ 天罰ディバイン・パニッシュ

 ザーザリス法皇がオレと魔王シズカの幻影を光の巨大剣で斬り裂く。
 初めて見る彼は150歳という年齢からは想像も付かないほど若々しい。種族は人族なので、神の奇跡か若返りの秘薬で若さを保っているのだろう。長い金髪が実に艶やかだ。

 オレは魔王シズカを連れて、パリオン神国の聖都にある大神殿へとやってきていた。
 もちろん、ザーザリス法皇から「万能治癒ヒール・オール」のユニークスキルを回収する為だ。

「――眷属化を受け入れよ」

 法皇を無力化した上で「強制ギアス」によって、魔王シズカの眷属化を受け入れさせる。
 続けてユニークスキルの委譲に同意させて、ユニークスキルを小さな羽虫に移す。

 当然、小さな羽虫に「神の欠片」を受け入れる事などできずに瞬時に魔王化が始まる。
 体色が紫色に染まり、透明な翅が暗紫色に変わっていく。

 羽虫の魔王のレベルは50。
 どうやら、魔王化すると最低でもレベル50になるようだ。

 巨大化した羽虫魔王が、聖殿の天井を突き破る。

「な、なんと禍々しい忌み色の魔物だ! その魔物に我が聖都を襲わせるつもりか!」

 腰を抜かして後ずさる法皇を放置して、羽虫魔王が飛び立つ前に処理する。
 青く烈光を放つ聖剣で羽虫の魔王をみじん切りにして倒し、出現した「神の欠片」を神剣で斬り裂いて吸収する。
 すばやく斬ったので、「神の欠片」の呟きは聞こえなかった。

 有用そうな「万能治癒ヒール・オール」をこんな方法で消滅させるのは気が引けたが、元の持ち主は既に処刑されており、誰かに移すにしてもユニークスキルの連発が魔王化を誘発する性質から取り扱いが難しいので、こういう方法を選んだ。

「質問に答えろ」

 オレは精神魔法を併用して催眠状態にしてから、法皇と闇賢者や「自由の光」について尋問を行った。
 オレの誘導に従って、法皇が途切れ途切れに質問に答えていく。

「……闇賢者殿が魔王信奉者と繋がっているなどありえぬ……キサマも愚かな奸臣共と同じ事を問うのだな……闇賢者殿は我が神に帰依し、類稀なる技術と見識で信徒達の育成を行ってくれているのだ……その功績に報いて大司祭の地位と守護の役職を与えてある……」

 驚いた事に、彼は闇賢者と「自由の光」の関係を知らなかった。

 しかも、魔王シズカの存在すら知らない様子だった。

「では『万能治癒ヒール・オール』はどうやって手に入れたのだ?」
「……偉大なるパリオン神から授けられたに決まっている……」

 魔王シズカがユニークスキル「万能治癒ヒール・オール」をノリオ君から法皇に譲渡した事さえ覚えていないようだ。

 その後も尋問を重ねた所、下級魔族に洗脳されていたムーノ伯爵達と同じ印象を受けた。
 その辺りの記憶は闇賢者によってすりかえられてしまっているらしい。

 念の為に魔王シズカの名前や外見を偽装しておいて良かった。
 今の彼女は頭に雄牛の角をくっ付けて、のっぺりしたマスクを被ってもらっている。肌の色もダークエルフのような褐色に塗らせておいた。

 どうやら、法皇も闇賢者に良いように使われていたらしい。

「尋問はこのくらいでいいだろう? どうする、魔王?」
「私はユニークスキルを取り上げた以上の事は求めていないわ」

 なら、これで放置でいいだろう。
 オレは尋問用の精神魔法を解除する。

 魔王シズカにも、眷属化を解除させておく。

 法皇配下の高レベル部隊は消滅したから、これからの国家経営が大変そうだが、その辺は国主であるザーザリス法皇に頑張って貰おう。

「私を殺さぬのか! 魔王とその従者よ!」

 叫ぶ法皇を放置して、オレは魔王シズカの手を取って「物質転送テレポート・エニー・オブジェクト」で安全圏へ送る。

「我が『審判の目』はいかなる偽装も見抜く! 魔王ダッキと従者ラスプーチンよ! 貴様らを大陸中の神殿に手配してやる!」

 法皇の口にした「ダッキ」「ラスプーチン」というのは、さっき使い捨て用に「命名ネームオーダー」で付けたばかりの偽名だ。
 魔王の方は後でシズカに戻しておかないとね。

 彼の様子からして、レアスキルの「審判の目」とやらも、魔素迷彩は突破できないようだ。
 オレは安心して、魔王シズカの待つ砂漠へと移動した。

 なお、この国にいた「自由の光」の連中だが、阻害系アイテムを奪った状態でパリオン神国の地下牢に投げ込んである。
 もちろん、解放されないように罪状を書いた立て札や魔王信奉者である証拠を牢の前に積んでおいた。
 桜餅騒動を陰で起していた例の枢機卿のみは、シガ王国の地下牢に連行してある。





「ここに住んでいいの?」
「ああ、世話する者が必要なら手配するが?」
「いらない――でも、小鳥と子犬を飼いたい」

 オレは欝魔王シズカを、ユイカの結界で覆われた酪農用区画に連れてきていた。
 おっと、もう欝状態は治癒したし、魔王活動もしない約束なので普通にシズカと名前で呼ぼう。

 始めはシズカを皆の所か迷宮下層の転生者達のエリアに連れて行こうと思ったのだが、しばらくは人のいない所で静かに暮らしたいと要望されたので、ここに連れて来た。
 もちろん、シズカを囲う為ではなく、彼女の平穏の為だ。
 外の世界だと魔族達のちょっかいを受けそうな気がするしね。

「わかった。小鳥や子犬の種類にリクエストはあるか?」
「そうね……文鳥とシベリアンハスキーが良い」

 文鳥はともかくシベリアンハスキーは見た事がない。
 とりあえず、印象の似た犬種を連れてこよう。

 隠遁する彼女の為に酪農用区画の大河の畔に、「家屋建造クリエート・ハウス」で立派な家と「農地耕作カルティベーション」で利用可能な農地を用意した。

 さらに労働用に木人形ウッド・パペットを数体作って置いておく。

「ねぇ、家の中を見て良い?」
「君の家だから、好きにして良いよ」

 家を興味深そうに眺めていたシズカの質問に首肯する。
 それを見送ってから冷凍庫や冷蔵庫、それに洗濯機や自動風呂、水洗トイレの魔法道具を設置して周る。
 一通りの作業を終えて戻ると、シズカがベッドの上で衣類を眺めて難しい顔をしていた。
 彼女がいない間に当面の着替えを置いておいたのだが、好みではなかったのだろうか?

「この下着は日本製? でも、下着を贈るのは自分で脱がせたいからだってクラスの子が言っていた。囲われているようなものだし、求められたら応えないといけないかな。でもでも、顔も見た事ない相手としちゃうのは」

 独り言だと実に饒舌だ。

 いや、欝状態を解除した本性は元々こうだったのかもしれない。
 シズカは美人の上に巨乳だし年齢的にも申し分ないのだが、そういう対象にすると確実に結婚あるいは愛人コースが待っていそうなので、手を出す気はない。遊ぶのは玄人限定が良い。

 オレはコンコンと扉をノックしてから、シズカに声を掛ける。

「生活に必要な魔法道具と当面の生鮮食品と調味料を置いてきた。使い方は日本の家電と変わらん、他の食料が食べたいなら、大河で魚や貝・・・、森で果物を集めれば良い」

 もちろん、地下倉庫には三年分くらいの保存食や日用雑貨を収納してある。
 無いのは酒くらいだ。アルコール依存症の危険があるから、酒は置いていない。

「わかった。さっき川を見た限りだと、小エビ・・・なんかもいるみたいだったし、この辺りは自然の恵みが豊富なのね」

 ――小エビ?

 シズカの言葉に引っかかりを感じた。

「どうかした?」
「いや、シベリアンハスキーを何処で手に入れるか考えていた」
「似てたら、それでいいわ。欲しいのは温もりだから」

 オレは早めに用意すると告げて、シズカの家からユニット配置で移動した。
 転移先は孤島宮殿ではない。

 少し考えたい事があったので、ムーノ伯爵領にある廃砦にきていた。
 先ほどの検証をする為に、廃砦の近くにある小川の畔で「異界アナザーワールド」を発動して小さな亜空間を作り出す。

「やはり、この小川にも小魚や貝がいる……」

 どうやら、亜空間を作る時に一緒に、生き物・・・まで創造しているようだ。
 そこまで考えてオレは思い違いに気が付いた。

「……植物がある時点で気が付けってかんじだよな」

 それにこの国にはナナ達ホムンクルスを作る人体練成技術があるんだった。
 どうにも元の世界の倫理観が邪魔をして、生き物の創造を特別な事と考えてしまう。

 人体練成か……この「異界アナザーワールド」の中にある生物を作るコードを流用すれば……。

 未知への探究心を首を横に振って投げ捨てる。

「いや、さすがにダメだな」

 うん、オレの精神衛生の為に、それに手を出すのは止めておこう。
 オレは二度ほど頷いてから、メモ帳の禁忌項目に「知的生命体創造の魔法は開発禁止」と注意書きを追記しておいた。
 やっぱり、知的生命体創造は神様に任せておくのがいいよね。





 オレはパリオン神国で2体の魔王を退治した事をいつものメンバーに告げ、恐竜狩りを楽しんでいる仲間達を迎えに迷宮へと向かう。
 なお、犬と小鳥の手配は王都にいるティファリーザに頼んでおいた。

「サ、サトゥーさん! た、大変なんです!」

 迷宮に到着するなり、木陰で休んでいたセーラが走ってきた。

「神の神託を賜る予兆がありました! どこかで魔王が顕現したのかもしれません!」
「神託そのものではなく、予兆なんですか?」

 セーラが言っているのは二時間前に倒した猿魔王と一時間前に倒した羽虫魔王の事だろう。

「は、はい。神託を受けるには神の声が届き易い聖域に行くか、簡易聖域を作る儀式魔法を使う必要があります」

 なるほど。いつでもどこでも神託を受けられるわけじゃないのか。
 とりあえず、落ち着かせよう。

「さきほどパリオン神国で二体の魔王が出現しましたから、それの事だと思います」
「ま、魔王が二体も?!」

 セーラが絶望の声を上げる。

「ご主人様、二箇所であるならば、片方は我々にお任せください。ご主人様が片方を討ち取るまでの間、なんとしてでも被害を食い止めてみせます」
「マスター、出撃許可を」
「タマも~?」
「ポ、ポチだって! ま、魔王くらいへっちゃらなのです」

 オレがセーラを安心させる前に、リザ達が決意を秘めた表情でオレに詰め寄ってきた。
 ゼナさんと王女は言葉も無いほど驚いて、地面に膝をついてしまっている。
 カリナ嬢は参加を表明するか迷っているような表情だ。

「みんな落ち着いて、もう魔王は2体とも倒したから心配ないよ」
「ま、魔王を倒したのですか?」
「こんな短期間で、2体も、ですか?」
「マスターを賞賛します」
「ぐっじょぶ~?」
「すごく、すごいのです!」

 オレはゼナさんと王女に手を貸して立ち上がらせる。

「さ、さすがは私のサ――」
「サトゥーさん、凄いです!」

 瞳に輝きを取り戻したゼナさんが、王女の言葉を遮って賞賛し、オレの手を両手で包んでぶんぶんと振る。
 ゼナさんが恥ずかしがって手を離すまで待ってから、オレは皆を連れて孤島宮殿へと戻る。

 さて、明日は飛空艇が王都に到着するはずだから、少し王都の知り合いの所に顔を出そう。

 明後日の晩は勇者一行との定時連絡の日だし、魔王退治の進捗を尋ねないとね。
 ここ最近の定時連絡は留守番の書記官嬢との会話のみだから、今回もハヤトが不在なら「遠話テレフォン」で直接彼と話してみよう。

 それに魔王シズカを保護した話も、皆にしないとね。

※次回更新は 10/18(日) の予定です。

※2015/10/11 法皇とのシーンを変更しました。
※2015/10/12 都市核のシーンに環境設定を弄るシーンを加筆しました。
+注意+
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